第31話:ステータスがおかしい

「一日一枚だけで、カードを作ったらその日はもう動けないにゃ」

「う、動けない!?」

「にゃ~。の~んびり寝るにゃよぉ」


 なんだ、寝るだけなのか。

 しかも他にも条件はあるらしい。


 1:朝日を浴びて、毛が輝いている時間だけ。だいたい十分程度だとか。

 2:朝日必須なので、太陽が出ない日は無理。

 3:地平線から昇る際の朝日でないとダメ。


「昇ってしまった太陽はダメってことか」

「そういうことにゃ~」

「でもミト。お前、朝そんなに早く起きないよな?」

「うにゃ~」


 明日から叩き起こさなきゃならないのか。


「あとテイムカードを使っても、使用者のレベルで成功率が変わるにゃ。ウッドゴーレムはレベル150だったかにゃー」

「いくつか種類がいますぅ。一番低いのが150で、次は230ですねぇ。あと280っていうのもいますよぉ」


 レベル150ならなんとか上げられるだろう。

 この十日で俺のレベルは100まで上がっている。正確には上がって下がってまた上がっての繰り返しだ。

 ステータスは筋力と体力メインに、魔力以外もそこそこバランスよく上げた。

 魔力にも振ってはいるけれど、元々の数値が低いのでどうしても低く見えてしまう。


「よし。じゃあ目指せレベル150のウッドゴーレムってことで」

「じゃあ暫くダンジョンでレベル上げかしらね。地下五十階の適正レベルが120だし、まずはそこで130まで上げましょう」


 俺のレベルは簡単に上がるが、ルーシェは魔法を使えばレベルが下がるのでそれ以上に上げなきゃならない。

 もっとも、レベルドレインで上げるのでこちらもすぐだ。


 出来ればテイム対象よりレベルは高い方がいい。

 となると、ルーシェの上限レベル近くまで上げた方がいいよなぁ。

 だけど今俺たちが相手にしているレベル100前後のモンスターになると、ルーシェの魔法一発では倒せなくなってきている。

 レベル180の、彼女の元々のレベルに近いモンスターとなると何発撃つことになるか。

 そして、一匹倒すのにレベルがいくつ下がることになるか……。


 可能なら、数匹まとめて魔法一発で倒せなきゃレベル赤字になんだよ。


「俺も戦闘スキルが欲しいなぁ」

「そうねぇ。今は私の魔法でどうにかなっているけど。この先、私だけじゃどうにもならなくなるし」

「君に頼ってばかりじゃ、男として不甲斐ない。せっかくステータスが上がって来てるんだし、物理攻撃でなんとかならないかなぁ」

「タクミって、今ステータスはどうなっているの?」

「ん、こんなんだけど」


 転がっている石で地面に数字を書き込んだ。




 レベル100   MP:129/129

 腕力:265  体力:227  俊敏:162

 持久:188  器用:175  魔力:107


 StP:0


【転移ボーナス】

 EXPが1になる


【スキル】

 フィールドダンジョン生成100




「ちょっ。なんなのこのステータス!?」

「うわぁ、むちゃくちゃですぅ。えぇー、これならこん棒振り回してもいいんじゃないですかぁ?」

「こん棒は流石に無茶にゃあ。でも、ちゃんとした武器を持たせれば、とんでもなくなりそうにゃねぇ」


 え?

 俺のステータス、なんか問題でもあるの?


「ど、どこがおかしいんだ、俺のステータス」

「全部ですぅ」

「前にもいったけど、こっちの世界じゃレベルが上がった時にポイントなんて貰えないの。それまでの経験に基づいて上昇するんだけど……何も上がらない時だってあるわ」

「え? 待ってください。ポイント? なんのことですぅ?」


 ステータスポイントのことは、トーカには話していなかったな。ミトも目を丸くしてこっちを見ている。

 ルーシェはふふんっと鼻を鳴らして、トーカを見下ろしていた。


「あー、ポイントっていうのは──」


 レベルが上がると1ポイント貰える。

 そのポイントは自由にステータスに振ることが出来る。

 で、レベルドレインしてもステータスポイントは消えないし、振った分もそのまま残る。


「俺みたいにレベル上げたらルーシェに譲渡して、またレベルを再上げできる状態だからさ。たかが1ポイントも、何百と溜まるんだよ」

「うえぇぇ……こっちの世界では考えられないことですぅ。人には得意不得意があるです。ミトさんのように剣と魔法、両方が使えても、その分どちらも平均して育ちますから、片方を極めている人に比べるとぉ……」


 トーカがちらりとミトを見る。見られている方は特に気にした様子もなく、にゃ~っと鳴いた。


「器用貧乏っていう言葉があるにゃ~。オイラは剣と魔法が両方使えるにゃけど、腕力も魔力も、極端に高くなることはないにゃ~」

「でも俺だって、魔力は低いぞ?」

「だけどマスター。先ほどのお話だと、魔力だって自由に上げられるのですよねぇ?」

「うん、まぁそうなんだけど」

「魔力を上げるためには、普通、魔法を使ったり魔法の研究をして知識を高めたりしなきゃダメなんですよぉ」


 それをしなくても魔力を上げる手段を持つ俺は、異常なんだとか。

 そして既に異常なステータスになっているという。


 腕力や体力が200を超えている物理系脳筋タイプで、しかもレベルは100前後。

 それで魔力が100を超えるなんてのはおかしい──と。


「脳筋だと、魔力は50もあれば上等にゃからねぇ」

「そ、そうなんだ……へぇ、じゃあ俺ってちょっとは凄い?」

「凄いのよ」

「凄いですぅ」

「凄いにゃねぇ」


 へ、へぇ……凄いのかぁ。


 でもこれって、俺が転移者だからだろうしな。

 俺個人が凄い訳じゃないんだろう。


「じゃあとにかくさ、俺も戦闘に貢献できそうってことでいいのかな?」

「今の装備じゃダメよ。いくらステータスが良くても、武器がゴミだとモンスターにダメージなんて与えられないし、なにより……」

「武器の方がタクミに耐えられないにゃねぇ」


 俺に耐えられない?


 つまり、武器の耐久度が俺の腕力について行けず、ポッキりと折れてしまうだろう……とのこと。


 ウッドゴーレムをテイムするためにはレベル上げが必要で、その為には装備が必要で……。

 貯金って、なかなか出来ないものだなぁ。

 

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