第14話 船頭多くして
領都を無事脱出した俺はなぜ俺を助けたのかマリアベルとカレンに聞いた
「…なぜでしょうか、正直に申しますと私にもわかりません。シンジ様の事を愛しているからでしょうか。色々思うところはあります。でもあのまま城にいれば捕らえられ搾取されていたのは間違いありません。」
「そうですね、あのままシンジ様が奴隷になるのを黙って見ていられませんでした。それと私はシンジ様の恋人ですからどこまでもついていくのは当たり前の事です!」
本人達もいまいちわかっていないようだが、ありがたいことに俺を愛しているから家族までも裏切ってついて来てくれた
なぜかわからないが嘘をついていないことがわかる
そして俺も二人を愛おしく思う
あれ?カレンとは仲良くした関係があるが出会ってから数日しか経っていないし、マリアベルとは特になにもないけど手放したくない程愛している?
カレンに恋人と言われたが否定する気になれない?
…思考が誘導されてるというか、なにかしらの強制力が働いているような気がする
理由がわからないがソニが関係している気がする
不明なままのユニークスキルだろうか…
「そか、マリアベルまで俺を愛しているとは知らなかったな。でもその話はまた後でにして今はここから移動しよう。いつ追手が来るかわからないし。どっちへ向かえばいいと思う?」
「そうですね、カレンがシンジ様の恋人だというのは知りませんでしたがここから離れるのが先決ですね。…ニーズ村方面には行かない方がいいと思います。まだ連絡はいっていないでしょうがエドガーに会うと移動経路が知られて厄介です。」
「マリアベルお嬢様がシンジ様を好きだというのはどうでしょうか?間違いである気がしますが、私の愛は本物です。シンジ様とは毎晩のように愛し合っていますし♡」
「な!いつの間にそのようなふしだらな関係に…。で、でも身分の差でカレンは妾にしかなれないではないですか!私は正室になれますもの!ですよね、シンジ様?」
シャーッと威嚇し合う二人
俺を挟んで牽制し合うのはやめていただきたい
俺はどちらかしか愛せないような狭量な人間ではない!
ああ、エドガー?マリアベルと最初に出会ったときにいた槍構えたおっさんか
確かに知ってる奴に見られるのは面倒の種だ
「他の国ってどうなの?『旅人』に対して攻撃的とか友好的とか打算的とか。
友好以外のは行きたくないけどね、それとそれ以外の選択肢も欲しいかな。
あと聞き忘れてたけど『旅人』って元の世界に帰れるの?」
「おそらく他国も『旅人』に対してはあまり変わらないと思います。このエイジア大陸には4つの国家があると前にお話ししたと思います。」
東のローグナー公国。
西のアジール王国。
南のデラボナ王国。
北のメイガイア帝国。
どの国も建国の歴史は古い
そして『旅人』との関りも深いものだと言う
古い文献にも『旅人』は出てくるが元の世界に帰ったという記述はないらしい
ただ突然『旅人』の話が出なくなるみたいなので帰ったのか死んだのか
どちらにせよわからない事が多い
「ならこの国と比較的関係が浅い国に行こう。俺は逃げればいいがマリアベルが身バレしない所の方がいいだろう。」
「でしたら、西のアジール王国がよろしいかと思います。ですがアジールに行くには北か南のどちらかを通らなければなりません。」
「いえいえ、北のメイガイアがいいと思います。メイガイアとローグナーは昔から仲が悪く、メイガイアに入ってしまえば安全だと思います。」
ここでエイジア大陸がどのような大陸なのか確認してみようと思う
・大陸の形はトランプのダイアの形に似ているらしい
・どの国も王都は先端部分にあり逆に中心部分はカテラ大草原がある
・首都から首都まで馬車で大体4カ月ほど
・カテラ大草原の外周を回ってくるのに半年ほど
・カテラ大草原を踏破した者はいない
外周で半年かかるとか…
馬車で1日10時間移動でおよそ50㎞
半年180日だとしたら9000㎞
カテラ大草原が円だと仮定した場合直径が約2866㎞
おいおい、東京~香港よりも距離あるんですけど?
しかもこれ『約』とか『おおよそ』の数値でしかない
おそらく実際はもっと広いはず
「カテラ大草原を行けば安心じゃないか?追手も来なさそうだし。というより何でこんなに広い土地をそのままにしているの?」
「カテラ大草原は昔から各国開拓しようとしているのですが、草原に立ち入ったらすぐ魔物が大挙して押し寄せてきます。あれ、そういえばシンジ様大草原を抜けてこられたのですよね?魔物に襲われたりしませんでしたか?」
そういえば襲われてない、というか出くわしてもいない
街道に出てゴブリン見るまで一切轢き逃げしてないし
何故だろうか?
「襲われてないね、マリアベル達に会うまで一切見てない。魔物ってゴブリン以外だとどんなのがいるの?今までゴブリンしか見てないから他にいるなら知っておきたい。」
森などはゴブリンやゴブリンリーダー、フォレストウルフ、コボルトなどが出てくるらしい
対してカテラ大草原はゴブリン系、コボルト系、ウルフ系、オーク系、バード系、オーガ系など他にもドラゴン系がいるとかいないとか
ドラゴンか
肉、美味いのかな?
チャンスがあったら狙ってみたいな
まあ轢いて倒せればですけど
「どちらにせよ余り人目にはつきたくないから、街道を避けて大草原を突っ切るってのも手ではあるね。ただ突っ切るにしても俺の持ってる食料だけでは足りなくなるな。侯爵領以外の近い街で買いだめしていかないとだな。」
「でしたら隣の領にあります、アラハマという街はどうでしょうか。お父様と隣の領主様は仲が悪く、まず追手が来るのは遅くなると思います。いずれ国内中、手配されるでしょうがアラハマでしたら暫くは大丈夫だと思います。」
「いざとなったら車に乗れば安全だし、とりあえず行ってみようか。夜中の間にアラハマ近くまで移動しちゃおう。侯爵領から真っ直ぐ追手がかかったとしてもソニならかなり引き離せるはずだから。
長居はしないにしても1日くらい買い物する余裕はあるかな?カレン、助手席でナビよろしく。」
一路アラハマに向けて走り出す
逃げたのが見つかったかは、わからないが今すぐ追われてももう遅い
こっちが4時間も走れば追手は2日以上は追いつけない
きっちり4時間走ると街の塀と門が見えてきた
さすがに夜中なので街には入れてもらえないが、門番に話をし何台か並ぶ馬車用の列に加わる
精神的にも肉体的にも疲れている俺はすぐベッドを出し眠ろう
と思ったらマリアベルとカレンにベッドルームに連れ込まれた
「シンジ様♪カレンに出来て私に出来ないってことはありませんよね?♡」
出来ないなんて言わない!
……結局2時間くらいしか眠れなかった
「朝食準備するよー。」
起きてシャワーを浴びた俺は朝食の支度をすることに
といっても今日は疲れてて調理する気になれない
トーストした食パンとロールパン、ジャムと高級ハム
あとはウィンナーを焼いて置いておく
眠気が酷いので濃いめのコーヒー、カレン達にはティーパックの紅茶を用意
ちょうどシャワーから出てきたカレンに手渡す
「ひょっとしてだけどマリアベルって朝弱いのかな?」
苦笑いしたカレンが頷く
子供の頃から起きれなかったらしい
起きてくるの待ってられないからさっさと食べる
さすがに高級ハムは美味しい
朝食も終わり列も進みだしたので運転席でタバコを吸う
それと同時に備え付けの灰皿の蓋を開けてみる
うん、成功だ!
実はソニのスキル『再生』を利用できないかと実験していた
というか灰皿に放置された吸い殻も再生されるのではないかとそのままにしておいた
見事まっさらな新品に再生されている
まあ吸ってみなければわからないが見た目は間違いないので大丈夫だろうと思われる
希望的観測すぎるか?
とりあえず火を点ける、紫煙も匂いも味も問題ないようだ
これでタバコ問題は解決した
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