一日目、夕方。音のサンプル提供も辞さない炎花

仕方なく、ほんとに仕方なくだが、俺の部屋に炎花を入れた。


チェックのスカートに白のブラウスの炎花はすぐさま俺のベッドに座る。



「せんぱいの部屋、つまんないですね」


「じゃあマジで来ないでくれる?」


椅子も無いし、俺の部屋には座る場所はベッドくらいしかない。早く帰れ。


「先輩のファンなので、曲ができたら一番に聴きたいです。感想言いたいです!」


「それはありがたいんだけどさ、今日は曲は絶対できないよ?」


「なぜですか?わたしという可愛い後輩から、何かインスピレーション感じませんか?」


「アホか。おまえを見たって何も感じない」


「んなっ!?そのヘッドフォン壊していいですか?」


「やめてっ!?親父から譲ってもらった大切なやつだからやめてねっ!?」


「わたしの順位は、現状ヘッドフォン以下なんですか。死にたくなりますね」


「なんだよ?死にそうなのか?元気が出る曲紹介しようか?」


「せんぱい、そうです。消えてしまいそうです。そんなわたしに元気をください!」


「下にエナドリあったかな?」


「ドーピングしてどうするつもりですか?今日は寝かせないぞ!?って感じですか?」


五月蝿い。俺がヘッドフォンしてても聞こえてくる。やかましい。


「先輩、暇です。構ってください」


「構ってたら一生曲できないぞ?」


「じゃあ、片方の手で鍵盤を弾いて、もう片方の手でわたしの頭を撫でてください」


「何それ手が攣りそう」


「夜のテクニシャンになるためには両手使いが必要だと思います」


「夜のテクニシャンって何だよ!ピアノ弾いてるやつに謝れ!」


「ダメですか・・・。ほら、深々と良い椅子に座ってるせんぱいの隣に、わたしも一緒に座れば、撫で撫でできますよ?」


「撫でる必要があるのか?」


「先輩が撫でてくれたら、わたしが寝ます。その隙に曲を作ってください」


「本当に寝るのか?」


ほのかが俺の左側に無理矢理尻を入れ込んで椅子に座ってきた。いや、この状態でどうやって撫でろと?


「頭に手をノセルノデス」


なぜカタコトになるんだ?


「わかったよ。行くぞ?」


俺はほのかの頭に手を乗せた。ほのかが目を閉じる。


「すぴー」


「寝たふりかよ!!」


「ほのかは寝ました。あと10分したらまたナデテネ」


えぇ〜、10分置きにこれやるの?めんどくさい。


「ちなみに撫でないと、せんぱいのパソコンにわたしの喘ぎ声を録音して入れます」


「使わねーからな!曲にも、その他にも!」


「今日はこの辺にしておきます。早く曲作ってくださいね」


ほのかが俺から離れると、勝手にベッドに寝転んでしまった。


と思ったら、イヤホンをして何か曲を聴いているようだ。最初からそうしてくれよ。








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