第6話
ドカッ!バキッ!ゴスッ!バゴッ!
「お前みてーな!無能のせいで!俺が親父に!説教くらっちまったじゃねーか!!」
「ぐっ!がっ!」
おれが今なにをされているかというと、親愛なるお兄様から、[折檻]を食らっているところだ。
何故こうなったこというと、おれが王女様を連れて屋敷を出ていたことがバレてしまい、婚約は破談にこそなりはしなかったものの、親父の[交渉]が上手くいかなかったらしい。そこに空気を読まずに、小遣いをせびりにいった兄貴が説教されてしまったためその苛立ちを元凶である俺にぶつけているという訳だ。
「てめぇ!みたいな!無能になんで!俺が!足を引っ張られなきゃなんねーんだ!!」
こんな調子で囚人を実際に拷問する専用の部屋に俺を連れていき、一時間ほどぶっ続けでおれに折檻紛いの拷問をしている。
この部屋には窓一つなく、拷問器具以外には出入り用の扉しかない。何故、貴族の屋敷に実際に使用されている拷問部屋があるのかは知らないが改めて闇の深い家だったことを思い知らされた。
今回の件は王女様を不用意に外に連れ出してしまったおれの不手際ではあるものの、自らの子が別の子を拷問するというこの醜悪な事態に父である当主が何一つ行動を起こさないということは、おれが死のうが助ける気も興味すらもないということに他ならない。
(もう少し家に居れるかと思ってたけど、この分だとさっさと出ていかなきゃ、殺されちまうかも知れねーな)
(それにしても、王女の婚約者であるおれを殺して何のメリットがあるんだ?)
(どうしようもない「職業」を得たからといってここまで邪険に扱う必要性があるようにはおもえないんだがな)
この家のおれに対する扱いに関して不可解なものを感じながら、拷問に耐え解放された頃には既に拷問を食らっていたおれは勿論、していたはずの兄も体力が尽きたのか「二度と俺の邪魔をすんじゃねぇぞ出来損ないのクズが!」と吐き捨てて外に遊びにいってしまった。
「ぐっ!カハッ!ゲホッ!ゴホッゴホッ!ハァハァ」
「ハァ…あんだけ…拷問されりゃ…流石に……ボロボロ…だなぁこりゃ、とりあえず…へ、部屋に……」
(あ、ヤベェ)
拷問されている間、合間に補給していた兄と違って、飲まず食わずでひたすら拷問されていて、流石に体力が尽きており思ったより体力が限界だったらしく、俺はぶっ倒れてしまった。
「アル……!ど……たの?!大………!?誰か…シル……!!」
「アル……お……!!治療……!早……!!アルバ………!しっか……!!」
(あ、レリア姉…シルハ……心配…かけて…ご、めん、な…さ………)
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その後、俺が目を覚ましたのは2日後のことだった。
「アルバートお坊ちゃま、そこまで言いたくないのであればもう私は何もお聞きしません」
「うん、いつも悪いなシルハ」
「いえ、これが私の役目なれば…ですが坊っちゃま?」
「ん?何、シルハ?」
「どうか…どうかご自愛下さいませアルバートお坊ちゃま。あなたが傷つく度に胸を痛めるのは私一人ではございませんよ」
「…ああ、分かったよシルハ……ありがとう」
「礼には及びません、それでは」
(流石に兄のことは、どう説明すれば言いか分かんなかったからはぐらかしたけど、大分心配かけちまったな…こんなんで大丈夫なのかね、おれは)
「アル!アル!」
「あ、レリ……ワブッ」
「アル!大丈夫?!なにがあったの?誰にやられたの?!」
「だい、だい、じょぶ…大丈夫でず」
(極ってる!頸動脈完璧に極ってるコレ!!)
「ホントに!ホントに心配したんだよ!!アル!!良かった…ホントに良かった」
メイドと姉の心配と愛情が嬉しい反面、この後の説明の面倒臭さとそもそも説明できる状態になれるかどうかが不安になった、今日この頃だった。
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