第38話:ゲットだぜ

 ウッドゴーレムが三メートル近くもあるデカいモンスターだった。

 ゴーレムタイプはこのサイズがデフォで、決してネームドモンスターでもボスモンスターでもないとのこと。

 逆にゴーレムタイプのネームドやボスって、どのくらいデカいんだろうな。


「ウッドって言うだけあって、木製ゴーレムなんだな」

「はいぃ。長生きすぐと葉っぱや花、果実を実らせるウッドゴーレムもいますよぉ」


 果実を実らせる?

 あれに葉っぱがわさわさ生えて来て、花が咲いて、実になるのか?


 目の前でぬぼぉーっと立つウッドゴーレムを見て、その姿を想像する。


 ただの木じゃん。


 そう思っていると、ウッドゴーレムと目が合った。

 そして──


『ゴオォォォォォォッ』

「はい、敵認識されましたぁ」

「俺のダンジョンなのに敵認識されるのかよ!」

「残念ながら、ダンジョンマスターと言えどもモンスターを使役することは出来ないのですぅ。それが出来るのは魔王か邪神、あとはテイムスキルだけなのですぅ」


 魔王とか邪神とかやっぱりいるんだ。

 そういや俺がこの世界に転移したのは、この世界に求められてってことだったよね。

 残り二人と俺、この三人の能力を考慮したうえで、こちらの力を求める世界があればそこに……って神様は言ってたっけ。

 ランダムでもよかったんだけど、あの時、赤なんとかってのが俺たちを求めている世界にって言ったからこの世界に決まったんだけども。


 やっぱり、魔王退治とかそういうのなんだろうか?


『ゴオオォォォォレ、ムウゥゥゥゥッ』

「うん、そうだな。お前はゴーレムだな」

「別に自己紹介しているんじゃないわよっ。ほら、行くわよっ」


 事前に用意しておいた石に向かって、ルーシェが火の魔法を付与してくれた。

 その石を俺が──


「キック!」


 と唱えてから蹴る。

 的がデカいので狙いやすい。


 ピンポン玉より小さな石は、蹴った瞬間からどんどん大きくなってサッカーボールほどに。

 それが火を噴きながらウッドゴーレムに向かって飛んでいく。

 ちょっとした、いやちょっと大きめの火球だなありゃ。しかも中身は石だから、物理的にもダメージがいく。


 ドゴオォォォォッ

 っと物凄い音を立ててちょいデカ火球ボールが命中し、そのままの勢いでウッドゴーレムが倒れた。


 そして……


「炎上してるうぅぅぅ!?」

「やだっ。火力が強すぎたのよっ」

「マスター……ステータスが高い上にスキルレベルも鍛えちゃってますから……」

「にゃ~。一撃即死にゃねぇ」


 めらめらと燃えるウッドゴーレムはぴくりともせず、そのまま塵になってダンジョンの地面に吸い込まれてしまった。






『ゴオオォォォォォッ』

「こ、今度こそ! かるーっく、キック!」


 これで八体目のウッドゴーレムだ。

 ルーシェの魔法のレベルを下げたが、結果は同じ。

 次に俺のキックのレベルを下げることにしたけど、それがなかなかうまくレベル調節が出来ずにひと蹴りで抹殺してしまう。

 ルーシェの火付与を無しにして……

 ルーシェの魔法マリオネット・サポートで俺のステータスをルーシェと共有して器用と腕力を下げて……


 軽く軽くを意識して蹴ったただの石は、少しだけ大きくなってウッドゴーレムの胸に当たった。

 さっきまでは打ち抜いて貫通させたり、木っ端みじんに砕いたりしていたけど、今回はちょこっとヒビが入っただけ!


「ぶ、無事か?」

「倒れてないし、大丈夫じゃないかしら?」

「マスター! 今ですっ」

「い、今! 今だな!」


 ミト産カードをびりりっと破る。

 すると破れたカードが光りになって、くるくると円を描く線になった。

 その線が飛んでいき、ウッドゴーレムにまとわりつく。


 なんか光の鞭みたいだな。

 くるくるとウッドゴーレムに巻き付いた光の鞭は、そのまますぅーっと溶けるように消えた。


「ど、どうなった?」

「今から判定よ」


 どことなく、ウッドゴーレムがもがいているように見える。

 

 暫くしてウッドゴーレムが動かなくなった。


「え? ま、まさかここまでやって、死んだのか?」

「違うわよ。判定が終わったってこと」

「にゃ~。残りカード二枚でテイムできて、良かったにゃねぇ~」


 え?

 え?

 テイム、出来た?


「おめでとうございますマスターァ。最後のキックは見事なコントロールでしたねぇ。でもあとちょっとで即死でしたけどぉ」

「うわっ。そうだったのか」

「はい~。ですので今あの子は瀕死ですぅ」


 ……。


「うわぁぁぁぁっ。死ぬなウッドゴーレムゥゥゥゥ」

「タ、タクミ! ポーションよ。ポーションをかけるの!!」


 手持ちのポーションをインベントリから急いでポーションを取り出し、ウッドゴーレムに駆け寄って中身をぶっ掛ける。

 一本じゃたりないかも。

 二本目、三本目、四本目とだばだば駆けて行くと、


『ゴオオォォォォォォォォォッレム!』


 なんか物凄く元気に復活した。


「ポーション、掛け過ぎですぅ」

「元気になったんだからいいじゃない」

「元気が有り余っているにゃぁ」


 ゴリラのドラミングのように自分の胸をどんどこ打つウッドゴーレム。

 ほっ。復活してくれてよかった。


『うぽぽぉ~』

「マッシュマン、良い所に来た。今日からお前の仲間になるウッドゴーレムだ」

『ぽぉ~』


 ぽよんと跳ねて、なんとなくマッシュマンは嬉しそうだ。

 

「さぁて、ウッドゴーレムもテイム出来たことだしさっそく!! ……さっそく……」

「さっそく?」

「にゃ?」

「どうしたんですか、マスター?」


 あれ?

 さっそく……ウッドゴーレムに何をして貰うんだっけ?


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