※5当務の終わり※
11月11日。その日は朝から雲がどんよりしていて気分の優れない日だった。日に日に寒くなり特に朝晩は冷え込む。
ーーーーキンコンカンコーン。
朝6時30分。
消防署に勤務する職員の勤務開始を告げるチャイムが鳴り響いた。本来は5時30分起床。
大体の職員はその時間に起きて勤務を再開する。が、仮眠時間を削り出場する救急隊はその時刻を最終の起床時刻の目安としていた。
11月10日は9件の出場件数であり、日が変わり11日で3件の出場があった。
要請時刻はそれぞれ
指令 1時43分 帰暑 2時48分
指令 3時12分 帰署 4時46分
指令 4時54分 帰署 5時58分
帰署後、数時間もしない間に出場をしていた。
(・・あー。眠いなぁ。)
井上は強烈に眠気の残る頭を強制的に起動させ、カラダを起こした。
救急隊は基本的に救急隊専用の仮眠室を使っていた。この署の仮眠室はベットが5つありそれぞれをパーティションで区切ってあるものであった。
みんなの空気感を共有できる。
そういう作りであった。
井上はベットに座りながら頭かきと目を擦りながら大きくあくびをした。
部屋はまだ暗い。
その中に小さいイビキが聞こえた。
方向は黒岩の仮眠室。
(・・・黒岩隊長疲れてるなぁ・・・。)
それもそのはず、この中央消防署は中央市の救急隊のなかでもっとも出場件数の多い激務な所であった。
年間の出場件数は400件近い。
1当務における出場件数は10件を毎回越える。その1件の活動時間(出動指令から帰署)は平均して1時間30分)
そうなると、24時間ある当務の中で約15時間は救急車の中にいる計算になる。
残りの時間9時間・・・。
その中で残され9時間で出場の事案の報告書類を作成する。
事1事案の作成にかかる時間は約40分。
その中でより重症度緊急度の高い傷病者を
であったり、社会的影響のある事案などを対応して場合には作成時間が大幅に伸びることがある。
両班の救急係長は反対番の出場、活動、作成して事案の確認作業も有している。
お互いに活動をチェックしあい切磋琢磨しスキルや知識の向上を目的としている。
それゆえに係長が事案の書類作成を行うことは少なく、残りの2人で作成するのが通常であった。
そうなると2人で作成時間が約40分の事案を10件。単純計算で3時間。
残りの時間6時間・・・。
その他の救急業務に関する雑務を行い、また市民への普及啓発として救命講習等に出掛ける。
日によって異なるが、その関係の仕事で1、2時間の使われる。
残りの時間4時間・・・。
そうしてどんどん削られていった残りの時間を仮眠時間や休憩時間、食事時間とする。
この4時間は概算である。
24時間常に出場体制を維持しつつ、当務にあたる。その中で休憩時間、仮眠時間が4時間ぐらいになると、身体は正直辛いものである。
それが最低1年間続く。その激務の1年を黒岩の隊長は今年で3回。
現在3年目である。
普段は努めてネガティブな発言を控えている様子の黒岩だが、やはり年齢に比例して身体は正直である。
(・・・。)
井上は出来るだけ物音をたてずに自分の寝ていた布団を畳んだ。
1班と2班で布団や事務机、パソコンは共有していた。
2班のメンバーが出勤してくるまであと約1時間ほど。
その1時間ほどでも、黒岩隊長を休ませてあげようと思った。
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