第26話 忘却の国

で、橋の下に馬車と人がいた訳だが結論からいうとビビって登って来なかった

そりゃそうだよな、俺だったら行かないよ怖いもん

折角スロープ作ったのに無駄になってしまった


話を聞きたかったので俺が降りる事に



「ここじゃ落ち着いて話せないだろうから、ぞ?」



警戒心剥き出しの奴等を放置して皆大好き『リグナムバイタ』で塀を設置する



「うわー!助けて!」「なんだこれは!」「あいつ敵だろ!」「すげー!」とか

色々言っているが敵意ないですよとその場に座り込む



「君らと話がしたい。俺はシンジ、最近ここらに引っ越して来たモンだ。ちなみに今出した塀や上にある橋は俺がスキルで作ったんだよ。攻撃されなければこっちからは手を出さないから安心…は出来ないだろうけど、安心して欲しい。」



こちらに剣を向けてる奴がいるがまあ大丈夫だろうと思っている

5分程ごにょごにょ全員で相談して結果が出たようだ



「…話を聞きます。その場から動かないでください。」



リーダーらしき女性と剣と槍を構えた3人が歩いて来る

馬車の上から2人程こちらに向かって弓を構えている



「警戒するのはわかるけどちょっと過剰じゃない?話をしたいだけだから。」



彼女らは俺から10メートルの位置で止まる



「……そうですね。まずは助けていただきありがとうございました。お話とは何をお聞きになりたいのでしょうか?」



俺は話して来た女性を見る

教会で見るシスターみたいな恰好をしている

色は白だがその服のとある部分が押し上げられ窮屈そうだ


そう、爆乳だ!

いかんいかんそうではない



「さっきも言ったけど俺は最近ここらに引っ越して来たんだよ。でもここらの事をよく知らないから情報が欲しくてね。それで質問なんだけど、このカテラ大草原には村とか街とか国ってのはあるのかい?あ、ちなみに俺の家はそこの橋を辿たどって行けば着くよ。」



ここで攻撃的に出ても下手に出てもいけない

あくまで話を聞きたいだけだしな



「……それをお聞きになられてどうするのですか?このようなものを作れるスキルがあるのですから住んでるということに嘘はないでしょうが……。貴方が何者なのかわからないのでその質問には答えられません。」



答えられないって時点で答えてるようなもんなんだけどな

まあこの答えは思っていた通りだ



「もっともだな。だが俺が『旅人』だとしたらどうする?」



「旅人!」「うそ?」「あいつが?」「すげー!」とか聞こえてくる

おい、すげーしか言ってない奴いるだろ



「……仮に『旅人』だとして証拠はあるのですか?」



証拠は……ない!



「俺が『旅人』だという証拠と言われてもどう証明したらいいのかわからないな。そっちに鑑定が使える奴がいるなら俺を見ればわかると思うけど?」



「今は鑑定出来る人がおりません。……数日前にこの辺りを通った人が持っていたのですけれど、この辺りに住んでいるならご存じありませんか?」



数日前

多分彼らだろうな……



「…おっさんと若い兄ちゃんと女の人の3人組か?その3人ならオークにやられてた。気が付くのが遅くて助けられなかったよ。残念だった。」



「うそ!」「あいつがやったんじゃ…」「マジかよ」「すげー!」

いや、すげーじゃねーだろ人が死んでんだぞ?あいつそれしか言えないのか?ちょっとイラっとすんな



「おっさんはオークに殴られて食われてた。若い兄ちゃんも殴られて死んでた。女の人は犯されてそのまま死んでたよ。3人共燃やしておいた。」



あの光景を思い出して胸が苦しくなった

そんな俺を見たリーダーの女性が涙を流しながら俺に近づき手を取ってきた



「そんなに苦しそうなお顔をされる方が悪い人のはずがありません。3人は残念でしたが火葬していただきありがとうございます。魔物に弄ばれるのは耐えられませんからね。3人も感謝していると思います。」



俺も涙が溢れそうになったがこらえる

他の奴等も警戒を解いていて涙を流していた


暫くして皆が落ち着き話を再開する



「シンジ様……でしたよね?本当にありがとうございました。私共は恩人であるシンジ様が『旅人』だという事を疑う事はありません。貴方様の予想通りここから馬車で3日程の所に国が御座います。国の名は『忘却の国』。」



「『忘却の国』?それは忘れ去られたって意味でかな?それとも忘れてしまうってことかな?」



「忘れ去られたという意味です。500年以上前からこのカテラ大草原にあったそうです。今も国と名乗ってはいますが、魔物に襲われたりして人口も減りいくつかの街と小規模の村が少し点在しているだけです。」



そうだろうな

カテラ大草原に出てくる魔物はレベルも高いみたいだし、よその国との行き来すら満足に出来ないだろう

人の流れ、物の流れがなければどんどん衰退していくに決まってる

独自の文化はあるだろうけど、それだって限度はある


成長するには破壊が必要だがその破壊がなければ成長はない

これは持論だけどね



「そうか。俺がこの橋を作ったのは君達みたいにこの土地に住んでる人がいるのではないかと思って探すのと避難場所を目的として作ったんだ。」



「そうなのですね、それは素晴らしいお考えです。きっと神様も祝福してくださることでしょう。」



……スキルの神とやらなら会ったが、そんな大層なもんかねぇ?


出来るならこの人達の住む所まで行ってみたいな



「君達は街に帰るところだったのかな?よければ俺を連れて行ってもらえないだろうか?」



「それは……、構いませんけれども何か御用でもあるのでしょうか?」



「用って程の事ではないのだけれど、折角近くに住んでいるんだ。お互い助け合えたらと思ってね。」



「仲間と相談させてください。」



集まって相談してるのはいいんだけど

「大丈夫だと思うけど…」「そうかな?」「聖女様が言うなら」「すげー!」

約一名は何にも考えてないのがわかる

イライラを通り越して呆れてきた


てか聖女?

聖なる乙女、略して聖女

だからなんだって話なんですけどね

その言葉に反応してみただけっす、すんません



「相談した結果、『旅人』である貴方様をご招待したいと思います。」



「ありがとう、でもここから馬車で3日掛かるんだよね?一先ひとまず俺の家に来ないか?俺の家族にも相談したいし。休める場所も提供出来る。」



家の女子達をなんて呼んだらいいのかわからず、思わず家族って言ってしまったがまあ問題ないだろう



「そうですね。3日掛かります。ご家族に相談なく行くのはまずいでしょう。シンジ様のお家までお邪魔致します。」



「うし、なら橋の様子もみたいしもう一度スロープを出すから登ってくれ。皆が馬車に乗ったら塀を消すからな。」



俺は先に橋の上に戻り、魔物がいないか確認

幸いな事にオークが2匹しかいなかったので瞬殺しアイテムボックスへ


全員が馬車に乗り込んだのを確認し塀をしまう

緩やかなスロープを登ってきてもらう

登り切った所でスロープをしまい終了



「未だに信じられません。このような橋が一瞬で作られるなど神の奇跡としか思えません。」



名前は知らない聖女様が興奮している、その興奮に合わせてばるんばるん揺れている

俺も興奮している

ん、んんっ。少し落ち着こう

そして思う、この場にマリーとカレンが居なくて良かったと

最近あの子ら容赦がないというか厳しいというか、今朝も鼻血塗れになったし…



「そういえば聖女様って呼ばれてたけどお名前は何て言うの?」



……なんかナンパっぽくなってしまった

最近おかしいな?地元じゃ硬派なシンジ君で有名だったんだけど?



「あ、大変失礼致しました。私はアラベルと申します。お見知りおきを…。」



一瞬、私は帰ってきたの人かと思ったのは内緒だ



「アラベルさんね。とりあえず移動しよう。他の人達も移動しながら名前を教えてくれ。」



昼を過ぎたし腹減ったなー

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