第6話 祝福の発現
「でさぁ、クロぉ。この奴隷誓約って、どうやったら解消できるの?」
もう完全にタメ語である。
ちょっとご主人様シチュに飽きてきたわ。
「そうだなぁ。いくつか方法はあるが、一番ポピュラーなのは、主人に対して忠義を尽くし、晩年に解放してもらうと言うパターンだな」
おいおいおい、一体何年掛かるんだよ。
気が遠くなりすぎて、全く実感が湧かないよ。
いやいやいや、一体いつまでこのシチュエーションコント続ける気なの?
「えぇっとぉ……他にも方法はあるんでしょ?」
「そうだなぁ。他にとなると、ある程度の
ほら来たよ。やっぱりそうか。
要するに金を積めって事だな。
しっかし
それに、高校生が金持ってる訳無いだろ?
なんで高校生をターゲットにするんだよぉ。
……って言うか、僕が金持ってる必要は無いのか。
そうか、そりゃそうだよな。
最終的に親を
はぁぁぁ。今回の件もあるしさぁ。これ以上親に迷惑かけるのは勘弁して欲しいんだよねぇ。
しかし、ダメな息子だよなぁ。
レイプ事件の主犯に間違えられるは、翌日には
父さんの息子は、どんだけ不運なエロエロマシーンなんだよ。
「うぅぅんと。それは、いかほど積めば許して頂けるものなんですかねぇ?」
もう、割り切ろう。
そうだ。ここからはビジネスの話だ。
もう二度と如月さんとは関わらないっ!
ラッキースケベもさっきので見納めだ。って言うか、金を払うんだったら、もう一回ぐらい見せてもらっても良いかもな。
まぁそこは、金額聞いてから考えよう。
「そうだなぁ。成人男性の奴隷相場だとぉ、およそ二万クランぐらいかな。まぁ、お前は力は無さそうだが、まだ若いし、雑用の
ははぁぁ……二万クランねぇ。二万、二万……。
って、全然分んねぇよ!
クランって何の単位だよ!
めんどくせぇなぁ、もぉ。こんな所で
円で良いんだよ、円でっ!
……はっ!
突然気付いたぞ。
そう言う事か。
これが経済ヤクザのやり方ってヤツなんだな。
脅迫で金銭を要求したともなれば、恐喝罪が成立してしまう。
恐喝罪は十年以下の懲役だ。
しかし、クランと言う良くわからない単位であれば、金銭を要求したとは言い難い……かもしれない……しらんけど。
まさに、ヤクザの良く使う『誠意を見せろ!』がこれに当たるのではなかろうか。
やっぱり、彼女の裏では経済ヤクザが暗躍しているに違いないっ! って言う気がしないでもない。
「ごめんなさい。クランの単位がわかんないわ。まだペソとかリラの方がわかるもの。そんじゃ試しに聞くけどさぁ、『ざるそば』って一杯何クランなの?」
「『ざるそば』かぁ。うぅぅん。『ざるそば』に相当するものは……無いな」
無いんかいっ!
それじゃあ、『うどん』、『うどん』は? って、『ざるそば』が無いのに『うどん』がある訳無いか。
どうするかなぁ。全くイメージ湧かねえぞ。
いったどこの国なんだ?
「そうだなぁ。二万クランあれば、成人男性一人が何とか一年暮らして行けるだけの金額……と言う感じだと思えば良いだろう」
となると、大体、二百万から三百万円ってところかな?
多少の前後はあるだろうけど、単純計算でクランは円の百倍って感じか。
二百万かぁ……。
エッチ二回で二百万。
って事は、エッチ一回百万か。それはいくら何でもボッタクリ過ぎだろう。
しかしなぁ。警察は民事不介入だし。
でもこれって、売春って事だろ。つまりそう言う事だろ。
だったらこのまま警察にタレコメば……。
んん? そう言えば、金を払えって言われてる訳じゃあ無いしな。
それに僕、奴隷になっただけだし。
なんだよそれ。
警察……信じてくれないだろうなぁ。
まぁ、頑張ってバイトすれば返せない額じゃなし。
仕方ない。大人になる為の勉強代だと思って、マジメにお金貯めるるとするかぁ。
しっかし二百万は高いよなぁ。二百万払うんだったら、あと百回ぐらいはヤラせてもらわないと割が合わんなぁ。……うぅぅむ。如月さんなら五十回ぐらい……でも良いか。
そこは値切りも含めて後で交渉するとしよう。
「はぁぁぁ。そうですか。分かりました。諦めます……」
「うむ。奴隷になった事を悔いる必要は無い。
何が
どんだけ
って言うか、
「まぁ、それに奴隷になるのも、あながち悪い事ばかりでは無いぞ」
「へぇぇ、そりゃ良かったですね。で? どんな良い事があるんです?」
代金が二百万と聞いてから、僕は完全に素の状態。
いきなり二百万の借金背負って、テンション上がる訳ないでしょ?
「うむ。もしお前に才能があれば、私の能力を貸与する事ができるかもしれん。繰り返すが、お前に天賦の才があれば……の話だがな」
「才能ぉ……? 能力ぅ……?」
「そうだ。私の持つ能力は、既に分かっているとは思うが……」
分かって無いよ。全然わかんないって。
『おつむが残念な美人』って、能力じゃないよね。
「この世界での第一奴隷であるお前には、正式に聞かせておく事にしよう。絶対に他言無用だぞ。……私の持つ祝福は……」
もったいぶらないで、早く言えよぉ。
もぉ、面倒くさいなぁ。CM入れる? CMまたぎするぅ?
「『ゼノン神の祝福』だっ!」
「ほぉぉ、ゼノン神の……」
「そうだ、ゼノン神様だ」
って、誰だよっ! ゼノン神ってっ!
全然知らねーよっ! 新大久保かどっかのアングラ劇団の役者名かよっ!
全くわかんねーよ。
マニアック過ぎて、全然伝わって来ねーよっ!
「ほほぉぉ……」
もぅ、『ほほぉ……』としか言う事ねーよ。
他に何を期待してるんだよぉ。
なんだよ。なんだよぉ、めっちゃ鼻高々じゃねぇかよぉ。なんだったら、ちょっと斜め上向いちゃってるじゃねぇかよぉ。
僕にどんなリアクションを求めてんだよぉ
もう勘弁してくれよぉ。
色々な意味で驚きすぎて、逆にもうこれ以上驚くリアクションなんて出来ねぇよぉ!
「お前には私の片腕になってもらう為にも、『ゼノン神の祝福』を分け与えてやる事にしよう。ただし、今後お前が私の期待を裏切るような事があれば、能力は引き上げさせてもらうからな。まぁ、そうならない様、せいぜい精進する事だな。それから、能力が発現しなくとも気に病む事は無いぞ、いままで十数名の奴隷に貸与を試みて来たが、一人として
駄目じゃん。
やっぱ、成功者ゼロなんじゃん。
ちょっとだけ……。ほんのちょっとだけだけど、何か
って言うか、いままで十数人に同じ様な事やって来たって事だよね。
その人達って、今何してるんだろう。
やっぱ、二百万払ってさぁ。如月さん達にはお帰り頂いたのかなぁ。
でもそう言う事なんだよね。
これまでも、みんな騙されて金をむしり取られて来たんだよね。だからこそ、この人は牢屋にも入らず、こうやって僕を
途中で警察に駆け込んだ人がいれば、確実に彼女は塀の中に直行してるはずだからね。
彼女はそう告げると、そっと僕の額へ手を
一瞬、ほんの一瞬だけだけど、僕の体が薄っすらと輝いた様な気がする。
って……これでお終い?
せめて二百万なんだから、もうちょっと儀式っぽいヤツが欲しかったなぁ。
しかも、ちょっとエロエロな雰囲気の儀式っちゅーかさぁ。
場所は、薄暗い地下室……。
照明はもちろん部屋の四隅に配置された
部屋中に立ち込める紫煙は、媚薬の様に甘く切なく。
そんな中。
部屋の中央に
となると、クロこと如月さんの衣装は……ボンデージぃ?
やっぱそうなるよね。だって儀式ってそうだもの。そう言うものなんだもの。
黒のぱっつんぱっつんのボンデージに身を固めた如月さん。
しかも手には、ヒダヒダがいっぱい付いた鞭が。
そう言えば、あの鞭って痛いのかなぁ。
感覚的にはハリセンっぽいから、音だけ大きくて、実は痛く無い様になってるんだろうな。
うんうん。そうに違いない。
――ヒュン……ビシッツ!
はうはうはう!
鞭が空を切る度に、僕は痛みと快楽に悶えつつも、歓喜の叫び声を上げる訳だ。
うひょひょひょひょぉ
……って感じじゃないと駄目だよなぁ。全然ダメ。
やっぱこれじゃあ、二百万盗られ損って感じじゃん!
「これで準備完了。あとは『コア』だな。本来は自分で取って来た方が良い練習になるんだが、能力が発現しているかどうかも分からんのでな。最初の一人は私から授けてやるとしよう」
そう言うなり、彼女は僕の手を取ってベッドの方へと誘って行く。
え? ベッド行くの?
やっぱり、そっち系?
儀式って、こっからだったの?
なんだぁ、そうならそうと早く言ってよぉ!
「あっ、あのぉ。これって、どう言う?」
自分で言っておきながら、『どう言う』ってなんだよ。
って言うか、『そう言う』事だよな。
来た来た来た! これこれ、これだよ。これっ!
「あぁ、ちょっと時間は掛かるが、我慢しろ」
「我慢だなんて、とんでもない! って言うか……あぁ、我慢、がまんね。はい。ご主人様、頑張って我慢しますっ! 一秒でも長く
「おぉ、そうか。素直だな。素直な
「はいっ!」
僕は元気よく返事をすると、早速自分の服を脱ぎ始めたんだ。
「あぁ、そこまで脱がなくても大丈夫だ。手を握っているだけで十分。まぁ、一時間ぐらいは掛かると思うが。気長に待て」
彼女はそう言うなり、一人ベッドで横になってしまったんだ。
もちろん、僕の手は握ったまま。
「えぇっとぉ。僕はどうすれば……」
「そのままで良いぞ。そう言えば、最近は毎晩出かけていたからな。今日の所はこのまま休ませてもらうとしよう。それから、すくなくとも一時間は手を離してダメだぞ。一回離すと、また最初からやり直さねばならんからな。と言うより、ちゃんと言いつけが守れない様なら、お前に罰を与えるから覚悟しておけよ」
うぅぅん……。
早速ご主人様からのありがたい『言葉責め』を頂いたって事だとは思うけど。
僕的にはもうちょっとツンデレのデレ要素マシマシでお願いしたい所だよなぁ。
何しろ僕はまだ『ご主人様プレイ』の素人なんだからさ。
って思ってたら、しばらくすると本当に可愛い寝息が聞こえて来るじゃないか。
いやいやいや、マジで寝ちゃったよ。この娘。
って言うか、さっきまでちょっとエッチな気分だったから気付かなかったけど、そう言えば僕、トイレ行きたかったんだよなぁ。
どうするかなぁ。
このままだと、トイレ行けないよなぁ……ふぅぅ。
◆◇◆◇◆◇
――ピピピッ、ピピピッ、ピピッ!
「あぁ……一時間経ったか……」
何もする事が出来ないまま。
結局僕はベッドの脇で一緒に眠ってしまってたみたいだ。
「アラームかけといて正解だったな。それにしても……」
――ブルッ
やばい。マジでオシッコ限界だ。
キッカリ一時間。
ご主人様の言いつけはちゃんと守ったから、もう大丈夫だろう。
僕は彼女の手をそっと離すと、ダッシュでトイレへと駆け込んだのさ。
「あぁ、やべぇ、やべぇ。もぉ、マジで漏れるかと思った……よっ……」
――スカッ
僕の右手が。
――スカッ
空を切る。
えぇ? どう言う事?
「ん? 無い……無い……なぁ」
普通、オシッコを我慢している時なんて、逆にギンギンに存在感を露わにしている事の多い『ドラ息子』くんのはずだけど。
……はて?
僕は状態を確認する為、そっと下を向いてみたんだ。
すると……。
「これは……何だ?」
下を向いているはずなのに、胸の部分の膨らみに遮られ、自分の股間が見えない。
「なんだろう……これ……」
――ぷよぷよ
「ん?」
――たぷたぷたぷ
「んん?」
この弾力、この柔らかさ。
って言うか……。
僕は両手で、そっと自分の胸を掴んでみる。
「うん、柔らかい」
って言うか、そうじゃ無くって。
これ、間違い無く自分の胸だよな。
「って事は……って、どういう事だ?」
恐る恐る僕は、トイレの壁に掛けられた小さな鏡へと視線を移したのさ。
鏡の中に映るのは、一人の
「あっ! きっ……
――チョロロロ……
十数年ぶり……幼稚園以来かなぁ……。
この内ももを伝う生暖かい感触。
その時。
鏡の中の如月は艶めかしくも、その美しい顔をヒクヒクと引きつらせていたんだ。
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