第3話

 そんな感じで今、私は略略お家で軟禁状態なのである。


「ふぅ。どうしたものからねぇ」


 私に取り憑いているこのパッシブさんがあらゆる危険から今も私を保護しているのは分かる。

 今も私を含めて半径1メーターの大気中の汚染物質を浄化している。

 お陰で私も周りもピッカピカである。


 けれど、このパッシブさん本当に自重しない。


 パッシブって受動的とか消極的意味合いよね?確か。

 もう少し存在意義と言うものを体現して頂きたい。


 誰彼構わず脅威判定が出たものに対して勝手に反射するせいで国王様にまで危害を加えるところだった。


 どうやら、相手の精神にもパッシブさんが感応するらしく、私に対する国王様の胡乱な視線を精神攻撃と判断したらしい。

 お陰で落ち落ち偉い人にも会えない。


 今の所、安心して過ごせるのは我が家の家族と使用人と孤児院の院長様と子供達位だろう。

 だいたい、パッシブスキルって何処の言語なんだろう?

 フランク王国どころか、この惑星ハルナにあるどの国でも聞いた事がない発音だ。

 私が知る限りではあるけれど。


「それでも何故か意味だけはわかるのよね」


 独りごちた言葉を発したはいいが、まあ、そんな事は今はどうだっていいのだ。


 このままでは何れは囲われ囚われの身になるのは予想に難くない。


 これは直ぐにでも対処しなくてはならない案件である事に気が付き冷や汗が出る。


「やばいよね。これは」


 独りごちていると扉が鳴り「アリスお嬢様宜しいでしょうか?」とメアリーの声が聞こえた。


「メアリー良いわよ」


 ガチャりと扉が開くとメアリーが「当主様が緊急家族会議を開かれるそうです。どうぞ此方へ」と促してきた。


 緊急家族会議ってなんじゃそら。


 初めて聞く会議名に頭に???を付けながらメアリーに着いていく。


 父様の執務室に通されると父様と母様、それにアレクもいる。


 私が入室するとメアリーも中に入り扉を閉めた。


 父様も母様も若干顔色が悪い。


「すまないアリス」


 と父様が一言目を語ると冷や汗がブワッと出た。


 これ不味い奴だと一瞬の内に判断し、ニッコリ笑う。

 パッシブさんは相変わらず場を浄化し続けている。


「何がでしょう」


「周りの圧力が激し過ぎてな、どうにも抑えきれなくなってきた。それでアリス、お前には2つしか選択権を押さえられなかった」


「は、はあ」


「1つは今年お生まれになった王太子との婚約だ」


「はあ。まあそれは予想の1つではありましたが流石に無いだろうと思いたかったですわね」


 いくら年の差婚が貴族の間でありふれていたとしても赤ん坊との結婚は勘弁して頂きたかったですわ。

 乙女の私に育てろとでも言うつもりなのかしら?


「そうか…それと後1つは星神ハルナ様の巫女アーシャ様の従者になる道だ。星巫女様の従者なればその旅路も困難があるだろうが…まあ何方も一長一短の善し悪しがあるがアリスはどうしたい?」


「……それは予想してませんでしたわね」


「苦肉の策とはいえ、選択肢が出来ただけマシかもしれんな。大きな力はより大きな権力の元で囲うしかないのだ。分かってくれ」


「はあ。……でしたら私は従者の道を選びますわ。その方がより自由が大きいでしょうし、貴族の役割を果たすのが私の運命だと思っておりましたが、別の道があるならば私は喜んでその選択を致しますわ」


「そうか、ならばその様に取り計らおう」


「よろしくお願いいたしますわ」


「うう、アリスちゃん」



 母様は私の選択に泣いていたが、私は思わずその場で雄叫びを上げたい程喜んでいた。

 何故なら、これで堅苦しい言葉遣いを使わなくても周りの目を気にしなくて済む。


 巫女様は同年代位であちこち旅をしていると聞いているし、砕けた感じのお友達になれるかも!


 そしてようやく私の引きこもり生活が終わりを迎える。



 うっしゃ!やったぜこんちくしょう!

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