街へ一緒に、出掛けよう!

 新年あけまして、おめでとうございます。新年のお話が書きたくなりまして、今年も特別編を投稿することに、しました。但し、新年のお話ではなく、それに因んだお話になりました。


此方こちらの作品は、『婚約破棄する期間は、もう既に締め切りました!』の番外編を集めた特別編となります。この作品は、短期間ものの企画ですので、敢えて別タイトルにて、投稿することに致しました。此方の作品は本編となる物語を、先にお読みくださることを、お勧め致します。此方の番外を先に読まれますと、ネタバレとなりますので、ご注意くださいませ。



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 これは、まだ…私達が、婚約中の時のお話ですわ。


来年は麻衣沙とご一緒に、2人で初詣出掛けましょう、ということになりまして、ずっと以前からお約束しておりましたのよ。今までは、両親とご一緒しておりましたけれども、今年からは…親離れ&子離れという意味もあり、麻衣沙と2人で行きましょうね…と、いう流れになりまして。


…うふふふふっ。麻衣沙の着物姿、楽しみですわあ。彼女はそれなりに背丈もありますし、大人っぽいご容姿ですからね、落ち着いた色と柄の着物なのですが、来年の着物は…私がのよ。今日は、そのお買い物なのですわ。


今日はこれから、2人で街に買い物に行きますわ。来年着用する着物を、見に行く予定なのでしてよ。麻衣沙の着物は…私が選びまして、私の着物は…麻衣沙が選ばれることに、なっておりまして。我が家の車で迎えに行って、ご一緒に買い物に出掛けますの。街中は、今日は日曜ということで、とても賑わっておりました。


流石に街中は一部、車で移動出来ませんので、車から降りまして、2人で歩いて移動致します。2人で歩いておりますと、何故か…すれ違う人の目線が、此方こちらに突き刺さって参ります。…ああ、なるほど。麻衣沙とご一緒しておりますから、目立っておりますのね?…麻衣沙はどこからどう見られても、完璧なお嬢様ですものね。その上、彼女は美人さんですもの。そこら辺の女学生では、全く美人さんなのですわ。


それに比べて、私は…ちんちくりんの普通の少女、なのですのよねえ。…ううっ。悲しい…。もう少し、可愛く…生まれたかったなあ。そういう意味では、ヒロインの容姿は…羨ましいのですが。あのぐらい可愛ければ、樹さんも…振り返ってくださるのかしら?……な~んて、冗談ですけれど。悪役令嬢と攻略対象では、相容れない存在なのですもの…。


麻衣沙と並んで歩いておりましたけれど、その彼女が立ち止まられた気配に、私も立ち止まりまして、前を見ますと。全く知らない男子学生と思われる人達が数名、私達の少し前に立ちはだかっておられます。…はて?…何方どなたなのでしょう?


私は…知らない方達ですけれど、麻衣沙のお知り合いなのかしら…と、横におられる彼女を振り返りますけれど。麻衣沙は…厳しいお顔をされておられます。…あらあら、これは…警戒されている時の麻衣沙ですわねえ…。…と言いますことは、これって…ナンパなのかしら?


 「ねえねえ、君達。可愛いね。何処どこに行くの?…良かったら、これからお茶でもしない?…美味しいお菓子のあるお店に、行かない?…良かったら…俺達が、何でも奢るよ。」


…ああ、やはり…ナンパでしたわね。実は私、前世では一般市民でしたので、ナンパも勿論知っておりますよ。前世でナンパされたかどうかは、覚えておりません。ええ、きっと…されたことは、ないでしょうけれども。


 「あのですね、私達、これから行く所がありますのよ。貴方達に付き合っております時間は、ま~たくっありませんのよ。残念でしたね~。」


麻衣沙なら兎も角、私が断るとは…思っておられなかったのでしょう。目の前のナンパ青年達は、ポカンとしたお顔をされております。…今ですわ!…今のうちに…逃げてしまいましょう。麻衣沙をお連れして。私の辞書には、何か困ったことになりましたら、『逃げるが勝ち』という言葉が載っているのですわ。私の頭の中に…ですけれども。


彼らが油断した隙を見逃さず、私は麻衣沙の手を掴むが早いか、一気に駆け出します。麻衣沙が「…えっ!?」と、驚いた声を上げられたことにも、今は…無視をして…。彼女を、ここから連れ出さねば。麻衣沙は以前、危ない目に遭われたばかりですもの。きっと、怖い思いをされておりますわ。ここは、私が守らなければ…。その思いだけで、私は彼女の手を引いて、2人で街中を駆け抜けます。


今の私達は…お嬢様ではなく、一般市民のていで、街中に遊びに来ておりますのよ。ですから、私達がお嬢様だと知るお人は、誰もおりませんもの。少々、をして、羽目を外したりしても、誰にも…下品だとは思われませんわ。今は兎にも角にも、ナンパ青年達から逃げることが、最優先ですのよ。


私1人でしたら、逃げ足には自信がありますので、摑まる心配も絶対にないのですけれど、今は…麻衣沙の手を引いておりますし、彼女は…運動系はあまりお得意ではありません。走る速度は、麻衣沙自身が走られるよりも速いものの、私の走るスピードよりは2段階くらい遅くして、走っておりまして。このままでは…麻衣沙が先に息切れされて、立ち止まってしまいますわね…。


仕方がありません。少々、お下品ではありますが、あのお店に飛び込みましょう。そう判断致しまして、私は麻衣沙の手を引いたまま、とあるお店の店内へと…飛び込んで、難を逃れましたのよ…。







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 ゼイゼイゼイ……。く、苦しい…。ハアハア…。息を整えようと、荒い息を繰り返します。漸く…落ち着いて参りましたわ。それでも、まだもう暫くの間は、何もお話出来ない状況でしょう…。


今日は、瑠々華と街にお出掛けしております。以前に、岬さんには「麻衣沙が1人で出掛ける時とか、瑠々華さんと2人で出掛ける時には、俺に連絡するように。」とご忠告されておりましたから、実は…岬さんには、ご連絡を入れておりますのよ。ルルには、内緒にしておりますけれども…。何しろ、岬さんにご連絡致しましたところ、樹さんも付いて来られることになりまして。一応は、わたくし達の前には出て来られないことには、なっておりますけれども…。


わたくし達の後からこっそりと、付いて来られている筈なのですわ。変装をされてまで。わたくし達に何か遭った時には、助けてくださるおつもりなのでしょうね。今回はルルがご一緒ですし、何か…ございました時には、お2人には…頼りにしておりましてよ。…と思っておりました矢先に、わたくし達の前の進路を塞ぐようにして、ナンパ男達が立ち塞がっておられます。拝見致しましたところ、わたくし達と同じ大学生ぐらいでしょうか?…ああ、なんて無謀な…。


今この瞬間、お2人は…きっと、お怒りモードになられておられることでしょう。ふう~。折角、ルルは…わたくしとの2人でのお買い物を、楽しみにされておられましたのに。岬さん達も、わたくし達の気持ちを汲み取ってくださいましたのに。貴方達のナンパのお陰で、全てが…でして。


そう…考え込んでおりましたら、何と…ルルが、きっぱりと…断られましたのよ。てっきり…ルルはお菓子に釣られると、思っておりましたのに。…ああ、そうでしたわ。ルルの前世は、一般市民でしたわね。ナンパも…された経験が、お有りなのかもしれませんわね…。樹さんがお知りになったら、前世のことと言えども…恐ろしいですね…。


岬さんと樹さんの近づくような気配を感じた瞬間、突然…ルルが、わたくしの手を取り、走り出されます。…ええっ!?…わたくしも走りますの?!わたくしが思わず、驚きの声を出しましても、ルルは振り返ることもなく、わたくしの手を掴んだまま、全力で疾走されますのよ。…いえ、これでも…手加減されて走ってくださって、おりますのよね?…運動音痴のわたくしが、ルルの全力疾走に…ついて行かれる筈が、ございませんもの…。


走り出した瞬間、思わず…後ろ髪を引かれるようにして、わたくしは一度だけ振り返りました。やはりわたくしが思いました通りに、岬さんと樹さんが出て来られ、ナンパをされて来た彼らに、絡んでおられるのが…見えましたわ。岬さんと一瞬…目線がお合いしまして、心配そうなお顔をされましたわ。きっと、予想外でしたわね…。ルルが、ことは。


 「俺と樹は、君達の後からそっと追いかけて行く。もしも…君達と逸れてしまってもいいように、樹がいつものように護衛は付けているから、安心してくれて良いだろう。」


このように岬さんからは予め、ご説明を受けておりまして。樹さんのご心配っぷりには、わたくしも遠い目を致しましたけれど、今回の件では…ナイスと申しますしか、ございませんわね…。一度ございますことは、二度・三度とございます…と、申しますからね。


しかし…予想外でしたわ。わたくし、運動神経は…あまりよくございませんのよ。それなのに、ルルは手加減されているとは言いましても、今までにこのような速さで走った経験など、一度として…ございませんのよ。死ぬかと…思いましてよ。


あの後すぐ、お2人が足止めされましたから、もう逃げる必要などございませんのに、ルルは追いかけて来る前提で、未だ走られておられます。もう…限界っ!!…と思い始めておりましたところ、漸く…ルルは何処かに飛び込まれまして、難を…逃れたようでした。……ほっ。


 「どうして、逃げられましたの?…彼らは最初から、追い掛けて来ておりませんでしたのに。」

 「えっ?…そうなんですの?…私、てっきり…追いかけて来ると、思っていましたのに。」

 「………。」


やはり…そうでしたか。これはある意味、樹さんの所為ですわね。ルルがまだ幼い頃からずっと、何年かの間、面白がって追い掛けておられましたから、ルルは逃げる=追いかけられる、という構図が出来上がっておられるのでしょう。


 「麻衣沙は、怖い目に遭われたばかりですから、私が守れて良かったですわ。」


ルルは…。自分のことよりも、わたくしを優先してくださったのですね。前世のわたくしならば、ホロリと泣いていたかもしれません。今のわたくしは、ルルが前世で憧れたキャラなのですから、のです。これからも、ずっと…。





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 前半が主人公・瑠々華で、後半がダブル主人公・麻衣沙の視点となります。


内容的には、現在投稿しております本編の方と、話しが合うように書いていますので、新年のお話は作れませんでした。新年に因んだお話にしたくて、新年に着る着物を仕立てる、というお話になりました。


※次回は、明日に続きます。読んでいただきまして、ありがとうございました。

 また明日もよろしくお願い致します。

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