第3話 次の依頼へ
ぐぅうう…‥‥。ギュルルルル…‥‥。
朝は強烈な腹痛と共に目を覚ました。
「うぉおおおおおお……。は、腹が……」
俺は急いでトイレへと駆け込んだ。
「うう……うぉおお……これは……昨日の牛乳か……!?」
確かに昨日の牛乳は、キンキンに冷えていた。
しかしそれにしてもこの腹痛、強烈だ。
トイレで格闘する事、一時間。
俺はようやくトイレから出てきた。
「はぁ……朝から酷い目に遭ったぜ……」
宿屋を出て、まずは朝食を食べに行く事にする。
とりあえず町中を歩いていると、男とぶつかってしまった。
「ああ、ごめん」
「ああん?おい、兄ちゃん」
「な、なんですか?」
「ミルクパンと牛乳買ってこい」
「えっ?俺パシリ!?」
「ったりめぇだろうが。人にぶつかっておいて何もなしってのは、あり得ねぇだろ」
「ちゃんと謝ったでしょ」
「それじゃ、俺の気持ちが収まりつかねぇんだよ」
「めっちゃ怒りの沸点低いじゃないですか!!」
「いいから買ってこい」
俺は、なぜか男にパシリに行かされる事になった。
しかし、ミルクパンと牛乳ってなんだよ。
まさか昨日から今日もミルクネタを引きずってるとはな。
俺はパン屋に行った。
「ミルクパンと、それとこのベーコンエッグパンをくれ。それから飲み物にミルクとハーブティーを」
「はいよ。全部で500Gだよ」
俺は金を払い、男の元へ戻った。
「はい。どうぞ。ミルクパンと牛乳です」
「おい」
「えっ?」
「お前が持ってるそれ、ベーコンエッグパンとハーブティーだな」
「そうだけど。俺の朝ごはん」
「……気分が変わった。そっちをよこせ」
「ええー!?」
こうして俺の朝食は、ミルクパンと牛乳になった。
またしてもミルクだった。
このままでは俺は……
【称号:ミルクボーイ芸人を獲得しました】
「ほらやっぱり!!嫌な予感したんだよ。なんか称号が手に入るような気がしたんだよ」
俺は宿代と飯代を稼ぐ為、今日もギルドへ向かった。
ギルドの建物の中に入った。
「パンパカパーン!!おめでとうございます!あなたは当ギルドの入場者数、百万人目のお客様です」
「ま、またか!?」
「百万人目のお客様には、当ギルドの特別上映会にご案内します」
デジャブ。
しかしここは、もう一度リアクションしてあげるべきだろうか。
「上映会?何?映画か何かあるの?」
「すみません、すみません。でも本当は九十九万二千三百九人目のお客様なんです。本当はお客様は全然特別じゃないんですが、早く上映したくて数字をごまかしたんです」
「言っちゃいけない事を早々にカミングアウトしてんじゃねぇよ」
「重ね重ねすみません。当館自慢のプラネタリ――」
「ああー!!待って待って!!なんか聞いた事あるネタだから、これ以上言うのはやめておいて……って、同じ事やらせるな!!なんでやねん!!」
【スキル:ノリツッコミを獲得しました】
どうしよう。段々と芸人らしくなってきている。
「あれ?ケンイチサカナさんじゃないですか」
「ケンイチサカノだよ。人を魚類みたいに言うな」
「ところでお魚さん」
「いや、もっと悪くなってるじゃん」
「昨日のスライムの掃除クエスト、お疲れさまでした。あのクエストをクリアするなんてお見事です」
「よせやい。褒めたって何もでねぇぞ」
「なんだ。何も出ないのか。残念。もう褒めない」
「くそ。下心隠さず丸出しか」
「そんなお魚さんにぴったりのクエストがあるんですけどね」
「いや、だから坂野だよ。それかもうケンイチって呼んでくれよ」
「では、ケンイチさん。今回、受けてもらいたい依頼は、ドワーフさんの鍛冶手伝いです」
「ほう。鍛冶手伝い。それはどんな内容なんだ?」
「そのままです。最近忙しくて人手が足りないドワーフさんの武器防具の鍛冶のお手伝いです。報酬は10000Gです」
「おお、昨日と同じ額の報酬が貰えるわけか。なら今日の宿代にもなるし、飯代にもなる。じゃあそれ受けるよ」
「よっしゃ。ラッキー。はい。よろしくお願いしますね」
「ん?今、よっしゃ。ラッキーって言わなかった?」
「そんな事一言も言ってないですよ。耳腐ってるんじゃないですか?」
「そこまで言う?」
「それじゃ、さっさと行ってきてくださいよ。後は、よろしくね。汚れ芸人さん」
なんか……
二日目ですでに受付の女の子からの扱いが、雑になってる気がするんだけど……。
俺はそんな事を考えながら、ドワーフの家へと向かうのだった。
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