第43話:DP
俺のベースレベルが1だったときに限り、レベルドレインを使った時に今までと違う現象が現れるとのこと。
「レベルドレインを使うとね、頭の中にカウンターみたいなのが出てくるのよ。その数字が回って、今いくつレベルを吸い取ったわよってなるの」
「へぇ。それで細かくレベル指定できるのか」
「そ。だけどタクミのベースレベルが1だと吸い取れないのは当たり前で、そうしたら今度は、代用するスキルを選べみたいな意思が流れ込んできて」
ステータス画面と同じような、他人には見えないウィンドウがポップしたそうな。
そこにはダンジョン生成とキックの二つがあったらしい。
装備に付与されているスキルは対象外ってことか。
「じゃあフィールドダンジョン生成のスキルは、いつでも下げられるってことか。キックは……下げて貰わなくていいけど」
「そうね。攻撃スキルは下げる必要ないわね。攻撃力を抑えたいなら、自分でレベルコントロールすればいいんだし」
「……頑張ります」
それがなかなか難しんだよぉ。
「うぅ。でも生成スキルが320になっちゃったですから、トーカはまたお外に出れなくなったですぅ」
「まぁまぁ。レベル10ぐらいすぐに上がるからさ」
「そうね。正直普通の人なら、レベルが下がると同時にステータスも下がるから直ぐになんて言ってられないけど。タクミの場合はレベルアップボーナスのポイント分は下がらないから、ベースレベル1でも……」
「変態的な強さにゃねぇ」
「ミト……お前、変態って言葉好きだろ?」
「ぬふにゃっ」
ぬふにゃっ──じゃないよ!
あぁ、もう。可愛いなくそぉ。
「これでレベル700っと」
「じゃあ350吸うわね」
「頼むよ」
迷宮内でさっそく生成スキルのレベル上げに励んだ。
二日目にはレベル700に達し、ルーシェに吸って貰うことに。レベルはキリのいいところで350をキープすることにした。
しかし、スキルレベルを吸うってことは、彼女のスキルに還元されるのか?
と思ったらそうではなかった。
「あら? さっきは気づかなかったけど、タクミのスキルレベル10に対して、私のベースレベルが1あがるんだわ。今の出レベルが15回復したもの」
「そうか。さっきは君のベースレベルが元々の186に達していたから上がらなくて気づかなかったんだね」
「えぇ。スキルレベルに上乗せされるのかと思ったけど、やっぱりベースなのね」
「まぁゼロよりはいいよね。じゃあもう少しレベル上げに付き合ってくれるかい?」
階層の拡張、面積を広くしてオブジェの配置、それにモンスター召喚。
あれこれで20万DPは用意しておきたいし、出来れば余分に残してもおきたい。185
何事も貯金は多いほうがいいからね。
翌日には追加でレベルを200上げて、ルーシェにドレインして貰って、獲得したDPは合計で28万を超えた。
今までの分と合わせて30万をちょっと超えたぐらいだろうか。うん、十分だ。
更に次の日からベースレベルを再び上げて、迷宮九十階に三日間引き籠って200まで戻した。
その間にルーシェのレベルが4つ上がり、ミトに関してはレベル175まであがっている。
「ふっふっふ。トーカの経験値二倍効果ですねぇ」
「悔しいけど、その通りかもね」
「にゃ~。経験値二倍とタクミのおかげにゃねぇ」
経験値が二倍になっても、俺の取り分は2だ。まぁその2でレベルが2上がるんだけどね。
そしてモンスターの持つ二倍になった経験値のうち、2だけは俺に入って、残りがルーシェとミトとで半分こだ。
普通の三人パーティーでのひとりあたりの取り分より確実に多い。
だから二人のレベルも上がりやすくなっているのだ。
「じゃあそろそろ最下層攻略に乗り出してみるか」
「えぇ。ここのボスドロップが何か、それを調べるために来たんですもの」
あれ? そうだっけ?
んー……お!
「そうだね。君の呪いを解く方法を探すためのダンジョン攻略だったのんな!」
「タクミ、今凄く間があったにゃねぇ。忘れてたにゃろ?」
「そ、そんなことはない! 断じてないよ!」
ちょっとだけ忘れていましたごめんなさい。
けど……呪いが解けてしまったら、俺にとってのレベルドレインの恩恵がなくなってしまうなぁ。
DPやステータスポイントのことを考えると、上げては下げ、上げては下げの繰り返しはとてもありがたいのだけれど。
そんなことを考えていると、ルーシェが俺の顔を覗き込むように身を屈めた。
「タクミの考えていること、当ててあげましょうか?」
「え?」
「ふふ。私のレベルドレイン。あった方がいいなぁって思っているんでしょ?」
「う……」
その通りです。
「そうねぇ。タクミにとってレベルドレインしてはまた上げて、上がったらまたドレインしてって、ポイントを貯めるのには役立ってるものね」
「そ、そうなんです……」
「これ以上ステータスもりもり上げて、もっと変態ににゃりたいのかぁ」
「……数値が高い方が、どこに行っても生き残れるだろ」
「そうにゃねぇ。そしたらオイラたちも安心にゃぁ」
過去の英雄たちの中には、ステータスが500を超えている人もいたと言っていた。
だったら俺もそこを目指したい。
いや、マリオネットの魔法で彼女らとステータスを共有して、生存率を上げるならもっと上を目指さなきゃ。
特にルーシェとミトは魔力が高い。それと意外なことにルーシェは俊敏も高かったし、これはミトも同様だ。
俺は魔力が低いし、二人の足を引っ張らないようにしっかり上げなきゃならないよな。
「いっそステータス全部999まで上げてみるかな」
そんなことをぽつりと漏らすと、
「うわぁ」
「ど、どれか一つとは言ったけど」
「変態王にゃぁ」
ルーシェとミト、そしてトーカまでドン引きした目で俺を見ていた。
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