第7話 振り返れば奴らがいる
改めて運転に集中し舗装された街道を進んで行く
途中行商っぽい馬車を何台か抜いていったが近づき抜いて行くたびに御者の人達はぎょっとした顔をしていたのが印象に残った
辺りも暗くなり点灯したヘッドライトが街道の先の村であろう外壁と門を照らし出した
「あそこが村かな。思ったより時間かかったな。カレン、このまま村に入っちゃっていいのかな?」
助手席に座っているカレンに声を掛ける
しかし村っていうから柵ぐらいなものかと思っていたら、ちゃんとした外壁で覆われているな
魔物が出るからその対策だろうか
「それでも馬車で移動するよりかなり早く着きました。ええ、あれがニーズ村です。門の前で止まってください。門番の方に説明してきます。シンジ様は門が開きましたらそのままお進みください。私はそのまま村長宅に行きますので後程合流致します。」
こんな怪しい馬車で近づいてるのですからと、カレンは苦笑いしながらマリアベルとアイコンタクトをし車から降りて門番に説明に行った
カレン、走るのはえーな
そういえばここに着くまでの間だがあれから何回かゴブリンを跳ね飛ばした
レベルも4まで上がった
「マリアベル、もう9時近いし移動は明るくなってからにしないか?道が見えるようになれば速度だせるし、もうゴブリン轢きたくないし…」
ソファーに座っているマリアベルは優雅に紅茶を飲んでいた
ペットボトルだけど
「そうですわね、思っていたよりも早いことがわかりましたし一度体を休めてから進みましょう。街道にゴブリンが多かったのも気になります。カレンはそのまま村長に話をしにいきましたし、村長の家の前に車を停めれば問題ないと思います。」
マリアベルに誘導されるまま門を潜り抜け、ゆっくりと村長宅へ向かう
村っていうからもっと閑散としたイメージだったが、こんな時間でも開いてるお店はあるし出歩いている人もそこそこいる
後でマリアベルに聞いたが、村だけで8000人、外壁周辺の小さな農村と合わせて1万人近くの人口がいるみたいだ
暫く進むと立派な石造りの2階建ての屋敷が見えてきた
ここが村長宅らしい
邪魔にならなそうな場所に車を停めて車内のカーテンを閉めていると先に着いていたカレンとじいさんが屋敷から出てきた
「マリアベル様、ご無事なご様子でのお帰りこの爺安堵致しました。屋敷にお部屋をご用意させて頂きましたのでそちらでお休みください。お付きの方もどうぞおいでください。」
物珍し気にキャンピングカーを横目に俺にも屋敷に入るように促される
俺はちょっと頭の中をまとめたかったので丁重に断り、一人残った
なんとなくで行動し、流されるままに来たがこれからどうするのか、この世界で何をしたいか、そもそも帰れるのかを考えたいと思ったのだ
車内でマリアベルやカレンと話していてわかったことだが、この世界は中世よりも近代に近い
武器は剣や槍、弓矢などがメインみたいだが銃火器もある
魔法もあるみたいだが相当な素質がないと使えないらしい
時計はあるが電話などはない
あと召喚や勇者、魔王などはいないみたいだが稀に異世界から『旅人』が来るらしい
どうやら俺のステータスの職業にある『旅人』は、異世界から来た人につく職業みたいだ
あとは人外の生き物『魔物』が跋扈している
どのように生まれどこから来るのかはわからないらしいが
それとマリアベル達から何も聞いてはいないが、どこか遠くからの帰りみたいだった
何故急いでいるのかも知らない
いや知ろうとすらしていなかった
実際俺には関係ないし、お
それだけの関係なのだとどこかで割り切っていたからだ
帰れるのかわからないけれど元々この世界の住人でもない俺はこれからを決めなければならない
このままこの世界で生きていくのか
それとも元の世界に戻るのか
勿論戻れるなら戻りたいが、両親共に自営業で未だ現役だし実家で共に働いている弟がいるから老後の心配もないだろうから家族はオッケー
俺はちょうど
子供いないし結婚もしてない彼女もいないし
友人は昔からつるんでるのが数名いる程度(全員既婚者)
あれ?おかしいな?目から汗が出てきたよ?
これあれだよね?別に戻れなくても問題ないよね?
チートあるみたいだしむしろこっちで幸せ探した方がよくね?
……一旦落ち着こう
とりあえずだ、戻れる方法を探しながらこっちの世界を楽しむってのがいいかな?
マリアベルを街まで乗せて行かなきゃだし、謝礼も貰えるんだし
今まで来た旅人が帰れたのか聞いてから決めてもいいか
気を取り直して、車内覗かれないようにカーテン閉めたし、あとは…
ゴブリン轢いて車どうなったか見てないや
「やっぱり傷ついてないな、血の跡すらない。」
不可解ではあるがこの車も一緒に異世界に来たわけだし何かしらスキルのようなものでも発動しているのかもしれん
こういうとき鑑定とかあるといいんだろうけど、ステータスを見てもスキルは増えてない
今日は一日色々ありすぎて疲れたし、シャワー浴びて寝るかな
車の鍵を掛けシャワーと歯磨きをするとさっぱりして落ち着いてきた
車体後部にあるベッドスペースを整えて寝る準備に入るとドアをノックする音がした
カーテンの隙間から覗いてみるとマリアベルとカレンが立っていた
「屋敷に泊まるんじゃないの?ぼちぼち寝ようと思ってたんだけど。」
「シンジ様、私とカレンもこちらで寝てはダメでしょうか?早朝に出るならこちらにいればそのまま出発出来ると思いますし…。」
なんかモジモジしてるが言ってることは間違ってないので奥のベッドを使ってもらうことにした
「別にいいよ、確かにその方が俺さえ起きれば出発出来るしね。あ、寝る前にさっぱりしたいならそこにあるシャワー使っていいから。棚にタオルもあるから良かったら使って。」
二人を招き入れ促すと俺は運転席の上側にあるベッドを用意することにした
「後ろのベッドで二人は寝れるからそこで寝てね。俺はこっちで眠るから安心して、襲ったりしないから。」
軽く笑いながら言ってみたが、二人は顔を真っ赤にさせている
あれ?これいけるか?
などと思ってもみたが乗せてからここまでの間、決して何かが起きるような行動はしていない
きっとそういった事に免疫がなくて恥ずかしくなっただけだろうと思う
俺は鈍感系主人公ではないが思い当たる節もない
シャワーとタオル、ベッド脇にあるライトの使い方を教え、室内灯を間接照明に切り替えタバコとお茶を片手に表に出た
周りを見回したが特に人もおらず、なんとなく空を見上げた
「やっぱり地球じゃないんだな。」
日本では見たこともない星空だった
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