第7話
兄の拷問から数日経って、おれの療養もすんだ頃のある日……
「アルバートは始末するべきだな。」
「ち、父上!ようやくですか?!」
「ああ、前々から考えてはいたが無能でも我が子を処分するのには、リスクが高いから生かしてやっていたのに、親の言い付けを守るのに失敗するばかりか、私の『商談』を台無しにさせるとは……いくら無能といど度しがたい愚かさだ」
「全くです、父上!!」
「無能なだけなら無害ゆえに許せもするが、その上に愚かとくればな……もっと早く決断すべきであった」
「父上、具体的にはどうします?[裏山]に連れていって俺が殺しましょうか?」
「いや、念には念を入れて[迷死の森]に捨てる。万が一にでも奴を始末したことが周囲に漏れたら厄介だからな」
「分かりました、父上。ですがどのようして?」
「母に会わせるとでもいって馬車ごと落とせばいい。丁度、あの女の領地との境目にあるからな。事故を装うのにも都合がいい」
「承知いたしました。いつ頃、決行を?」
「明日の夜に。こういうことには迅速さが求められるからな、有能なお前なら分かるであろう?」
「勿論です!父上!!」
「うむ。実行についてはお前に一任する。果たしたおりには五千万ゴールドをやろう」
「必ずや果たしてみせます!父上!!」
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父と兄による自身の殺害計画を聞いてしまったおれ。
[迷死の森]とは読んで字のごとく迷えば確実に死ぬ程危険な森だ。まあ、迷わなくてもその森に入れば、出てくる高位の魔物や高レベルの魔物に、喰われるか殺されるかして、その森から生きて出てくる奴は滅多にいないらしい。
そんな森に捨てられるとは余程、おれの存在が目障りだったらしい。元をただせばおれの不用意な行動が原因とはいえ、拷問だけではあきたりないのだろうか?
レリア姉以外の家族からの愛情なんて期待してなかったし、おれもそういう感情を抱いていたといえば嘘になる。だからこういう結末がくること位は容易に予想できたし覚悟もしてたのに、おれの胸に生まれた感情は悲しみにも似た虚しさだった。
(家族ってこんなもんだったっけかなぁ…)
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~翌日の朝~
「坊っちゃま!アルバートお坊ちゃま!!」
「ん?ああ、シルハか。そんなに騒いでどったの?」
「どったの?ではありませんよ!!ようやく、ようやく母君に会えることになったのですよ!!」
「……そのことか……」
「どうかされたのですか?」
「ああ、いや、今まで顔も見たことなかったのにいきなり母親に会えるっていわれても実感ねえなぁーってさ」
「…本当にそれだけですか?」
「どゆこと?」
「どうにも、気分が沈んでいらっしゃるご様子なので…」
「ホントホント、大丈夫だよ?おれは」
「でしたら、よろしいのですが。前にも申しましたが、お辛いことがありましたらいつでも頼ってよいのですよ」
「うん、分かってる。いつもシルハやレリア姉には助けられてるしね。何かあったらちゃんと頼るよ」
「はい、いつでも」
「それで、母に会うのはいつ頃になるの?」
「明日の昼にこの屋敷を、ご出立予定ですので早ければ明日の夜にはお会いになれるかと」
「そっか、分かった。ありがとう」
「いえ、それで今日のお勉強ですが……」
「あー、じゃあおれ部屋に戻ってやってるわ。確か課題置いてたよね?」
「え、ええ。お、お坊ちゃまどうなされたので?」
「んにゃ?たまには真面目に勉学に励もうかと思っただけ」
(シルハとのお勉強もこれで最後だろーしなぁ)
「私もすぐに他の仕事を終わらせて向かいますので!!」
(お坊ちゃまがようやく改心してくださったのだわ!私の努力は無駄ではなかったのね!!)
「そんな急がなくても、今日はちゃんと待ってるよ」
「いえ、大至急向かいますので!!!」
(もう行っちゃった、速ええ)
最後のシルハとのお勉強は最後までよく分からなかったけど、初めて勉強っていうものが楽しいと思えた日だった。
(こんなんだったらもっと早くに真面目に勉強しとけばよかったかな?ごめんなシルハ、レリア姉、今までありがとう……)
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