第2話

「頼む!命だけは───」

「お前はそう言われて助けてきたのか?」


盗賊の言葉を遮ってローブの男が発した言葉に、盗賊は一段と身体を大きく『ビクッ』とさせた。


「この惨状はお前たちが招いた結果だ。盗賊であるなら自分が奪う側で安全だと思ったか?」


そう言いながら一歩、また一歩と二人の距離が少しずつ近付いていく。


「違うな。人はいつでも奪う側であり、奪われる側だ。"どちらか一方"なんてことは有り得ない。」


盗賊の喉が『ゴクッ』と大きく鳴り、上下の歯がぶつかりガチガチと音を立てる。

そして盗賊が何も出来ない間にとうとう二人の距離がなくなり、盗賊の目の前にローブの男が立ち見下ろしていた。


「ぅぐっ!?」


盗賊が呻き声をあげる。

それはローブの男が盗賊の首に手を掛け、持ち上げたから。

二人に体格差などほぼない。むしろローブの男はモデルのようにスラッとはしていて筋肉はそれなりに付いているが背丈は特別高い訳ではない。

おおよそ173cmぐらいだろう。

そして盗賊もそれとほぼ同等だ。

だが、まるで大した重さもない物を持ち上げるかのように、盗賊の体は宙吊り状態になる。

先程までとは真逆に、今度はローブの男が盗賊を見上げる形になっていた。


(何だコレ!?びくともしねぇ!!)


盗賊は必死にローブの男の手を払い除けようとする。

首にかかった手に対して、自身の両手を使い全力で力を込める。が ────

まるで動かない。

むしろ首にかけられた手に少しずつ力が入ってきている。


それまで盗賊に向けられていたローブの男の視線が漸く外された。

そして自分が歩いてきた道の方を振り返る。


「"これ"はお前たちがしてきた結果だよ。」


その現象は本当にたまたまだ。

だがまるでその言葉を合図にしたかのように、それまで月に重なっていた雲が切れ間に差し掛かった。

そして優しい月の明かりが夜の森を照らす。

優しい月明かりとは裏腹の惨状を ───


『そこ』に築かれたのは、盗賊たちの死体の山であった。

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