第3話
「た…助げ、で……」
ローブの男の手に力が入っていく中で、盗賊は精一杯の声をあげる。
それと同時に先程起きた惨劇が脳内に広がっていた。
───────────
時は遡ること十分程前。
「ははは!今日も余裕だな!!」
20人ほどの集団であるこの盗賊たちは、森の中で楽しそうな声をあげていた。
近隣の村を襲い強奪した物品を囲み、酒を飲んでいるのだ。
本来、盗賊や山賊は洞窟を隠れ家にしていることが多い。現にこの盗賊団も塒は洞窟にしている。
では何故こんな森の中で騒いでいるのか。それは彼らが騒ぎながらでも常に周囲を警戒をしているからだ。
洞窟などであれば敵の侵入は拒みやすい。特に出入り口を警戒していれば比較的対応もしやすい。
ただ反面では、その出入り口を何らかの手段で塞がれてしまった場合に身動きが取れなくなってしまうという点は想像に難しくないだろう。
だからこそ『森の中』というのは意外と警戒しやすいのだ。
相手から見られやすいという点こそあるものの、自分達からも見やすく、逃げる方向も複数ある。
また木々が多ければ敵は直線的に進むのは難しく、仮に直線的に進めば木の枝や草葉を踏むことになり誰かが来ていることや方向までもを悟りやすい。
こうした部分から彼らは寝るとき以外はこうした場にいるのだ。
盗賊というのはそうした知恵だけは実に回る。
そうして騒いでいた時だった。
パキッ───、と木の枝が折れるような乾いた音がした。
「「「!!」」」
それまで騒いでいた盗賊たちは一斉に武器を取り、身構えた。
「こんな所で騒いでるのか。」
ローブを着た男が暗闇から現れ、盗賊たちに声をかけた。
深めにフードを被っているせいなのか、魔法使いのような風貌にも見える。
「おいおい、たった一人でこんなところに何の用だ?」
盗賊たちはローブの男を取り囲むようにジワジワと距離を詰めていく。
「…はぁ、やっぱ面倒だな。」
溜め息混じりに言葉を吐くと、フードを外し素顔を晒す。
「まぁいいか。俺も仕事なんだ、悪く思うな。」
そう言うと同時にローブの男の姿が────
「消えた…?」
盗賊の一人がそう呟いた瞬間、首が跳んだ。
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