第4話

 おれが習い事をサボったり、何となく家にいたくねぇ~なぁ~って時に、専ら足を運ぶのがこの「裏山」に造った「隠れ家」だ。

 魔物に壊されないように、「鋼糸」や魔物の素材をふんだんに使ってガッチガチにしてあって家の人間にバレないように規模はさほどでもないが、強度でいえばそこらの要塞や城にも負けないものを誇っている……はずだ。


(うーん…埃っぽいな。前に来たのは3日前だっけ?掃除したよなぁ)

(ま、掃除とかは後回しにしていまは将来のことを考えるか……)


 俺は8才になったら、家を出ようと思っている。

 何故、8才なのかというとこの世界の貴族の子どもはその位の年齢から冒険者になって実戦やレベリングをするのだ。さすがに護衛をガチガチに固めるし、貴族以外の子どもや、金銭に余裕がなかったり、強くなる必要性がなければならないらしいが冒険者になれるの8才から可能で貴族でなくてもいいのだから、これを利用しない手はないだろう。

 

(シルハやレリア姉には悪いが、あの家でずっと過ごしていくのは親父も兄貴も姉貴も望んじゃいねぇだろう、勿論俺もな)

(これだけ、レベルを上げられたんだ後は機を見計らうだけだな。)

(とりあえず昼寝でもするか)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「んー寝たぁ」

(いま、何時位だ?)


 外を見ると、既にキレイな夕焼けが空に広がっていた。

 

「やべぇ…!寝過ぎた!!」


 さすがにこんな時間までバックレるつもりはなかったため、俺は大慌てで帰宅した。

 そんな俺を待っていたのは…


「アルバートお坊ちゃま~?」


「アル?こんな時間までどこに行ってたの?」


 額に青筋浮かべたシルハとホッとした表情をしているレリア姉だった。 


「えーとですね、俺もこんな時間まで隠れるつもりは無かったんですよ…でも、その」


「でも?」


「…うっかり寝てました。すいません」


「どこに行っていたのかはお説教の後でお訊きします。後、課題は10倍ですので」


「アル、無事で良かった。課題は頑張ってね」


「……はい」


 この後、俺が地獄を見たのは言うまでもない…

 

 そしてこんな日常を過ごして2年が経ったある日のことーーー


「アルバートお坊ちゃま、おめでとうございます!」


「……何が?」


「何って婚約がお決まりになられたことですよ!それも第三王女のリニア様とですよ!!」


(モーターカーみてぇな名前してんなぁ)

「何でわざわざ王女様が、長男でもねぇ無能な俺なんかの婚約者に?」


「アルバートお坊ちゃま……。それは何でも当主様が王家のお茶会にお呼ばれした際に王様と縁を結んだのがきっかけとか、ですが詳しいことは何も……申し訳ございません…」


「ああ、いや別にいいよ。何となく聞いただけだからさ。とりあえずの顔合わせとかっていつになりそう?」


「それでしたら2ヵ月後でございます。」


「ふーん、分かった。ありがとう」


「いえ、それとー」


「ん?なに?」


「アルバートお坊ちゃまは決して無能等ではございません。確かにお勉強は苦手でございますが、だからといってお勉強ができないわけではございませんし、運動に関しましてはそこらの大人では相手にもなりません。

生まれもった「職業」に囚われすぎてはいけませんよ。」


「そっか……」


「出過ぎたことを申しました。どうかお許しを」


「いや、すげぇ嬉しかったからそんなに申し訳なさそうにしなくていいよ。本当にシルハには助けてもらってばっかだわ、ありがとう」


「この身に余る光栄にございます。」


(大袈裟だなぁ)


「それでは、今から王女様の御前に出ても恥ずかしくないように、きっちりみっちり鍛えて差し上げますわ。アルバートお坊ちゃま」


「……ごめんシルハ、今日はヤバい位体調が悪くてだな。っつー訳で勘べ…」


「では、お部屋に参りましょう。アルバートお坊ちゃま?」


「……はい」

(…誰か助けてくれ)








  

 


 


 


 

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