第22話 残酷な世界

前半に残酷描写あり、少しシリアスです

世界観・主人公の性格上必要な話だと思っています

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何かが魔物に追いかけられている

遠目でわかりにくいが人間っぽい



「カレン来てくれ!魔物に追われてる奴がいる!」



すぐにカレンが駆けつけてきた

ソニからバードウォッチング用の双眼鏡を持ってきてくれた

なかなか出来る奴だな



「シンジ様、追われているのは人間みたいです。まさかこんな所に私達以外の人間が居るとは……。如何いたしましょうか?」



双眼鏡を受け取り見てみる

人間と思われるおっさんと若い男、それと女性がオークから逃げている

おっさんがオークの棍棒で殴られて倒れた

ピクリとも動かないから死んだと思う



「どうしようか、流石に距離がありすぎるな…。いや、行こう。助けられるなら助けたい。」



すぐにソニをアイテムボックスに入れ、外壁の外に出す

予め作ってある階段も取り出しカレンと降りていく

当然設置したままにはしておけないのでソニに乗りながら回収



「行くぞ!カレンはマリー達に連絡してくれ。こっちの心配はいいから絶対に外壁から出るなと言ってくれ。」



キャンプで使おうとしていた充電式の無線機でカレンがマリーに連絡する

無線があることに先週気が付いていて良かった、何でも持っておくもんだなとしみじみ思う


5分程走るとおっさんの死体が見えてきた

残っていたオークがおっさんを食べている

すでに体の半分以上がない


激しい吐き気がしたが窓を閉めていたので匂いがないから耐えられた

血の匂いを嗅ぐと貧血を起こしそうになる

昔飼っていた犬が耳をケガして結構な量の血が流れてた時の匂いを思い出した、俺はあの時立っていられないぐらい眩暈がした



「シンジ様大丈夫ですか?お顔の色が真っ青ですけど……。」



カレンが凄く心配そうな顔で見ている

大丈夫だと手で制し、こちらに気が付いて向かってきたオークを轢いていく



「っざけんなよ!魔物風情がなめんじゃねぇ!」



追いかけていくと若い男はすでにこと切れているのか血だらけになって倒れている

その側で女性がオークに犯されている

それを見た瞬間、目の前が真っ赤に染まった

その後の事を俺は覚えていない




後で聞いた話だがとても声をかけられないぐらいの殺気と叫び声を出していたとカレンが泣きながら教えてくれた

それを聞いて申し訳ない事をしたとカレンを抱きしめ頭を撫でながら謝った


俺も泣いていた


悲しかったんじゃない、悔しかったんだ




人の命の軽さを知ったから




周りに魔物はすでに動かなくなっていたので、すでに死んでいた女性と男を重ねてホワイトガソリンをかけていく

このまま放置してこれ以上人間の尊厳が踏みにじられるようで我慢出来なかった


火を点けて俺達は家に戻った



俺とカレンは無言で家に戻った

他の子達は何かを察したのか声を掛けてこないでいてくれた

そのまま部屋に戻り一緒に来てくれたカレンを抱きしめて寝た

とても一人では耐えられそうになかった

カレンは黙って俺の頭を抱きかかえてくれていた


いい女だな俺には勿体ないぐらいだ


気が付くと朝になっていた

ベッドの中には全員が俺に寄り添って寝ていた


この子らにも心配かけたか……


俺は眠る彼女達を見て何があろうとも全力で守ろうと心に誓った


暫く吹っ切れることはないだろうがこの残酷な世界で生きていく事を決意した



「おはようございますシンジ様。」



起きてきたカレンを抱きしめ口づけを交わす



「おはよう、もう大丈夫だから。そんなに泣きそうな顔をしないでくれ。」



笑顔になったカレンと朝食を作っていく

すぐ起きてきたエルルカとエリカにも口づけをし、調理を手伝ってもらう



「しかしこんな場所に俺達以外にも人間がいるんだな。やっぱり誰かしらが住む場所とかあるんじゃないのか?」



ハムエッグを切り分けながら言う



「そうですわね、普通に考えてここに人間がいることは考えにくいですから何かしら人がいる場所があるのかもしれませんわね。」



珍しく普通に起きてきていつの間にか朝食を食べているマリーが答える

こんな場所に住む理由ってなんなんだろうな

俺達みたいに追われて来たのだろうか

色々と想像は出来るけど答えはでない



「んとさ、もしかしたら人がいるかもしれない。それでなんだけど……。」



「ええ、わかっていますわ。シンジ様は探しに行きたいのですわよね?私共もついていきます。」



他の皆も頷いているが、しかし俺はそれには同意しない

本当は皆で行きたい、でも次にあんな光景を見てしまったら俺はどうなるかわからない

それで皆を怖がらせたくない

俺の我儘で申し訳ないけど


それに皆で離れた時この外壁の中に魔物が溢れるかもしれない

折角作ったのにそれは避けたい、でも残す皆も心配だ

なので俺はソニを置いていく事に決めた



「そんな!シンジ様に何かあったら私達も生きていようと思いません。ソニを持って行ってください。」



「いや、ソニは置いていく。これは決定事項だ。それに移動手段は別にもあるから大丈夫だ。」



皆を連れてソニに向かう

ガレージ部分を開けて小型バイクを表に出す



「これがあるから問題ないよ。2人乗りだけど悪路にも強いし、走る分には問題ない。」



ガレージの中から出したのはス〇キのア〇レスV125

ス〇キが誇る名車だ



「それにな、安全に進むための秘策もある。」



「秘策……ですか?それは本当に安全なのでしょうか?」



「うん、言っても信じられないだろうから今見せるよ。」



この子ら俺のスキルを忘れてないか?

高さ6メートル幅3メートルの『リグナムバイタ』で出来た橋を取り出す

更にその上に四角い筒状のトンネルも乗せて行く

2メートル間隔くらいで人が顔を出せるぐらいの穴も開けてある



「この上を走りながら設置していく。これなら安全だろう?」



どうやら安心してくれたようだ



「それにな、夜には戻って来るぞ?」



この場所を起点としてまずは半径5kmくらいを探索するつもりではいるが、設置しながらだから時間かかるだろうし

イメージとしてはドーナツ型

外壁、避難場所としての効果を持たせる意味合いもある


その5kmが終わったら10km15kmと広げていく予定



「用意もあるし明日から少しづつやっていくよ。」



部屋に戻りステータスチェックだ




タカムラ シンジ

男、異世界人

30歳

レベル22(UP)

職業:建築家、旅人、ドライバー

称号:異世界トラベラー、大量轢き逃げ犯、オープンスケベ、夜の帝王、怒れる戦士(NEW)


HP:1560

MP:99999999

攻撃力:681

魔力:99999999

防御力:89910000

素早さ:733

器用:718


スキル:アイテムボックス(材)、言語理解、棒術レベル3、徒手空拳レベル3、見切りレベル4、性愛術レベル3(UP)、轢き逃げアタックレベル4(NEW、UP)


ユニークスキル:絶対建築基準法アーキテクトレベル2(UP)




うお!?

レベルとステータス、めっちゃ上がってるな

称号の『怒れる戦士』っぽい気がするな


性愛術はスルーするとして……


轢き逃げアタック?

……うん。みなまで申すな

恐らくキレてたときに轢きまくったからだろうな



そしてついに!待望の!一番上がって欲しかった絶対建築基準法アーキテクトのレベルが上がってる!

どれどれどうなったんかな?


意識して内容を確認してみると縦横が30メートル高さが18メートルの建造物が作れるようになった

一気に3倍だ

これは嬉しい、小さいマンションぐらいなら作れるってことだな


次にレベル上がったらどうなるのか気になるな、高層マンションとか作れるのかもしれない


でもエレベーターないと不便だよな

歯車とかで上手く作れるだろうか?知識ないから難しいかな



出来る事が増えたのであれもこれもとアイテムボックスに作っていき夜は更けていった

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