第13話・同居して困った事


「シャル。あ、それはいい。俺がやるから」

「ナツさま。気にしないで下さい。居候の身ですからそれぐらいさせて下さい」

「いや。これはさすがにきみには……、いいよ。俺、後で洗うから」

「そんな。遠慮なさらないで」


 チョコと釣りから帰って来た俺は、シャルロッテが腕に抱え込んでいる物を見て慌てた。シャルロッテは男物の服に身を包み、長い水色の髪を後ろの方でハンカチで一つにしばっていた。彼女の着ていたドレスはぼろぼろになっていた為、俺の着替えの服を貸すことにしたのだ。

 その彼女の華奢な腕の中に不釣合いに収まっているのは網目の粗い大きな編み籠で、その中には汚れたシーツや、汚れた服などが入っていた。

 今までチョコと一匹と一人の暮らしだったので、洗濯物が溜まろうとあまり気にしなかった。洗濯籠から溢れる状態になったら、まとめて洗えばいいや。と、ぐらいにしか考えてなかったので、籠の中に脱ぎ捨てた物があるからすぐに洗濯するという発想がなかったのだ。


 俺達の住んでいるログハウスには魔法洗濯機があり、その中に汚れ物を放り込めば一時間もしないうちに洗濯から乾燥まで出来てしまうから、特に急ぐ気もなく部屋の隅に放置してしまっていたのが悪かったらしい。

気が利くシャルロッテに見つかってしまったのが不運だった。

 シャルロッテは、俺の制止を気にせず魔法洗濯機の前に来て、籠から洗濯物を取り出そうとして小さな悲鳴をあげた。彼女が手にしたのは俺の下着だ。主に股間に履くやつ。


「きゃっ」

「シャル。ここはいいから、チョコにご飯をあげてくれないか?」

「ご、ごめんなさい……」


 シャルロッテは俺の下着を取り落とし、顔を真っ赤にしてその場から逃げ出した。チョコがその後を追っていく。


(恥ずかしいのは、こっちの方なんだが)


 彼女が取り落とした下着を拾い、俺は洗濯機の中に自分の汚れ物を次々投げ入れた。シャルロッテがここに来て十日が過ぎた。彼女とは愛称で呼び合うくらいに仲良くなってはいたが、やはり自分の汚れ物を託すまでの気は許せそうにない。


 侯爵令嬢であるシャルロッテはまだ十六歳だし、何も出来ないお嬢さまかと思えば、気遣いの出来る子だった。俺一人に食事、掃除、洗濯をやってもらうのは申し訳ないと、手伝いを申し出てくれたので食事の後片付けを頼めば、慣れない手つきでも丁寧にしてくれた。

 その彼女の気持ちが嬉しかったので「ありがとう。助かるよ」と、言ったら、掃除も率先してやってくれるようになっていた。


 今朝は食事の前にチョコと釣りに出ていたので、シャルロッテとしてはオレ達が留守の間に洗濯ぐらいは自分が。と、思ってくれたに違いなかった。

 しかし、あれはまずかったかな。今までは男一人暮らしに猫一匹がくっ付いた生活だったけど、お年頃の女の子がいるんだもんな。これからはシャルの目に触れる前に、洗濯機に汚れ物を放り込んでおこうと決めた。



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