第33話:シュウゥゥゥゥゥット!
スキルカードは破ることで、カードに封じられたスキルを習得できる。
ビリリっとカードを被ると、ぷわぁっと光の粉みたいになって、それから俺の掌に吸い込まれていった。
「これでいい?」
「ステータスを確認してみれば分かるわ」
なんかあっさりしすぎて実感が湧かないなぁ。
レベル100 MP:129/129
腕力:265 体力:227 俊敏:162
持久:178 器用:195 魔力:97
StP:0
【転移ボーナス】
EXPが1になる
【スキル】
フィールドダンジョン生成2
キック1
【装備によるスキル付与】
ハイ・スピード500
ビッグ500
「へぇ。ブーツに付与されてるスキルも見れるのか──って、ハイ・スピード500ってなんだ!?」
「ご、500もあるの!? なんて無駄なスキルを付与してるのかしら……」
「あの、スキルレベルの上限って?」
「999にゃよ。と言っても、500もあれば凄い方にゃ」
「スキルレベルを上げる方法は、そのスキルをどうやって習得したかによって違うって話したわよね?」
学んで自然を習得する方法と、ドロップや討伐報酬で得られる方法だな。
「自力で習得できたものは、それを使うことで熟練度が増してレベルが上がるの。でもスキルって同時にいくつも使える訳じゃないし、使えば使っただけ、MPが持っていかれちゃうから……」
「経験値の配分設定もにゃ、スキルごとに何%分配するにゃーってしなきゃならないにゃからねぇ。あれもこれもとにゃってたら、なかなか上がらないにゃよ」
だいたいの人は、まず一つを重点的にレベルを上げるそうだ。
十分な威力が確保できれば、次のスキルを──というように育てていく。
複数同時に育てるにしても、分配の%を均等にはせず、それかに偏らせる育て方が一般的らしい。
「俺の場合、経験値はどうせ1しか貰えないし……」
「なんにしても、育てられるのは一つだけね。満足いくレベルになったら別のスキルをって感じかしら」
「スキルかベースのどちにゃか、しかもスキルも一つだけ。タクミはあまり深く考えない方がいいにゃねぇ」
貰える経験値が1しかないんだし、それを複数のスキルに分配することもできないし……考えるだけ無駄か。
うん、分かったよ。
「じゃあキックのスキルレベル上げを先にするかな」
「そうね。不人気階層なら他の冒険者もいないし、狩り放題だから直ぐに100ぐらい上がるでしょ」
「ベースレベルを下げた方がいいにゃねぇ」
「地下二階の適正レベルが35だったかしら?」
さっそく迷宮に潜って、徒歩で地下二階を目指す。
マスターキーは地下三十八階にぶっ差しているけど、次にベースレベルを上げたくなった時には四十階からスタートすればいい。
今日一日でのレベルの上がり方次第で、二階の壁に鍵を挿してもいいな。
「キック!」
スキルを使う時には、スキル名を口にすればいい。
魔法の場合にはそれプラス呪文が必要で、厨二心をくすぐる仕様になっている。
キックは物理攻撃スキルだから、こうして口にすればいいだけのハズなんだが……。
「なんか足先が温かくなるだけで、何も起きないんですけど?」
「蹴り技にゃあ。何も蹴ってにゃいから、そりゃにゃあぁ」
「蹴らなきゃダメなのか……」
対峙するモンスターは兎だ。ただ二足歩行で、顔には十字の傷もあって可愛さの欠片もない。
その手にはこん棒を持っているけれど、あの手をどうやって握っているんだろうな。
「じゃあ兎を蹴らなきゃダメかぁ」
ちぇーっ。
ちょっと不貞腐れて足元に転がる小石を蹴ってみた。
ヒュンっと音がして、次の瞬間には『ピァッ』という短い断末魔が聞こえる。
「え?」
「な、なによ今の?」
「にゃあぁぁ……酷いにゃねぇ」
な、なにが起きたんだ?
一瞬のことだったから分かりにくかったけど、なんか大きな岩が兎に向かって飛んで行ったような?
いや、違う。
小石だ。
ブーツに付与されたビッグの効果で、石からサッカーボールを一回り大きくしたサイズに膨れ上がったんだ。
それが……ハイ・スピードの効果によって、物凄い速度で飛んでいった……と。
「蹴るのはモンスターじゃなくてもいい、のか。いやこれ、モンスターを蹴ったら巨大化して大変なことにならないか?」
「そ、そうね……小石で留めておくべきね。でもどうしてブーツの効果が出ちゃったのかしら」
「さっきキックのスキルを使ったにゃあ。それで自然と魔力が足に蓄積されたにゃねぇ」
「あぁ、なるほどね。キックと併用すれば、魔力コントロールもほとんど必要ないんだわ」
俺にはなんのことだかサッパリ分からないけど、まだキックと同時に使えばいいってことだな。
うっし!
じゃんじゃんレベル上げするぞ!!
「それで、今日一日ずっとキックスキルのレベル上げしてたですか?」
「そうなんだ」
「ベースレベル上げのはずだったのに、下がってるじゃないですかぁ」
「ルーシェに吸って貰ったからね」
「卑猥ですぅ」
なんで掌をちゅーってするだけで卑猥なんだよ!
「それでぇ、キックのレベルはいくつになったのですかぁ?」
「うん。五時間ぐらい頑張って、レベル130になったんだ!」
「相変わらずおかしいですぅ~」
おかしいって言うの止めてくれないかなぁ。ちょっと傷つくんだけど。
俺ひとりでもモンスターを倒せる。もちろんレベル35と決して強い相手じゃない。
だけどそれが嬉しくて、ついつい張り切り過ぎてしまった。
あとはルーシェの手を煩わせない分、レベルが下がる心配もない。ってことは、レベルドレインの必要もない。
しかもベースレベルは上がらないから、ずっと同じ狩場でスキルのレベルを上げることも出来るし。
無駄な工程が無かったのも、レベリング効率が良かった要因だろう。
「さぁ、明日はキックのレベルを250まで上げるぞぉ」
「えぇ!? ま、まだ上げるのですかぁ? いつになったらトーカのところに戻ってきてくれるのですかマスター?」
「いつまでもあんたのところには戻って行かないわよ。さ、タクミ。宿に戻りましょう」
「そうだな。お腹も好いたことだし。じゃあトーカ、マッシュマンにもよろしく伝えておいてくれ」
「ふえええぇぇーん」
さぁて、今夜は何を食べようかなぁ。
あ、兎肉だけはなしな方向で。
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