第3話 引きこもりたいゴブリンの引きこもれない気付き
寝る子は育つって言うし、特訓を始める前に寝てみることにしました、栄人さんです。
出来るだけ質のいい睡眠を取りたいなーと思っていたのですが材料も行動力も皆無であった為ゴツゴツした岩をベッドに寝ることになりました。無念。
こんなゴツゴツしたところで何となく寝れそうだなと思えるあたりゴブリンだなあと思います。
それではお休みなさい。
◇◆◇◆
起きてから、前までは寝起きが悪かった―――早起きするようになってからはかなりましになったところはあるがそれでも朝が苦手だったということに変わりはなかった―――が、割とスッキリ起きられたので寝起きがかなり良い性質なのであろうこの身体にまたもや感謝する。前までは、といっても数時間前の話なのだが。
まあその部分が解消されたのは身体が人間の頃と違うのだと実感させる毒でもあるが、早く強くなる、という目的に関して言えば時間を無駄にせずに済むので良いことだ。
さて、特訓を開始するとは言ったが、何をすれば良いのか分からないな。
まあ腕立て伏せとかそんなのやればいいかな?
ではでは、うつ伏せになって、姿勢を正して―――あ。
やばい、これやばい。今までの計画全て無に帰す欠陥を見つけてしまったかもしれない。
生物としての三大欲求のうちの一つだとか、それを研究するためだったらいのちも惜しまないだとか、そんな熱狂的なファンも多く抱える、それをしなければ大抵の生物は生きていけないもの。
それは、食事。
自分で作っていたとはいえ、それもカップラーメンやレトルトカレーに毛が生えた程度のもので、コンビニやスーパーなどに行けばすぐに食料を調達でき、ほぼそのまま食べていたことから忘れていた。
俺、食料持ってなかったわ。
◇◆◇◆
さて、どうしたものか。
いきなり課題にぶち当たったぞ?
この身体に食事が必要なのか、という点はまだ不明なわけだが、人型なんだし要るだろう。
まあダンジョン内に溢れている魔素を食って生きている、とかそんなんなら助かる可能性もなきにしもあらずだが、人間を問答無用でモンスターにして来た時点でこの世界に対する楽観的な態度はやめるべきだ。
つまり俺は俺が生きていく為に食事が必要だと仮定して行動するってことだ。
ならば、どうしたらいい?
狩りに出る、か?
しかし、それをやってしまうと本末転倒ってやつだ。外に出るための準備をするために外に出るとか。
ゲームでキャラを進化させる素材を集める為に進化後の素材が必要、とか言ってるようなもんだ。そして頭痛が痛いと言っているような…いや、これは違うか。
まあいい、とにかく狩りに出るのは最終手段だ。
しかし、他に何か食いつなぐ為の手段があるのかと問われれば……無い、と言わざるを得ない。
ここはやはり初期セット的なもので食料でも貰えて祈ったら出て来る、なんて救済に期待したいところだが、俺の例は特殊ケースだろうからな。
それも与えられていた選択する権利がある時間を無駄に過ごした、なんて状況だから自業自得だと言ったふうになるだろう。
しかしそれでも試さずにはいられないのが人の性。
神様、いるのか分からないけど神様。食料下さい。マジで一ヶ月───いや、それは欲張り過ぎか。一週間、なんなら三日分でもいいんで食料下さい。本当困ってるんすよ。
そんなことをできるだけ神様に届けと思いながら脳内に露出させるが何も反応は無い。
まあ当然か。あそこで種族を普通のものにしていたらどこにも転移しなかったんだろうし。いや猫の獣人だったらマタタビの近くに転移させられたりするのかも知れないけど。
何てったって生存に適した場所に転移させるとかそんなこと言ってた気がするからな、マタタビが無いと死んじゃうかも知れないし───んん? 俺今何て言った? ああ間違えた、世界アナウンスは何と言った?
(生存に適した場所に転移、て言ってたよな?)
うん、確かそうだった。一言一句違えていない、とまでは言えないが、───俺は成績は常に底辺に位置していたし───大身体のニュアンスとしては合っているだろう。
だったら、ゴブリンでも生きられる場所に転移させられたんじゃないか?
……うん、その可能性もあるかもしれない。
まあ全てのモンスターがダンジョンの中の謎エネルギーが無いと死んじゃう病にかかってるからモンスターとして最低限生きられるだけの環境に転移させられた説もあるが、それは一旦置いておいて。
出てみる、か?
かなりの緊張感を伴うが、それをやるのが一番目的に近く、希望が見えたならやるべきだ。ついでに言うとどれだけ緊張しても胃薬は無いんだから胃が死ぬだけなので緊張も捨てておこう。
地味に胃が痛くなって胃薬を飲むのも大人になったら経験してみたかったのだが、毒かもしれないし断念せねばなるまい。はあ口惜しい。
まあ飲まないのが健康とかにも良いんだろうけどさー。
やっぱり経験したことがないことを経験するって楽しいよね。実に素晴らしいよね。
あ、それを言ったらゴブリンの身体ってのも中々素晴らしいということになるのではないか?
まあいいや、兎に角行くか行かないか、逝くか逝かないかだが、これは行くことにしよう。
まず食料は欲しいし、自分の実力も測って見たい。身体能力とかについてはもう測ったけどそれ以外の、例えばゴブリンではあるが頭脳が人間ということにどれだけアドバンテージを見出だせるのか、とか。
まあそんなわけで外に出ることにした俺ですが、まずそれでも最低限の準備はしておきたい。少しだけなら空腹問題もなく特訓できると思うし腹が減って戦が出来ない状態になる前にやめるぐらいになんの効果が出るか分からないが───というか十中八九実感出来るような効果なんて出ないだろうが───、特訓もとい事前準備しておこう。
やれることはやる、それが俺のモットーだしな。
………だったら勉強しとけよってのは置いておく。
◇◆◇◆
さて、あれから大分特訓してみた俺ですが。
いやー、見事に効果が分からないね!
この世界は数時間(体感なのでもっと長いかもしれないし短いかもしれない)如きの努力で強くなれるほど甘くないらしい。最初の方はもっと必要経験値少なくしてくれてもいいと思うのだが。
……え? なんの運動したのかって?
まあ、なにしろ俺はインドア派のぼっちだったのでそんなに身体を鍛える方法とかには詳しかったりしないわけですよ。
つまり身体を鍛えるとかそんなの走る以外はちょっと考えないとわかんなんすよ。
となると、この狭い、と言ったらあれだが確実に走れるほど広くはない場所での運動方法なんて殆どわかんないんだよね。
つまり、あまり効率よくは強くなれてないと思うのだよ。
だからどこかでそういうのに詳しい人とかに話聞いたり本で学んだりとかしたいなーーと思うわけなんだが、それにはなれるか分からないが可能性はあると思う人の言葉を話せるような高位のゴブリンに進化しなければならないというジレンマ。
ようは他の効率よく強くなれる人より時間をかけないと俺はそれと同じまで強くなれないというわけだ。まあ時間はもう生活とか考える必要が無い分普通の人より多くとれるんだからそこでつり合いは取れてるんだろうが。
で、肝心のなんの運動をしてたかってとこだけど、そこは定番のひたすら正拳突きとかキックとかだね。
サマーソルト的なの(ただ脚蹴り上げてグルンって回っただけ)もやってみたら出来ちゃいました。多分やり方は違うけどゴブリン凄いっすわ。
いずれ出会うだろう他の人もまさかゴブリンがサマーソルトするとは思わないだろう。
俺は帰宅部の中でも屈指の体の硬さを誇る人間だったのでやはりゴブリン補正だろう。まさかゴブリンに臭い以外の補正があったとは。
というわけで多分見になってない特訓も終わったし、ダンジョン探索やりますか。
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