第20話・チョコの浮気者~!!
「どうした? ナツ? 何か考え事か?」
「まあ、ちょっとな」
翌朝、俺は昨夜の夢を思い出し悶々としていた。やけにリアルだった気がする。ベッドの中にアロアナ姫がいただなんて。それも裸で。ってことは、俺は欲求不満なのか? と、頭を抱えると、ガイムが心配そうに声をかけてきた。ファラルやオウロからも注目される。
あれはきっと抑制されてきた想いが、深層下で膨れ上がって夢となって出てきたに違いない。たぶんそうだ。でもそれをこいつらに知られたなら絶対からかわれるから言えやしない。特にガイムに知られたなら「万年童貞」と、馬鹿にされそうだ。
魔王討伐の旅の間でも奴は同じ年の気安さもあり、娼婦の館に連れ込もうとしたし、仲良くなった女性をけしかけて俺の部屋に送り込んできたりした。その度に何度具合が悪くなった振りをして乗り切ったことか。
はあ。と、深くため息を漏らすと、今度はファラルから聞かれた。
「ナツ。食欲ないの?」
考え事をしていたら手が止まっていたらしい。向かい側のテーブル席では、オウロからハムをもらってご機嫌に食らいつくチョコがいた。
「ゆっくり食べていいですよ。誰も取りませんよ」
「ニャア~ン」
「チョコちゃんは可愛いなぁ」
オウロからハムをもらってご機嫌のチョコは、また何かねだる気でいるようだ。オウロの足元にお座りして待っていた。それを見てオウロの隣の席に座っているファラルが「今度は僕が」そういって、自分の皿に乗っているハムを与えていた。チョコは遠慮なく頂いていた。
今朝からチョコはどことなくそっけなかった。普段は俺の側から離れないくせに、今日はどうしたことか抱っこを嫌がり、朝食の誘いにきたオウロに近寄って後をついて行った。俺のことなど気にかける事もなかった。
(まさかアロアナ姫の夢を見ていたこと、チョコに知られてないよな?)
「チョコぉ?」
チョコの態度に寂しいものを感じる。今まで俺にべったりだったくせに何があった?
「なあ、ナツ。チョコと喧嘩でもしているのか? なにかあったのか?」
「……別に」
がく然としていると、ガイムに聞かれた。俺のほうが理由を知りたい。チョコに何があったのか? いつだってチョコは俺の側に居て離れなかったと言うのにさ。何でだよぉ。チョコ~。カムバックっ。
二十八歳の俺に懐いていたチョコのことだ。案外おっさん好きなのかもしれない。オウロの大人の男ぶりにころりと行ってしまったのか? オウロに抱き上げられたチョコは、一度こちらを見てから満更でもなさそうに喉を鳴らしていた。
(チョコの浮気者~)
すました顔のチョコに俺の心は届かなかった。
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