第14話・ふたりは従兄妹
それからさらに数週間が過ぎた頃。ログハウスのドアがドドドッと叩かれた。ここは無人島。誰かが訪れることなどない。食堂にいたシャルと目を見合わせ、「きみはここにいて」と、告げて玄関に向かえば思いがけない顔が三つ揃っていた。魔王討伐の仲間達が訪ねて来たのだ。
「ヤッホー。ナツ~」
「ナツヒコ。元気にしていたか?」
「そろそろ頭が冷えましたか?」
神官ファラルとガイム。そしてオウロがいた。
「わ、わ、わ。お前らここまでどうやって?」
「転移してきたよ。なに驚いてるの? ナツと同じだよ」
ファラルがいまさら何を言っているのかと口を尖らせる。ここにはナツだってオウロに転移されてきたくせにと。それはそうだけど突然、こうやって訪問して来るなんて思っても見なかったから驚いた。ニャア~ンと足元で声があがる。チョコが俺の後をついて来ていた。
「わあ。可愛い。この子、飼っているの? なんて名前?」
「まあな、同居猫のチョコだ」
いきなりファラルに抱き上げられそうになってチョコは嫌だと身を捩る。ファラルの腕の中から飛び出すと、俺の後ろに隠れた。
「チョコ?」
「ナウウ……」
「あれれ? 人見知りなのかな? チョコちゃん?」
ファラルは動物好きで旅先でも野良猫や野良犬を構い倒していた。でもこのように拒絶されることはなかったからちょっとショックだったようで、唖然としていた。
「どうやらお子ちゃまのおまえの事は、お気に召さなかったようだな。このお猫さまは。気位が高いのかもな」
「ガイム。ひどいよ」
「お猫さまはお子ちゃまは相手にしてないんだよ。オレみたいな色男じゃないとな」
ガイムが得意顔で言っていると、そこへ背後から「チョコちゃん」と、声があがった。シャルがチョコの後を追いかけてきたようだ。そのシャルは玄関先にいるガイムの顔を見て驚きの声をあげた。
「お兄さま?」
「シャル。どうしてここに?」
顔を見合わせたふたりを見て似ていると思った。道理でシャルロッテに会った時、初めて会った気がしなかった訳だと、その理由が分かった気がした。ふたりはよく似ていた。顔立ちや髪色。そして瞳の色などが。
「ふたりは兄妹なのか?」
「いいや。母方の従兄妹なんだ」
俺の問いにガイムが答える。ファラルが首を傾げた。
「ねぇ、そちらの令嬢の紹介はしてもらえないの?」
「彼女はシャルロッテ。浜に打ち上げられていたのを俺とチョコが保護した。サーザン国の宰相の孫娘で、ガイムの従妹だそうだ。まあ、とにかく中へ入れよ」
オウロやファラルが不思議そうに見ているのでふたりにシャルの紹介をして、玄関で立ち話もなんだからと俺は家の中へ皆を促がした。
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