短編2 君が言ったから

「君と話せて良かった。また、聞いてもらってもいいかな?」  


雨でハネてしまった髪に手櫛を指す。君の声を聴き終わる度に、わたしは耳を髪の隙間から出して雨の音と君の声を聴き分けて楽しんでいた。


「べっつに~?でもこういうの、止めたほうがいいと思うなあ」


彼女持ちの癖に、わたしにいちいち相談してくるのは止めて頂きたい。


そりゃあ、相手が一個上の、学校でも美人で評判の生徒会長という属性なのだから、頑張りたい気持ちはわかる。けれど、もう君たちは付き合っているのだ。わたし以上に仲良くならねばならない相手を放っておいて、わたしとの時間を過ごすとは、どういう風の吹き回し?いや、風など吹いてもらっては困る。セットした髪がぐちゃぐちゃになってしまうから。


「君が一番話しやすいんだ。だから、どうしても頼りたくなってしまう。彼女がいながら、不思議な感覚だよ」


「それは浮気と呼ぶんじゃないの?」


「浮気?ははは。このぐらいで浮気になってしまうなら、僕は女子で友達なんて作れなくなってしまうね」


「絶対面白くないでしょう。いっそのこと、彼女さんと友達になってあげようか?」


「いいね!それがいいと思う!!」


「そ・ん・な・こ・と・・・するかあああああっ!!」


彼氏に自分より仲の良い女友達がいる。そんな状況、わたしだったら発狂するわ。何?なんなの?こいつには冗談が通じないのか、そうですか!


「ダメかい?僕的には望んだ状況に身を置けるから、是非ともお願いしたい」


「ぶん殴っていい?」


「僕は真剣に良い案だと思うけど」


こいつそのうち彼女さんに後ろから刺されるんじゃないだろうか。何で自分基準で考えるかねえ。相手のことを思えば、絶対できないでしょうが。


「冗談通じなくて悲しいわあ。そこは慌てて否定するところ・・・ってわかんないか」


「うん。ごめん、わかんない」


こいつは今の彼女さんに告白する前から・・・1から10までわたしに恋愛のいろはを聞いてきた。話す話題から、デートの服装まで全部。って、わたしはオカンかあっ!!


「マジで振られてきて。自分で考えた自分の言葉で彼女に伝えてみて」


「いいのかい?」


「わたしに意見を求めるなああああっ!!わたしはあんたを通して恋愛ゲームしてるわけじゃないんだからね?」


「わかった。辛い気持ちにさせてすまない」


頭を下げられたって、こっちの溜飲は下がらない。こんなに依存されるとは思ってなかった。早く、行けっ。行けええええ!!


「じゃあ、また一時間後に。ここで」


「はあ?」


終わりじゃないのかいっ!どんだけ優柔不断なのよー。


「君のことが好きになってしまった。だから、僕はまず、振られてくる」


「へ?」


「僕の考えた甘いセリフは君に悉くダメ出しされたじゃないか。だから、今から等身大の僕で行ってみるよ」


「あ、うん。へえ、そうなんだ」


「振られた後、君に告白するよ。だから、待ってて」


「この雨の中、外で?」


「風邪をひいてしまいそうだな・・・今日は帰りなよ。明日、君に告白する」


「なんでもいいから、早く行ってきて」


「え?」


「もしかして、あんたの臭いセリフが意外にツボだったりするかもしれないじゃない。そしたらどうするの?」


「大丈夫だ。君が言ってたことは信じてる。絶対に、相手はドン引きするんだろ?」


「ちょっと今ここでリハーサルしてみて。わたしを恋人さんだと思って、ね?」


「君の唇はまるでマグマに一分間浸したみたいに赤いね!!」


「いや、その唇、消し炭でしょ。上手くいっても真っ黒に炭素化してるわっ!」





――――――


もし続きが読みたかったらコメントしてくださいね(笑)

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【女性向け】優しそうに見える彼。でも、わたしは。 とろにか @adgjmp2010

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