第4話

行動した当人以外、何が起きたのか理解できなかった。

木の枝が折れるような『パキッ』という軽い音や葉っぱが擦れ合うような『ザッ』という何かしらの物音が聞こえる度、一人、また一人と盗賊たちは絶命していく。

がむしゃらに武器を振り回し反撃を試みる者、逃げようとその場から走り出す者、硬直し身動きが取れない者───

一人の例外もなく鮮血を撒き散らしながら倒れていき、一分もしない内に生きている盗賊は二人だけとなった。

残された二人は緊張から口をカラカラにし、その中でも懸命に呼吸だけはしているような感じだ。


そこで漸くローブの男は動きを止め、残った盗賊に向き直った。


「な、何でだよ!何でこんな酷いことを───」

「酷い?じゃあお前たちがしてきたことはどうなんだよ?」


ローブの男の声はとてつもなく澄んでいる。

だが今この場の惨状を見れば、その声はとても冷たく、まるで死神の囁きにも似たものに聞こえた。


「村を襲い、人々を殺し、物品を奪っているお前たちに文句を言う権利があるか?

誰かに刃を向けた時、その切っ先が自分に返ってくるかもしれないと考えられない奴に、他人をどうこうする資格なんてないんだよ。」


そう言ったローブの男は、掌を残った盗賊の内の一人に向けた。

風が集束するかのようにエネルギーを作り出し、そのエネルギーは火球となり熱を生み出した。


「お前…何者だよ……」


「俺?俺は───」


直後、火球は放たれ盗賊の一人を直撃しその肉体を燃え上がらせた。


「"勇者"だよ。」


そう呟いたローブの男、もとい勇者は冷たさと優しさが入り交じったような微笑みを浮かべたのだった。




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