第8話 そのとき私は見た

夜空は見慣れていたが見たことのない星々しかなかったが、しかしその煌めきは鈍く美しく瞬いていた

俺はタバコを携帯灰皿に捨てお茶を一気に飲み干し車内に戻った


シャワーの音が聞こえる

カレンがソファーに座っているということはマリアベルが入っているのだろう



「カレン、俺は寝るから君達が寝るときに灯りを消すといい。おやすみ。」



「シンジ様……ありがとうございます。おやすみなさいませ。」



カレン一瞬何か言いたげにしていたが、笑顔で応えてくれた

さ、本当に疲れたし寝よう




不意に目が覚めるとまだ暗く夜中であろうことがわかる

喉が渇いたしトイレも行きたい

欠伸をしながらトイレのドアを開けるとメイドがいた


大事な事だからもう一度言おう、トイレにメイドがいた


うん、寝ぼけてるのかな?

目を擦りもう一度見てみると、真っ赤な顔をしたメイドがいる!?



「カレン、トイレ入るなら鍵かけなきゃダメだよ。」



俺は完全に目が覚めていたが、眠そうなフリをしながら、且つ、カレンが悪いんだよ?的なアピールを始めた


わかってる。大体こういったことは男が責められるんだってことは、でも俺は悪くない

知ってるよ。こんなことしても正座させられて殴られるパターンなんだろ?でも俺は悪くない

片目を擦るフリしながら今もガン見してるけれど、そう俺は悪くない


でもさ、考えてくれよ

若い娘さんの衝撃的なシーンを見ちゃってるのよ?(現在進行形)

俺にそんな性癖はないと思っていたが、まさか見ることに興奮を覚えるタイプだったとは…だが俺は悪くない



「俺もトイレ使いたいから終わったら言ってね。」



そしてそーっと扉を閉める


あれ?扉閉めたのにカレンが丸見えだな

これやっちゃったってやつ?



「きゃムグゥ!?」



何を思ったのか俺は叫び声を出そうとしたカレンの口を手で塞いだ

なにやっちゃってんの俺!?やばいって犯罪まっしぐらだってばよ!


だって涙目でこっちを見上げてるのよ?


……何か興奮してきたな


いかんいかん、そうじゃないだろ!



「ごめん、気が動転して閉めてしまった。今出ていくから!」



ガッと腕を掴まれた



「な、なにかな?」



「…ずっと見てました。…私がしているところずっと見てましたよね!」



「すまん!わざとじゃないんだ!言い訳をさせてもらえないだろうか?」



「……聞きましょう。」



やばい、カレンの目のハイライト消えてる



「入ってると思わなくて寝ぼけてたからそのまま入っちゃったんだよ。」



「私は見たか聞いているんです!」



「み、見た。出てるところをまじまじと見させていただいた。ごちそうさまです!」



「何がごちそうさまですか!ちゃんとしっかりとがっつり見ていたんじゃないですか!うわーん」



あかん、マジ泣きされてしまった

流石に俺が悪い、真摯に謝ろう



「カレン本当にごめん。俺が悪い。何でもするから許してくれないだろうか。」



何でもするの時点でカレンの目がギラっと光った



「シンジ様。何でもするっておっしゃいましたね?…ふふふ。」



とても嫌な予感しかしないが、完全に俺のミスなので受け入れよう



「あ、ああ。男に二言はない!」



「うふふ。何にいたしましょうかねぇ。」



というか、カレンちゃんさ

トイレしたままだからまだ下着を身に着けてないんだけれども?

なにこれ?エンドレスゲーム?

終わらない罪と罰?



「決めました。シンジ様トイレが済みましたらご自分のベッドにお戻りください。後程そちらで刑を執行します♪」



「は、はい。わっかりました!」



淫靡な笑みを浮かべたままカレンは出て行った

いや、だから下着履こうよ!


そしてどうなっちゃうの俺?


_____________________________________


カレン視点


あの方は笑顔で車に乗せてくださり、お嬢様をリューズまで連れていってくださると約束してくださいました。

顔はタイプなのですが車も含めてどこか怪しげな雰囲気を持った方だなといった印象でした。


真っ黒な髪、真っ黒な瞳。


ローグナー公国では見かけることのない色をお持ちの方。


ミステリアスとでも言うのでしょうか?

今日出会ったばかりですが、お話は面白くどんどんかれていきました。


あれ?何でそう思ったのでしょうか?

飲み物とお食事を頂いたあとぐらいからでしょうか?

その前後で印象が変わった気がします?

なんでしょう、余り深く考えられないようです。


とにかくそんなあの方に声を掛けられる度に顔が赤くなっているのがわかります。

私こんなに純情だったでしょうか。


ニーズ村に到着し村長とお嬢様のお話のあと、村長は屋敷に部屋を用意下さっていた。

だけれども私とお嬢様はあの方の車で休みたかったので村長にお断りを入れ車へと戻っていきました。


またしても彼は笑顔で迎えてくださった。

彼を見ていると胸の奥が幸せな気持ちになってきます。


お嬢様がシャワーをお使いのとき彼が優し気にお気遣いくださいました。

彼がベッドに行かれるとき私は添い寝してしまいたくて伝えようと思いましたが、お嬢様のお世話がありますので諦めました。


が。


シンジ様に見られてしまいました。


凄く恥ずかしかったのですが同時に嬉しさともっと見てもらいたい気持ちにもなりました。


彼の困ったような顔、それでいて性的な目で見られていることに喜びを感じましたが、気持ちをごまかすように彼を責めることにしました。


何でもするから許してくれないだろうか


その一言に閃きました。


一度寝室に戻り着替えてまいりましょう。


ふふふ、シンジ様待っていてくださいね。

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