ポーチ
へりぶち
ワンドロ練習3
仕事の帰りのいつもの道。
疲れてヨレた顔を直す余裕もなくモソモソと歩いていると、いつも周りと比べると頼りない光量で道路を照らす街灯の下に「無駄な出費が戻ってくるポーチ差し上げます」、とデカデカと油性ペンの太い方で書かれたであろう主張の激しい段ボールを見つけた。
それを視界に入れてしまった私は、これが本当ならえらいこっちゃと興奮のままに段ボールごと荒々しく掴み、残りの帰り道を爆走して帰った。
翌日私は同僚にそのポーチを見せ興奮覚めやらぬと言った具合で熱く身振り手振りを使い話したが、「そんなのあるわけないじゃない、馬鹿じゃないの」と一蹴されて終わりだった。
そもそも何が無駄なのか、どう調べるのよと徹頭徹尾クールだ。
おお、なんとも冷たい同僚だ。浪漫の一つもないのか。無駄な出費が戻ってくるというありがたさを理解できない。もしや貴様金持ちだな!?と嘘の涙をオイオイ流すフリをすると彼女は意地の悪い笑みを浮かべ、「それなら、このポーチが本物か調べましょう。」と提案してきた。
具体的には?と問うと、彼女は意地の悪い笑みをもっと深めこう答えるのだ
「今度あるうちの課のマドンナの結婚式に出すご祝儀が無駄になるかどうかよ。」
ポーチ へりぶち @HeriBuchi1
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