第50話:鉱山
「鉱山って言うだけあって、なんだろうな……出てくるモンスターのほとんどが、ツルハシ担いでヘルメット被ってるって」
「だって鉱山ですもの」
「ヘルメットは大事にゃねぇ」
「落石注意ですもんねぇー」
この世界の常識って、どこからどこまで本気なんだろう?
トーカは落石がーって言うけど、じゃあ攻略側の冒険者も被っているのかと言えばそうじゃない。
兜なら被っている人はいるけど、安全ヘルメットはモンスターだけだ。
モグラみたいなのとかネズミみたいなのとか、ゴブリン、コボルトとかもいるけどツルハシとヘルメットが標準装備だ。
コミカルな見た目に反して、こいつらレベル200もあるからなぁ。
深く潜って行けば、同じ見た目なのにレベルは上がっていく。
だから一気に十階ぐらい下りて行って、上で見たのと同じ感覚でいると痛い目に会うって言う。
「ってかゴブリンに苦戦するって、ちょっと屈辱的だな」
「何言ってるにゃ? ゴブリンは雑魚にゃよ」
「そうね。雑魚ね」
「どこかだよ! だってここのゴブリン、レベル201あるじゃん!!」
そのゴブリンが俺たちを見つけて襲って来た。
石を蹴ってそいつらをまとめて吹っ飛ばす。
「ほら、雑魚にゃろ?」
「そうですぅ。マスターはゴブリンを雑魚のように蹴散らしているですよぉ」
「……いや、そうだけど……」
でもあいつら、レベル201……ま、まぁいいや。
「けどさ、この世界のモンスターって、同じ種族でレベルが固定されていないんだな。強さも全然違うし」
「そんなの当たり前にゃ」
「いや、それがなんで当たり前なのか、俺にはさっぱり理解できないんだよ」
雑魚──といっても、レベル10のゴブリンもいればレベル201のゴブリンもいる。明らかに強さ違うだろ。
「タクミ。この世界はそういうものだって思うしかないわ。私たちは生まれた時から、それが常識として育ってるもの。だから『当たり前』なの」
「うん、まぁそうだね」
それしかないよなぁ。
どんなモンスターも、地球での知識を基準にして考えない方がいいだろう。
「マスター。確かにそれぞれのダンジョンに生息するゴブリンのレベルはさまざまです。だけどそのタンジョンだけを基準にして考えると、ゴブリンはどこのダンジョンでも雑魚モンスター筆頭ですぅ」
「ダンジョンだけで考える?」
「はいぃ。例えばここ鉱山では、入口階層に生息しているモンスターのレベルは、199から203ですぅ。レベル195の冒険者でも倒せるモンスターですねぇ」
つまり、モンスターが強いか弱いかは世界全体で考えずに、ダンジョン単位で考えろってことらしい。
推奨レベル190以上のダンジョンに、レベル100が入るなんて馬鹿でしかない。
あ、はい。
俺はまさにそれですね。直ぐに上がるけど直ぐに下げられる。
推奨レベル無視して入ってます。
「ゴブリンはどこのダンジョンでも、上層にしかいないにゃ。もちろん例外もいるにゃけどね」
「例外?」
「そ。ゴブリンキングだとかゴブリンジェネラル。ネームドモンスターなんだけどね、こいつが出現するときは、レアモンスターのゴブリンが出てくるから。そいつらは階層に会わせた強さだから」
「なるほどね。ボスゴブリンか」
それは納得できる。
ま、とにかく出会うモンスターがどのくらい強いのかなんて考えず、常に全力で戦うことにしよう。
手加減なんかせず、俺の全身全霊で敵を倒す!!
「今日のタクミは、激しかったわね……」
「鬼気迫る勢いにゃったにゃ」
「モンスターがずたぼろで、同情するレベルでしたぁ」
「いやもう、どいつが弱くてどいつが強いのかとか考えるのも面倒だし、とりあえず全力でぶっ倒そうと思って」
てかなんで君ら、そんなドン引きしたような目で見るんだよ。
「タクミ、そろそろステータスが999になるんじゃないの?」
「え? いやさすがにそこまではいかないよ」
一日に倒すモンスターの数は、100から130といったところだ。
案外がんがん倒せる訳じゃない。まぁボスタイムに遭遇すれば、その限りではないけれど。
ダンジョンだからモンスターがうようよしているんじゃないかと思いきや、そうでもなかったりする。
ボスタイムでもない限り、一匹、もしくは1グループ倒して次のモンスターに遭遇するまでに数分かかることもざらだ。
そこまで生息数が多いわけじゃないってことだな。
まぁトーカの恩恵のおかげで、一日にレベル300近く上がったりもするんだけどさ。
けど、腕力と体力がそろそろカンストしそうなんだよ。
で、この調子で行けば一週間もしたら全部カンストするんじゃないかなってことろまで来ている。
カンストした後は、レベルが上がるとどうなるんだろうか。
ポイントくれるの?
くれないの?
くれたとして、カンストしてたら振れないよね?
俺のステータスポイント、宝の持ち腐れになってしまうん?
なんか……カンストさせたくなくなってきた。
ステータスと何かを交換できるシステムって、ないのかなぁ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます