第48話:間違った使い方
帰宅して、さっそく貰ったカードがなんのカードなのかルーシェに教えて貰った。
「これは
「ふぅん。どういった時に使うんだい?」
「にゃー。落とし穴があると分かっていても、どこにあるか分からない時とか役に立つにゃ」
「他にも床に罠がある場所とかもね」
「つまり浮かせられるのは人間もってこと?」
ルーシェとミトが頷く。
ただ浮かせられる物の重量は、スキルレベルに応じているので低いと小石程度しか浮かせられない、と。
小石、ね。
小石、浮いてると蹴りやすそうだよな。
ほんの10センチ程度でいいんだ。
「効果時間とかはどうなんだろう?」
「あらタクミ、興味あるみたいね」
「ま、ね。実はさ、案外小石を蹴るのって難しいんだよね」
「えぇー、でもマスターのキックは、百発百中ですよぉ」
確かに当たっている。
ただたまに狙っているところではない場所に当たってるんだよ。
当たればそれでいい今なら別に構わないんだ。
でも敵が小さかったら?
動きが早かったら?
インベントリから取り出して手から零れさせ、それを蹴る──よりは、最初から蹴りやすい位置でふよふよ浮かせて、その都度それを蹴る方が楽に決まっている。
効果時間は十分程度でもいいんだ。浮いてるのがなくなったらその都度また石を浮かせるから。
「効果時間は三十分にゃ」
「長いな! 浮かせる対象は一つ?」
「それは術者の魔力次第ね」
「あとはその魔法スキルの熟練度ですかねぇ。使い慣れないうちは一つに絞ったほうがいいですしぃ」
なるほど。使い慣れれば同時に複数を浮かせることも可能っと。
「こ、このカード。俺が使ってもいいかな?」
「オイラは使えるからいらないにゃー」
「私は持ってないけど、特に不便なことはないから。それよりタクミ、キックとどう組み合わせるって言うの?」
「組み合わせると言うか、石を蹴りやすい位置に浮かせておきたいんだよ」
俺の周囲に蹴りやすい位置で浮いた石を常備させたい。
そう話すとルーシェが「なるほど」と頷く。
「確かにその方が攻撃の回転速度も上がるわね」
「タクミがキック専門職になっていくにゃー。世の中にこんな戦い方する前衛職はいないにゃよ」
「褒めてくれてありがとう」
「褒めてないにゃー」
ルーシェも「じゃあタクミが使って」と言ってくれたので、さっそくカードをびりりと破る。
直ぐにステータスを確認すると、スキルと書かれた項目に『浮遊』が追加されていた。
「そういやステータス画面の文字は読めるのに、この世界の文字そのものは俺にはまだ分からないんだけど。なんでだろう?」
「ステータス画面はそれぞれの言語で書かれているそうよ。まぁ本人にしか見れないものだから、本人が読める文字が使われているんでしょ」
「え、じゃあ……俺のステータス画面はこんな文字なんだけど」
っと、勉強用に用意したノートに文字を書いていった。
レベル210 MP:397
ルーシェやミト、トーカが読めたのは数字と、それにアルファベットだ。
「この世界に英語があるのか!?」
「英語? なにそれ」
「これはマジックポイントを現す記号ですぅ」
「うんうん、だからアルファベットだろ?」
「なんにゃ、それ」
ん? どうもおかしいな。
試しにAからZまで書くと、三人は首を捻って「これは分かるわ」「こっちは知らないにゃ」とか言っている。
「冒険者のランクを現すS、A、B、C、D、E。通貨の単位のG。ポイントという意味のPに、Mはマジック、つまり魔力や魔法関係の略式文字よ」
「あとDはダンジョンのことですぅ。だからDPでダンジョンポイントってことなのですよぉ」
つまり、この世界ではアルファベットの一部が記号や単位として使われている、と。
ふぅん。
まぁ地球との共通点があるのは、馴染み安くていいけどさ。
「じゃ、浮遊の魔法を使ってみましょう。ミトが教えてあげてね」
「任せるにゃー」
「よろしく、先生」
浮遊魔法は呪文を唱え、浮かせたい対象に触れるだけでいい。
ただ魔力の練りが弱ければほっとんど浮かないし、練り過ぎれば高く浮いてしまう。
そこはもう実際にやって、距離感を掴むしかない。
ミトからコツを教わりつつ、文字の読み方を教わり、数日が過ぎた。
「浮遊のほうはばっちりね」
「レベル50まで上げると、結構楽になったよ。まぁ正直これ以上は上げる必要もなさそうだけどさ」
「浮遊魔法をそこまで上げる奴もそういないにゃ」
そう言うミトのレベルは23で、このレベルでも人ひとり浮かせることは出来るそうな。
俺は何も考えず、経験値配分をスキルに設定してきりのいい所までと思いながら狩りしてたからさ。気づいたら50近かったからそこまで上げたんだけど。
そしたらミトが拗ねたんだよ。「もう先生じゃないにゃ!」って。
その後首の下を撫でてやったら機嫌をなおしてくれたけど。
「浮遊魔法もコントロール出来るようになってきたし、そろそろ塔の攻略に乗り出そうと思うんだけど」
俺がそう言うと、三人は待ってましたと言わんばかりに頷いた。
「じゃあ、明日からさっそく行こう。まずはギルドで各階層の地図を買ってからかな?」
「そうね。全ての階層でなくてもいいから、魔法陣のある階層の前後は欲しいわね」
「ならそれで」
塔の攻略──というよりも、ドロップアイテムで何が出るのかが重要だ。
どんな呪いでも解くという『月光の微笑み』というアイテムが出るかどうか。
花だということは分かっているけど、ボスが落とすのか、それともノーマルモンスターなのか、それも分からない。
手あたり次第モンスターを倒してドロップを調べるべきなんだろうけど……。
「ノーマルモンスターのドロップなら、情報は出尽くしているものね」
「ドロップ情報ですかぁ? いったい何をお探しなんですぅ?」
ん?
トーカには話していなかったか?
いや、ルーシェに花の話を聞いた時、トーカはあの小島のダンジョンに居残りしていたんだった。
あれ?
もしかしてダンジョンの精霊であるトーカなら、花の事を知っているのかも!?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます