第37話 さらばチグルス!

ガルドに釘を刺し橋を消した後チグルスへと戻った



「なんかキャンプする気なくなっちまったな……。」



あのセシルという男はどうせまた仕掛けてくるはずだ

ガルドも口だけという印象を受けてしまった、一応脅しをかけたがどうも嫌な予感がする

日本に居た頃からこういった予感は外れたことがない


知能が高い分、魔物より人間の方が厄介だ

加害者なのに被害者だと言い張る奴がいるがセシルはそのタイプだろう

手と顎を砕いたし暫くは動けないと思うが、撃退用の罠を仕掛けておこう

すっかりやる気のなくなった俺はチグルスの宿へと入って夕食を取らずに眠りについた


翌朝目が覚めて宿で朝食を取っているとミーナさんがやって来た



「おはようございます。シンジ様、移住する者が決まりました。ここチグルスに住む全ての民が移住します。」



「え?全員なの?俺の方は問題ないけど、本当に大丈夫なの?」



「はい。折角外壁を作り直して頂きましたが安全に暮らせ更に大規模な農耕が出来ると聞き皆が決心してくれました。」



ユグドラシルがあるから魔物からの被害なら安全は間違いないと思う

しかしそこまで不安で苦しかったのかと逆に心配になってしまう



「わかった、もう聞いてると思うけど都の件もある。襲われることがあるかもしれないから早目に移動しよう。何回かに分けての移動がいいと思う。5万人いるのだから1日1万人とかで区切ってもらえると助かる。あ、それと荷物とかあると思うけど家ごと運んでしまうので住民にはそのままでいいと伝えて。後で家具とか取り出せるから問題ないから。」



「はぁー。『旅人』というのは本当に規格外なのですねぇ。シンジ様が用意してくださった馬車で副団長達や役人が移動を始めております。しかしあの馬車1台で50人も運べるとは物凄いですね。」



街長が感動しているが冷めちゃうのでご飯食べさせて欲しい

しかし5万人全員か……、予想外ではあるが問題はない


ちなみにこの移住計画だが俺達の考えはこうだ



①チグルスを出た場所に外壁と仮住まいのマンションを用意するのでまずそこに移動してもらう


②2日分の食料と飲み物だけを持って馬車で随時移動を開始する(馬車は俺が作った物が200台ほど、2日分なのはユグドラシルまで橋を通ると1日半かかるから)


③チグルスの外壁から家から全てをアイテムボックスに回収しユグドラシルに先回りした俺が仮住まいとなるマンションを建てていく(先に建てておかなかったのは何人移住するかわからなかったから)


④聖都にて新規住人の戸籍を作りながら仮住まいを割り振っていく(これらはミーナさんが選んだ信用の出来るチグルスの役人達にやってもらう、見張りはクウが率いる兵がやる)


⑤移動してきた住人に何種類か作ったモデルハウスを見せて選択してもらった家を建てて行く



といった所だろうか

まだ粗があったりするがまあこれで問題ないと思う


聖都は円形で中央が俺達の城、次のブロックが役所や高級住宅街と兵の宿舎

次が各ギルドや商店、住宅など

4つ目は住宅と宿泊施設、1番外側は農業や牧場の区画となる


マリーやミーナさん達との話し合いで安全面などで高層マンションなどは建てない事になった

最大でも3階建て程度だ

5万人の住民、正確には5万1023人という話だが全ての世帯(孤児などは孤児院を作るので除く)に一戸建てを作る

折角だし住民の戸籍を作ってちゃんとした調査をしようということになった

そもそもが橋を通らなければ聖都には入れない為、違法移住者は現れない

都からの潜入者もいるかもしれないがそん時はそん時だ



移住者の使用するブロックは全部で15ブロック

中央とユグドラシルを除く39のブロックの内15だ

まあ必要に応じてもう5ブロック使っても構わない、というよりどうせ余っているのだから使って欲しい

学校と病院やでっかい体育館とか競技場なんかも作ってもいいかも

コンサートホールや演芸場なんかもいいかもしれないな

ミーナさんに働き手がいるか聞いてみよう


それに一気に5万人増えるがまだ農業など始まっている訳ではないので食料問題も出てくる

今チグルスで育てている作物と俺の持ち出しで3か月分ぐらいは生活出来るようだが、野菜などが収穫出来るまでもう3ヵ月分は欲しいところ

俺がオーク狩りをしてきてもいいが聖都では俺が領主らしいので領主自らやるものではないとミーナさんに怒られた

でも狩りはダメだが肉の放出はいいらしい

俺としてもアイテムボックスの肥やしにしておくつもりはないので皆が飢えないようにどんどん出していくつもりだ


あと最後に立ち寄った街、名前は知らないがアジール王国の近くまで橋を作って買い出しに行く予定だ

ついでにエルルカ達の母親達を連れて来たいがそれは聖都が落ち着いたらになる



馬車での移動は特に問題なく4日後無事に住民全員の移住が完了した、といってもまだ全員がマンション暮らしだが

最後の仕上げとして旧チグルスに新しく外壁を作り仕掛けを施し看板を残しておいた

この看板を読んでセシルがどうするかは彼次第かな?

最後尾で聖都に戻った俺は橋を消して終了


初日に移住した人達は全員農業従事者だったのですでに畑仕事に勤しんでいる

エルルカとエリカ、ミーナさんや農民達と相談して外周の7ブロック全てを農作物専用とした

残る1ブロックはユグドラシルと外壁の間にあるブロックで日中の日辺りはそこまでよくはないが畜産ブロックとなった

必要に応じて増やしたり移動すればいいだけだしな


それに先んじて農民の皆さんは一般市民が住む居住ブロックではなく農業ブロックに家を作った


そういえば新しく作った戸籍調査の結果、住民は俺達を入れて4万9067人だった

聞かされていた数より2000人近く少なくなっていたが亡くなった方や夜逃げした人がいたらしい


市民全員が移動し終わった段階でクウ達が都以外の街や村にチグルスの全ての住民が移動したと通達に行ってもらった



市民世帯数1万671、住民が4万1106名

農業関係が101世帯5161名

教会関係者や孤児院経営者&孤児が223名

役所やギルド職員などが677名

兵士が1892名

これに俺達が俺、マリー、カレン、エルルカ、エリカ、アラベル、セディーナさん、ノエルさんの8名

以上がここ聖都ユグドラシルの総人口となる


ちなみにだが住民はこんなに人数いるが仕事とか何してるんだろうと気になって聞いてみたら、半分くらいが老人や子供や奥さんなどで残りの半分は狩人だったり冒険者だったり商業関係だったり働いてなかったりらしい

働いてない奴は農業とか畜産をさせよう

というか冒険者って何?

こんな草原しかない場所で冒険も何もない

ローグナー公国には存在しないらしく、アラベルに聞いてみると狩りをして肉を取ってきたり街で探し物や掃除をしたりと何でも屋状態の人達らしい

そんな人たちが5000人くらいいるみたいって多すぎるだろ

まあ元々が農家をやっていて不作で食べられなくなった人が冒険者になったってのが多いらしい

やっぱり農業をやってもらおう


そんなこんなで2週間後、すっかり春の陽気になった頃に全住民の家が建て終わったのであった

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