第45話:み・・・みず

 五日もすると切り株モンスターから小さい麿が生えてきた。

 すると切り株モンスターからぴょこんと飛び出して、自立歩行するようになる。


「切り株モンスター……死ぬんだな」

「養分を吸い取られたんでしょうねぇ」

「マロ……意外と恐ろしいモンスターだったのね」

「あ、ああ……」


 小さな麿は全部で八体。大きさはまだ30センチほどで、ここからどうやって成長するのか?

 

「基本的にモンスターですからぁ、侵入者を捕食するか他のモンスターを捕食するか──」

「うわぁぁ……」

「あとは植物系モンスターですのでぇ、土から養分を吸い取ることも出来るですぅ」

「それ最初に言ってくれよ! 土からってことは、特に何もしなくていいってことか?」


 麿に尋ねると、白い柄をぷるるんっと震わせた。その柄は左右に揺れているので、違うらしい。

 通訳であるミトに向かって麿が喋る。


「にゃ~。腐葉土や腐植土が一番いいって言ってるにゃ~」

「腐葉土ってことは、落ち葉とかが必要なのか」

『うぽん』

「ミミズも大事にゃ~」

「ワームの出番ですかねぇ」


 待て。ワームって確かにミミズっぽいモンスターの事だと思うけど、同時にミニ麿の身に危険が迫るんじゃないのか?

 すると案の定、麿は白い柄を青くさせてトーカに泣きつく。


「ダメですかぁ?」

「ワームってどのくらいのサイズなんだよ、トーカ」

「んー、大きいものだと7~8メートルですかねぇ」

「……小さいのだと?」

「まぁ2メートル弱でしょうかぁ」


 30センチのミニ麿が丸のみできそうなサイズだよ。ダメじゃん。


 そうなるとやることは一つ……。






「いやあぁぁぁーっ」

「うにゃっ。うにゃにゃっ」


 俺たちは生成ダンジョンから外に出て、森の中で地面をほじくっていた。

 目的はもちろん。


「ルーシェはミミズが嫌いなのか。いいよ、俺とミトとで集めるから。君は地上モンスターの警戒をしていてくれ」

「うぅぅ、ごめんなさい」

「ぐねぐねするにゃねぇー」


 木の枝で地面をほじくり、見つけたミミズを袋に詰めていく。

 この森の土はいい土のようで、ミミズは大きいし数も多い。

 麿が土を欲しがっていたし、その分の土嚢袋も用意してある。

 土を詰めてインベントリに収納し、ミミズも袋一杯になったらダンジョンへ。


『うぽっ』

『ゴレェェーム』

「うどんも一緒なのか」

「うどんさんは、二階層の木のお世話をお願いしましたぁ。いい腐葉土を作るためには、落ち葉も必要ですからぁ」


 ウッドゴーレムは建築だけじゃないんだな。


 二階層に植える樹は落葉樹を中心に。

 ウッドゴーレムが樹の配置をトーカに頼み、麿はあちこちに穴を掘る。


「麿、その穴どうするんだ?」

『うぽ。うんぽぽぽ』

「ミミズを埋めるにゃー」


 遺体を埋めるのか。

 いや違う。土に住んで貰うためだ。


 堀った穴にミミズをどばーっと流し込み、ゆる~く土を被せてやる。それで終わり。


「ミミズ足りるか?」

『うぅ~……うぽ』


 麿が俺に袋を差し出す。

 御所望なようだ。


 それからミミズ集めを四往復して、麿が満足する量を確保。


 とりあえず暫くは細長い食べ物は見たくないな。






 二階層の拡張も終わり、あとは植物系モンスターを繁殖させれば次は草食系お肉モンスターを召喚士……自給自足生活も夢じゃなくなる。


 そして──


「俺たちの家の完成だ!!」

「わぁ、ツリーハウスみたいでステキ」

「にゃ~」

「ふっふっふ。あの木を生やしたのは何を隠そうトーカですから!」

『ゴレェーム』

「うどんの指示にゃ」

「ぐっ」


 手柄を独り占めしてはいけません。


 ルーシェの言う通り、完成したログハウスはツリーハウスのようにも見える。

 そう見えるのは家のど真ん中から屋根を突き破って一本の巨木が生えているからだ。


 中に入ってみると、その巨木が階段となって二階のロフトに上がれるようになっていた。

 それほど違和感もなく、ログハウスに溶け込んでいるな。


「うどん、いいじゃないか」

『ウゴォォ』

「ほんと、ステキよ。ダンジョンに住むなんて、正直どうなのって未だに思っていたけど。こんな家なら大歓迎だわ」

「オイラは柔らかいベッドと、美味しくて冷めたご飯があればどこでもいいにゃぁ」

「そこは温かいご飯じゃないですかぁ?」

「オイラ猫舌にゃよ」


 部屋は全部で四つ。それプラスでリビングとロフトがある。

 俺とルーシェ、ミトとトーカで、それぞれ一部屋ってことなんだろう。

 だけど俺はぜひともロフトで寝たい。


 そう思っていたら、


「オイラは上で寝たいにゃ」

「え、待ってくださいミトさん。トーカも上がいいです」

「私も上がいいっ」


 ロフト、大人気だ。

 するとうどんが──


『ゴオォォォォォォレムん』


 と吠え、すると樹の枝がにょにょっと伸び始め、ロフトを二つに区切る壁になった。


「おぉ!」

「でも二部屋ですかぁ? これだと三人のうちひとりは下の部屋ですねぇ」

「え……あの、俺もロフトが……」


 自己主張しなかったら、俺だけ頭数から外された。


「これでいいんじゃない? 私とトーカ、ミトとタクミ。男女で別れられれば十分でしょ?」

「あぁ、なるほどぉ。うどんは賢いですぅ。さすがトーカが召喚したウッドゴーレムですぅ」


 そこは関係ないと思うんだけどな。

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