勇なる者

@stardust

第1話

「な、なぁ!助けてくれよ!!」


現在は夜。

夜空の月に雲がかかり、月明かりがない辺りを一層暗く感じさせる。

が、声を出した男の姿は明々と照らし出される。

その横では炎が燃え盛っていたからだ。


男は力強い声を発する。

しかし恐怖からなのか、その全身は小刻みに震えていた。

頭にはバンダナを巻き、見るからに安い布切れで出来た服をまとい、顔には無精髭。

見た目的に年齢は四十過ぎぐらいであろうか。

その姿は所謂『盗賊』そのもの。


盗賊は震えから立っていられないのか地面にへたりこみ、それでも必死に『それ』から距離を取るように後退り、元々所持していたのか短剣を構え必死に威嚇をする。


ザッ……ザッ……─────


ゆっくりとした足音と共に、木の影から盗賊の恐怖の原因が姿を現した。


全身はローブに包まれており服装ははっきりと分からない。

だが歩く度に僅かにローブが揺れ、その隙間から見えるのは黒だというのは分かった。

ローブはグレーに近い色をしているため、木陰でもその黒色が目立つ。

そして『彼』の顔立ちはとても端正。端から見れば二十歳になるかならないかの見た目だ。

それは見るからに女性人気が高そうなことが、誰が見ても明らかなほどに。

若干目付きが鋭くはあるが、それがまた女性を惹き付けそうでもある。

こんな薄暗い森の中ではあるが、仮にこの場に女性がいれば彼に見惚れていたかもしれない。


…………その顔に血が飛び散っていなければ。

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