第１９話 みんなちがって、みんないい
夜になって街道から外れ、本日の移動は終了となった
俺のアイテムボックスに入れておけば時間が止まるので腐る心配がないが折角乳製品を手に入れたので、お袋直伝の簡単カニグラタンを作ることにした
フライパンに小麦粉とバターを入れ少量ずつ牛乳を入れながらダマにならないよう熱していく
その間にマカロニを表示時間よりちっと短めに茹でる
それと忘れずにオニオンスライスと輪切りにしたピーマンを炒める
ペースト状になった小麦粉（ホワイトソース）に水分を切ったカニ缶と塩を足し味を調えたら耐熱皿に茹でたマカロニと野菜を入れホワイトソースを乗せる
最後にピザ用チーズをたっぷり乗せてオーブンで焼き目がつくまで熱したら出来上がり
カニ缶、バターもチーズも塩分が含まれているのでホワイトソースの塩分は控えめにするのがポイントだ
そういえば俺が小学生の頃、給食のマカロニグラタンに揚げパン粉をかけて食べてたけど今もあるのだろうか？
「さあ完成だ。街で購入した焼き立てパンとワインも出すよ。カニグラタンはおかわりもあるからいっぱい食べてくれ。」
この世界にはピザやグラタンはないみたいだ
中華もあるが洋食や煮込み料理が多いみたいでイタリアンはないらしい
といってもグラタンは元々はフランスの家庭料理なんですけどね
『旅人』もっと頑張れよ
「ふわぁ、すごく美味しいですぅ！」「ほんとね、すごく美味しい！」
「具は少ないのですがとても美味しいですわね！」「さすがシンジ様です！」
４者４様である
「気に入ってもらえたら嬉しい。こいつはお袋直伝でね。料理が苦手なお袋の数少ない美味しい料理のひとつさ。」
蛇足だがお袋の得意料理は味噌汁とおべった
おべったとはもんじゃ焼きの地方での呼び名でお袋の故郷川崎ではそう呼ぶらしい
そもそも味噌汁とおべったが料理と呼べるのかわからないが、お袋の作るこれの味を知っている俺は出されると無表情になる
ひとつ言えるのは得意だから美味い！ということではない
グラタンと唐揚げと春巻きは凄く美味いんだけどねぇ……
洗い物も終わり各々シャワーを浴びたりお茶を飲んだりしている
早々にシャワーを浴び、運転席でタバコを吸っていた俺はふと思う
この車、乗車定員５名だけど寝る場所４つしかないんだよね
まあ奥のベッドに３人寝れるけど、どうしようかなどと考えていたら
マリーとカレンが運転席の上のベッドに寝るから後ろで寝てくださいなんて言ってきた
それはあれですかい？ヤれ！ってことですかい？
借金奴隷にそーゆーことして問題にならないんですかね？
え？合意なら構わないと？
よく見たら奥のベッドで二人真っ赤な顔をして待っている
逃げ道塞がれました？
いやいや嫌いじゃない、むしろそういうの大好きですけれども今日会ってさらにお相手は日本では未成年で……
業を煮やしたのかマリーに背中を押され奥のベッドに押し込まれた
「えっとそういうことなのかな？」
「シンジ様私とエリカは初めてですので優しくしていただけるとありがたいです♪」
そっか……
じゃあイタダキマス！
翌朝目覚めると恥ずかしそうに２人が俺を見ていた
「おはよ、いっつっ。なんか首筋痛いな？」
エルルカは噛み癖があって、いたしている最中何回か噛みつかれた
エリカは恥ずかしがり屋でずっと声を我慢していたし
みんなちがって、みんないい
朝食はエルルカとエリカに任せ自分の顎を触りながらコーヒーを飲む
うーん、マ〇ダム
わかってる
俺にハードボイルドは似合わない
カレンがマリーを起こし皆で朝食を食べる
昨日残ったホワイトソースを挟んだクロックムッシュ、それとオーク肉のハムを焼いたもの
昨日買ったとうもろこしでコーンスープも作ってもらったのでそこそこボリューミー
「それじゃ出発するか。明日には国境につけるといいな。」
その後２日かけて国境を越え夜になっていつも通り寝た
まではよかったが……
何この状況？
朝になりソニのカーテンを開けたらびっくり
俺達は世紀末救世主伝に出て来そうな見た目の野郎どもに囲まれている
うわーナイフ舐めてる奴いるよーと遠い目の俺
何か叫んでいるが窓を閉めてると音が一切聞こえない
ふむ、これもソニのスキルの内なのか？
しかしあいつら
「出てこいや！」「女よこせや！」「金出せや！」
まあそんな頭の悪いことしか言ってないと思う
なので俺は……
アクセルを踏み込み走り出す！
止まった状態からだから死にはしないだろう
まともに相手してられないしな
お？レベル上がった
何人か死んだのか…
まあよく言うじゃない、殺される覚悟のない奴は黙って殺されろって
あれ？違ったっけ？
てことで今のステータスはこれ
タカムラ シンジ
男、異世界人
３０歳
レベル１３（UP)
職業：建築家、旅人、ドライバー（NEW)
称号：異世界トラベラー、大量轢き逃げ犯（UP)、オープンスケベ（UP)、夜の帝王（NEW)
HP：７６０
MP：９９９９９９９９
攻撃力：２８７
魔力：９９９９９９９９
防御力：８７３６００００
素早さ：３３４
器用：３７１
スキル：アイテムボックス（材）、言語理解、棒術レベル３（NEW、UP)、徒手空拳レベル３（NEW、UP)、見切りレベル４（NEW、UP)、性愛術レベル２（NEW、UP)
ユニークスキル：
２日で随分とステータス上がったな
というよりステータス上がりすぎじゃね？
職業が増えたせい？ドライバー（NEW)って毎日運転してるから？
器用は倍ぐらいだけど攻撃力と素早さとか３倍になってますけど
それとさ、称号ってこんな簡単に変化するもんなの？
轢き逃げ常習犯から大量轢き逃げ犯て……
この先の展開がなんとなく読めてくるよね
あとオープンスケベって
これ嫌がらせだよね？
ムッツリスケベのときにオープンスケベになったりして、なんて思ってたら本当になってるとかどっかで神様的な人がやらかしてるよね？
問題は夜の帝王ですよ……
職業と称号に関しては意識向けても内容がわからないんだよね
どんな効果があるかとか
棒術とか徒手空拳、見切りなんかは街中で揉め事あったからだろうけど
性愛術……
もう敢えて触れまい
溜息しか出ないっすわ
「んじゃ気を取り直してっと。国境越えたしどっか街に行くか？特に用事がないならそのままスルーしちゃうけど。」
「そうですわね。必要な物は全部揃っていますし、特に情報を仕入れる必要もないのでこのまま進みましょう。」
今日は後部座席にいるマリーが言う
珍しく寝起きがよかったようで朝食の時間も早目だった
そんなこんなで４日後、メイガイア帝国首都カマクラーラに到着したのであった
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