第12話 逃亡者と追跡者

「あっ、なんか弱くなった……もぉダメって感じかなぁ」


 高架橋下の空間を利用して設営された駐車場。

 付近の生活道路からも離れていて、人目に付きにくい場所である事は間違いない。

 そんな都会の盲点とも言うべき場所で、一人うずくまりながらネコと会話している僕。

 これじゃあ、完全に不審者確定だな。


『頃合いだろう。あまり長くココに留まるのも得策では無いからな』


 確かにその通りだ。

 高架橋の上で一体何が起きているのか?

 残念ながら今の僕たちにはその状況を把握するすべがない。

 一刻も早くこの場を立ち去りたい……と言うのが本音だ。


「よしっ」


 クロに促されるまま、早速僕は心の中でこう念じたんだ。


 Shutdown the CORE Beast of KURO.

 Shutdown the CORE KISARAGI.


『どうだ? 切れた感じが分かるか?』


「あぁうん。分かる。なんとなく軽くなった様な気がする」


『よし、それで良い』


 僕の返答に満足したんだろう。

 クロはリュックの中へと顔を引っ込めてしまったのさ。


『それでは行くとしようか』


「行くって言ったって、何処へ行くの? 家に帰る? ここからだと結構距離もあるから電車かタクシーだよなぁ」


『……。タケシ、今の自分の格好を見てみろ』


 クロにそう促され、改めて自分の服装を見てみるのだが。


「あぁ……確かにこれは……酷いなぁ」


 アウターのパーカーやチノパンは血だらけ。

 しかも、パンツの右足側は大腿部分から先が無くなっている。

 当然、シューズだって履いているのは左足だけで、右足は裸足のままだ。


 これじゃあ、電車には乗れないな。

 タクシーだってかなり怪しまれるぞ。

 とは言え、歩いて帰るとしても、かなり人目を引く事になるだろうし。


 ちくしょう。それもこれも、あの金髪ドS野郎のせいだ。

 次に会った時には、ただじゃおかないからな。


『タケシ。暫く何処かに潜伏してから、人通りが少なくなった頃に歩いて帰るとしよう』


「そうだね。それしか無さそうだな」


 教団と呼ばれる組織にどの程度の信者人数がいるのかは分からない。

 だけど、この辺り一帯を虱潰しらみつぶしに聞き込みでもされたら……。

 やっぱり、人目に付かない様な行動を取るに越した事は無い。


 僕はコンビニや大きめのビルなど、防犯カメラが設置されている様な場所に気をつけながら、ゆっくりと移動を開始したんだ。


 そう、僕は生きている。

 当然、クロも無傷だ。

 だけど……どうして?


「クロ? どうして僕は無傷なんだ? 何しろ右足一本持ってかれたんだぞ? それに、クロだって本来の姿で戦った訳だろ? それに金髪ドS野郎にヤラれたのだって僕は見てる。少なくとも深手は負ったはずさ。なのに、どうしてクロと僕はピンピンしてるの?」


『私自身もその理由を説明する事は難しい。しかし、これがゼノン神の祝福と呼ばれる力なんだ』


「ゼノン神ねぇ。それってさぁ、どんな傷でも治るって力って事なの?」


『うぅぅむ。治る、と言うよりは、“切り替えられる”と考えた方が良いな。ゼノン神、それは冥府の王であり、魔と獣の神。その力の根源は適応と変化にあると言われている。そして、ゼノン神の祝福を受けた者は、隷従を承諾した者のCOREを受け取る事ができるのだ』


「あぁ、出て来てたね。呪文みたいなのの中にCOREって単語」


『それだ。COREとは、お前達の言葉で言い換えれば、人格と言う事になるかな。私やお前、ゼノン神の祝福を受けたる者は、このCOREを切り替える事ができる』


「あぁ、それでクロが如月さんになったり、クロの形になったりできる訳だ」


『そう言う事だ。しかし、切り替えるには対象となるCOREの質量と同等の魔力が必要になるんだ』


「はいはい、魔力ね、魔力。僕も最初は魔力が足りなくて元に戻れなくなったんだよね。って言うか、今は元に戻ってるけど、これ大丈夫なの?」


『あぁ、大丈夫だろう。どうやらタケシの持つ魔力量が、私の想像を遥かに超えていると言う事のようだな。普通、日に何度も切り替わるのは難しいはずなのだが……』


「まぁ、変身できる事は分かったよ。でも、傷が治るのとコレとは別の話でしょ?」


『いや、根本的に原理は同じだ。お前は今犾守いずもり武史たけしの肉体となっているが……そうだな。一度やってみた方が良いかな。でも戻れなくなったらそれはそれで困るしなぁ……』


「えぇ? やってみた方が早いなら、やってみれば良いじゃん。やってみよ。ねぇ、やってみようよ」


『そうか? それでは他人に見られない場所へと移動してくれ』


 そこで早速。

 僕は建設現場の立ち入り禁止区画へと忍び込む事にしたんだ。

 今日は土曜日。もう今日の工事も終わってる。

 幸いな事に、まだ夜間警備員も配置されていないみたいだな。


「クロ、ココなら大丈夫じゃないかな。それに、ココでなら暫く隠れてても見つからないと思うし」


『そうか。それでは始めるとしよう。タケシ、まず横になれ』


「えぇ、横になるの? やだなぁこの場所、泥で汚れてるんだけど……」


『そんな事気にするな。それにでは立っているのも難しいだろうし』


 んん? 何言ってるのクロ。


 まぁ、そんな事は気にも留めず、僕は出来るだけ汚れていない場所を探して横になったのさ。


『それでは、如月に変身してみろ。お前のやり方でも構わないが、もし詠唱するなら、Switch the CORE KISARAGI.だ』


「えぇっと、それじゃあ」


 僕は如月さんの事を思い浮かべてから、軽く指を鳴らしたんだ。


 ――パチン!


 その瞬間。

 白い水蒸気が目の前を覆って……。


 って、そんな事、良いっ!


「うおっ! 痛いっ! 痛いっ! 痛たたたたっ! 死ぬっ、死ぬっ!」


 ――ウッ……グボッ!


 突然何かが込み上げて来る。


 ――ガハッ!


 思わず顔を背け地面に吐き出すと、目の前に散らばるのは大量の鮮血。


「ガハァ、ガハァ……ガハァァ」


 腕と良い腹と良い、全身が爆発しそうなぐらいに痛い!

 特に、特に右足の……。


「アガッ……みっ、右足が……」


 焼ける様な痛みを覚える右足。

 なんと大腿部から先が消失し、付け根の部分からは白骨が覗いている状態だ。


「クロっ! ヤバい、また足、無くなってるっ! クロッ、クロオッ! 助けっ、助けてッ!」


『慌てるな、タケシ。もう一度元に戻るんだ」


 棍棒で殴られる様な痛みに必死で耐えつつ、僕は自分自身の事を思いながら指を鳴らした……はずだった。


 ――パスッ


 がぁぁあ、指がっ、指が血で滑って鳴らねぇぇ!


「クロッ! ヤバい、ヤバい、ヤバい! 死む、死む、死むっ!」


 既に呂律ろれつまで回って無い!

 そんな僕の事を見かねたのか。


『切り替わらないのであれば、私の言葉を復唱しろ。Switch the CORE.だ』


「すっ、Switch the CORE!」


 ――ブシュゥゥ


 そう唱えた瞬間。

 またもや白煙により視界が遮られ……。


 って……あれ?


『気分はどうだ? タケシ』


「え? 気分って言うか、……あれ? ……えぇ? 痛く……ない? えぇ?」


 僕は急いで飛び起きると、早速自分の右足を確認。


「あ……ある。僕の右足……ちゃんと……ある」


『それはそうさ、タケシの右足はちゃんとある。当然だ。お前が失ったのは、如月の右足だ。タケシの右足が残っているのは当たり前の事だ』


 えぇぇ? それって『当たり前』の事なの?

 どこからどこまでが『当たり前』なんだよぉ。

 って言うか、クロの『当たり前』の境界線がめちゃめちゃグレー過ぎて全然わかんないっ!


『これで分かっただろう、タケシ。肉体はCOREに、COREは肉体に影響を受ける。つまり、肉体が破損した場合、CORE自体も破損したままの状態となるんだ。しかも、特定のCOREが別のCOREに影響を及ぼす事は無い。だから如月のCOREが破損しても、タケシのCOREは健全と言う事なんだ』


 ははぁ、なるほどぉ。なんとなく理解した。


「って事は、僕はもう二度と如月さんのCOREは使えない……って事なの?」


 ここは非常に重要な問題だ。

 と言うか、これ以上重要な問題が他にあろうか?

 もしあるとするならば、地球温暖化とか、戦争の無い世界にするとか? もう、そのレベルと同等の問題と言わざるを得ない。


 何しろまだ、事もやって無いし、事すらやってない。

 今この場で思いつくだけでも百を超えるエッチな課題が残っているんだぞ。

 それを諦めるなんて、な青少年に出来る訳が無いじゃないかっ!


『そんな事は無い。先ほどの通り、お前が如月に“切り替わり”Switchしてから、普通の手当を受けて回復すれば良い』


 えぇぇ? マジ。それ、マジなの?

 だって、如月さんったら、現時点で既に重体だよ。

 あそこから復活出来る? 回復すると思うの?

 って言うか、めっちゃ痛かったもの。無理ムリ。絶対に無理。


「ねぇ、クロ。それは……無理だわ。あの体では、ちょっと気分になれないわ。……色々と」


『まぁ、気分……の所が良く分からんが、それが現実的で無い事は私にも分る。となれば、現在の如月のCOREを捨てて、新たなCOREを手に入れる方が早いだろうな。まぁ使った時間も短いし、蓄積した情報も大して多く無いだろうし』


 うぉぉ! 他にも方法があるんだ。

 なんだか色々とツッコみ処があるけど、ひとまずそこには目をつむって。

 まずはその別の方法ってヤツを聞き出す事にしよう。

 うん、そうしよう。


「あのぉ、クロさん。それは一体どの様な方法になるんでしょうか?」


 ここが正念場である。

 僕は出来る限り丁寧に、クロ様へ教えを乞う事に。


「なに簡単な事だ。お前の持っている如月のCOREは消去して、新たに私が持っている如月のCOREをお前にくれてやれば済む話だ」


 ほほぉ。なるほど、なるほど。

 確かに如月さんのCOREは、最初にクロからもらった物だからな。

 もう一回もらえば済むって話か。

 確かに理にかなってる。


「ねぇクロぉ、もう一回如月さんのCOREってもらえるかなぁ」


『あぁ、構わん。それに、複数のCOREを持っておけば、それだけ戦略の幅が広がると言うものだ。ただ、気を付けなければならんのは、他人のCOREの状態であっても、死んでしまえばもう元に戻る事は出来ん。必ず死ぬ前に別のCOREに切り替えるSwitchする必要があると言う事だ。それを決して忘れるな』


 なるほどな。自分が死んでしまっては、呪文を唱える訳にも行かないって話か。

 うんうん。それは分かる。


「あぁ、わかった。ヤバくなる前に切り替えるSwitchする様にするよ」


 今ので自分の足が治ったのはおおよそ理解したゾ。

 まぁ、色々腑に落ちない所もあるけれど、大枠クロ自体もこの程度の理解なんだろうからな。元々が魔法って範疇はんちゅうなんだから、これ以上詮索しても細かい原理なんて、誰にも分からないって事なんだろう。


 それは良いとして。


「さっき高架下に居た時ってさ。クロも僕もあの場に居たよね。でも、高架の上には僕のグレーハウンドが居たし、如月さんも居たって事だよね。あれ? それっておかしくない? 僕って分身出来るの?」


『タケシ。良い所に気付いたな。そうだ。ゼノン神の祝福による最大の奥義は、COREを独立して動かす事ができると言う点にあるんだ。この事は門外不出。ゼノン神の祝福を受けた者達のみが共有する極秘事項となっている』

 

「独立して動かす?」


『そうだ。起動の際にBootと言う単語を使ったろう? あれを使えば、自身が変わるのではなく、ゼロから肉体を作り出す事ができる』


「マジですか? クロさん、それはマジな話ですか?」


『何を今さら。先ほどお前自身が経験しているはずではないか』


 って事は僕、あの某有名マンガの主人公みたいに、分身が作れるって事ですかっ!

 うぅぅわぁぁ! 夢が広がる、めっちゃ夢が広がるぅぅ! ……ってばよっ!


『まぁ、そうは言ってもだ。作り出せる肉体は、保有する魔力量によって左右される。たとえば司教クラスの魔力量を持っていたとしても、一日に作り出せる肉体はせいぜい一から二体程度。質量として百キロ前後が限界だろう。ただまぁ、私ぐらいになれば一日に……ってタケシ、聞いてるか?』


 僕はクロの言葉を聞き流しながら、早速詠唱、詠唱。


 Boot the CORE Beast of KURO.


『だから、そう日に何体も出せるはずが……』


 ――バシュゥゥ!


 突然発生する大量の蒸気。

 辺り一面が大量の白煙に覆われて行く。

 やがて。


「おぉぉぉ!」


『……ウソ……だろ?』


 僕とクロの目の前。

 そこに屹立するのは、真っ黒の体毛を誇示する巨大な獣。


「コイツぁ格好良いなぁ。ねぇねぇ、クロぉ。これって言う事聞くの? って言うか、どうやって動かすのぉこれぇ?」


『なんで……なんでもう一体出せるんだ? しかも、これ、ブラックハウンドじゃないか。体重だって……軽く千キロは超えているはず……』


「へぇぇ。ブラックハウンドって言うんだ。しっかしデカいなぁ。ただでさえペット禁止のアパートだと、飼うのも難しいよなぁ。それにメシ食いそうだなぁ。こりゃ食費だけで破産しちゃうかも」


 とそこで、クロが何かに気付いたみたいだ。

 なにしろ、全身の毛が逆立ってるもの。

 あはは、ちょっと可愛い。


『タケシ! 早く止めろ。こんなデカブツ出したら、司教連中に嗅ぎつけられる可能性が高い。とにかく、とにかく早く止めるんだ!』


 うぉ! そうだった。僕たち潜伏してる最中だった!


 えぇっと、なんだっけ? 呪文なんだっけ?


『Shutdown the CORE だ、シャットダウン、シャットダウン!』


 はうはうはう!

 Shutdown the CORE Beast of KURO.


 ――バシュゥゥ!


 再び発生する大量の蒸気。

 やがて、蒸気が拡散した後には何も無い空間がただ広がっているだけ。


「ふぅぅ、ヤバかったなぁ」


『ヤバかったなぁ……じゃないだろう! 一体どう言うつもりだ、もっと逃亡者としての自覚を持ってだなぁ!』


 いやいや、クロさん。

 元はと言えば、あなたの所為で僕は逃亡者になってるんですよ。

 まぁ、確かに僕が魔力制御できず、魔力をダダ洩れさせちゃった事も要因の一つではあるんですけどね。

 でもねぇ。それは後の話でしょ?


「……って、そうだっ! そんな事より僕の魔力って今漏れて無いの?」


 そうそう、問題はそこだよ。

 いくら逃げ隠れしたとしても、僕の魔力がダダ洩れだったら、いつかは見つかってしまうって事でしょ?


『あっ、あぁ……今の所お前からの魔力漏れは発生していない様だな。魔獣を起動する事で大量の魔力を消費した所為せいなのか、それとも犾守いずもり武史たけしの肉体で居る間は、問題無く魔力量を制御できると言う事なのか……まぁ、恐らく両方の理由だろう。如月自身には大量の魔力を制御する素質が無いと考えるのが自然だな』


 なるほどね。それは何となく理解できる。


 ……でも待てよ?


「ねぇ、クロぉ、ちょっと聞くけどさぁ。さっき僕が如月さんに切り替わったじゃない?」


『あぁ、そうだな』


「って事は、そのまま僕の魔力量が尽きてて、元に戻れなかった場合って、どうなってた?」


『まぁな。お前の魔力量の復活具合からすると、数時間ぐらいは痛みと戦う事になっていただろうな』


 ……ほほぉ。


「もう一つ質問。切り替えるSwitchするじゃなくて、最初から起動bootを使えば、僕は痛い思いをしなかったって事?」


『まぁ、そう言う事になるな。ただまぁ、そうなると起動bootされた如月が痛がる姿を見る事になるからな、流石にそれは可哀そうだろう?』


 ……ほほぉ。

 まぁね。如月さんが痛がるのは見たくないものね。

 そうだね。うん、そうだと思う。

 僕だって、美少女が苦痛に顔を歪める姿なんて見たくないものね。


 ……でもね。

 僕的には、自分が苦しむ姿を一番見たく無いんだよぉ!

 絶対に自分が一番っ!

 そんでもって、余った力で他人の幸せを考えたい派なんだよぉ、僕はぁぁ!


 しっかし、やべぇな。

 クロご主人様ったら、割と重めの“S”入ってるからな。

 マジ注意しないと、『命』にかかわる事案をアッサリとぶん投げて来るぞ。


「ねぇ、クロ聞いて? これは僕の命にかかわる問題だからね」


『……』


「何だんまりこいてんの? ちょっとは反省してるの? だって、僕戻れなかったかもしれないんだよ? Bootにしとけば如月さんがちょっと痛い顔するだけで、すぐに落とすShutdown事だって出来てた訳でしょ?」


『……』


「ねぇ、クロったらぁ!」


『しっ! 静かにしろ。洗礼を受けた人間が近づいて来る』


「え! マジか」


 洗礼を受けた人間って、今の所教団関係者しかいないよな。

 って事は僕たちを追って来たって事?


『先ほどのブラックハウンドの余波を感知したのかもしれない。この場所は危ない。少しずつ移動しよう』


「おっ、おおう。わかった」


 僕はクロを入れたリュックを抱きかかえながら、工事関係者用の出入口へと向かったんだ。


『タケシ。この位置からなら相手が見えるかもしれない』


 クロはリュックから顔だけ出して周囲を警戒中。

 僕の方は、出入口近くに積まれた鉄骨資材の影へと身を隠したのさ。


『来る……もうすぐ出入口の所に現れるぞ』


 背筋を冷たい汗が流れ落ちる。

 緊張のせいなのか、握りしめた拳がワナワナと震えだしているのが自分でも分かる。

 武者震いだと言う人も居るだろう。

 けど……絶対に違うな。


 正直、怖い。とてつもなく恐ろしい。

 とにかく今すぐにでも大声で叫びながら、この場を走って逃げ出したい気分だ。

 

 しかも、コイツが例の金髪ドS野郎だとしたら?

 もう一度ココで戦うのか?

 それに金髪ドS野郎が来たとなると、さっきのブラックハウンドを倒してから来たって事だよな。

 って事は、僕たちでは絶対に勝てない……って事になるんじゃね?


 ――ガタッ、カタガタガタ


 震えが止まらない。

 クロも緊張しているのか? さっきから思念が全く届かない。


「……」


 互いに無言のまま、出入口を凝視する一人と一匹。

 そんな二人の前に現れたのは……。


「あっ!」


『なんだタケシ、お前アイツを知っているのかっ!』


「あっ、あれは……香丸こうまる先輩……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る