第30話:テイムカード
「ではこちらが薬草の報酬の100Gです。それからドロップ品の買取が950Gです」
生成ダンジョンにマッシュマンを移り住ませて十日もすると、腹痛の薬になる薬草が安定供給されるようになった。
といってもまだ量が少ないので週に一度、今の量を採取できるぐらいだという。
食堂で手ごろな値段の定食を頼むと、だいたい5Gだ。一日三食15G。二人と一匹で二日分ほどにしかならないが、俺たちは何もしなくても勝手に育っている薬草なんだからタダでご飯が食べられるようなものだ。
しかもこの間も俺たちはダンジョンに潜って下層を目指しているのだから、そっちでの稼ぎだってある。
「結構貯金が溜まってきたなぁ」
「そうねぇ。タクミも冒険者らしく、装備を整えてみたら?」
今の俺は私服をそのまま着ている。
こっちの世界では見かけないようなデザインだからこそ、防具──に見えなくもないとルーシェは言う。
もちろん、防御力なんて皆無だけれど。
なんせ袖なしダウンジャケットとジーパンだからなぁ。ダウンの下は普通のTシャツだし。
「装備かぁ……装備もだけど、俺はもっと大事な物があると思うんだ」
「大事なもの?」
ギルドを出て宿へと戻る途中。
町に来た時には貧乏街道に向かっていたけれど、ここ最近で貯金は1000Gになった。
1000Gあれば最低限の装備は整うとルーシェは言う。
だけど俺は──
「少しでも早く、ダンジョンに家を建てたいんだ」
そう言うと、ルーシェが遠くを見つめていた。
「にゃー。本気であそこに住む気にゃねぇ」
「だってお前、宿に泊まっていたら三人で一日115G飛んでいくんだぞ? 食費入れて160Gだぞ? 十日で1600Gになるじゃないか」
今の貯金金額を上回る。
もちろん食費に関しては自給自足でもしない限り、ダンジョンに住んだって必要になるもんだけどさ。
でもマッシュマンに尋ねると、彼は野菜を育てたことはないものの、だからこそ栽培したいとやる気満々なんだ。
俺たちが食べる分なら、そんなに大量に育てなくてもいいし。
あとは家さえどうにかなれば──
「ダンジョンの中……だと、人を雇って家を建てて貰う訳にもいかないしなぁ」
「そうねぇ。あのダンジョンの事を知られれば、楽にレベルを上げようとする人間やドロップ目的の人間に悪用されそうだものね」
「となると、自分で建てなきゃならないんだよなぁ」
クラフトゲームでブロック積み上げて作るのとは訳が違うし。
「じゃあウッドゴーレムを手懐けるといいにゃねぇ」
「ウッドゴーレム? 木のゴーレムを手懐けて、どうするんだよミト」
「にゃあ。ウッドゴーレムは木造建築のプロフェッショナルにゃ。木さえあれば、伐採から建築まで全部やってくれるにゃよ」
ただし、木以外の材料を使った建築はできないとのこと。
いや、俺が理想にしているのはログハウスだし、願ったり叶ったりだろ?
問題はそのウッドゴーレムをどうやって手懐けるか──だ。
「ウッドゴーレムですかぁ? はい、召喚できますよぉ。一体召喚するのに交換DPは1000ですけどぉ」
「そのゴーレムって、手懐けられるのか?」
「……え?」
翌日、今日は迷宮都市のダンジョンには行かず、生成ダンジョンの方へ。
ミトに言われ、じゃあDP交換で配置できないかとトーカに尋ねたのだが……明らかにドン引きされた。
そこでカクカクシカジカと説明すると納得したようで、
「ほんっとの本当にダンジョンに住む気なのですねぇ、マスターはぁ。それはやっぱり、トーカと片時も離れたくないからですかぁ?」
「寝泊まり出来ればいいんだ。時々のんびり寛げたりすると尚いい」
「ふ、ふふふ。そうよ。日中は私と一緒。ダンジョン攻略中も一緒。地上に出て、時々帰って来る程度の場所なのよ!」
「っぷうぅーっ!」
マスターキーがあるなら、夜はダンジョンで野宿じゃなくってここに建てた家で寝るつもりなんだけどな……。まぁいいや。黙っておこう。
「で、ウッドゴーレムを手懐ける方法はあるのか?」
「手懐けるとはテイムの事ですぅ。マスターはテイムスキルを持っていませんからぁ、通常の方法だと無理ですねぇ」
「通常じゃなければあると言っている気がするなぁ」
「テイムカードがあるのよ。もしくはテイムスキルを封じたカードを手に入れることかしらね」
「ぷぅーっ。トーカが説明しようと思っていたのにぃ!」
またいがみ始めるので、面倒だからミトに教えてもらうことに下。
「ミト、テイムカードってなんだ?」
「にゃ~。テイムスキルが付与されたカードにゃよ」
「付与? 封印とどう違うんだ」
「えっとにゃにぇ~。封印カードは、それを使うとスキルを覚えられるカードにゃ。付与カードは、そのスキルを直接使えるカードにゃ」
なるほど。スキルを覚えるか、使うかの違いってことだな。
そしてテイムスキルはそもそも失敗することもある。だから付与カードも同様にテイムを失敗することがある。
「で、そのカードはどこで手に入るんだ?」
「古代魔導都市の迷宮の宝箱や、あとはゴブリンテイマーってモンスターが落とすにゃ。それと──」
ミトが胸を張る。そして、
「おいらが作れるにゃ」
と言った。
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