第2話
その日も私は狼に襲われた。
そして、気付けば朝、寝台で目覚めるのだ。
何が起きているのか解らなかった。
けれど、その時の私は阿呆の子で何だか楽しくなってしまっていたのだ。
今考えるとあの一日を何度も繰り返していたのだと思う。
思い出せば、同じ鳥や虫を追いかけ同じ狼に襲われていたのだとわかる。
数えるのも億劫になるほど何日間も同じ繰り返しをしていたある日[オートスキップによりチュートリアルが強制終了しました。無戦闘によるチュートリアル達成により、称号:慈愛の女神を獲得しました。それによりレベルキャップが解放されましたした]と突然頭の中に響きギョっとしている内に目の前の景色が切り替わり私はまたしても自室の寝台にいた。
私はその日も抜け出し草原を駆け回っていたが今回は狼には出会う事無く、さりとて地図が帰り道を案内してくれるので、普通に歩いて帰った。
そして、帰ると凄く怒られた。
次の日、母様とお茶会をして沢山お喋りした。
その次の日には、父様が馬に乗せてくれて遠乗りをした。
最終日、帰り道の途中で綺麗な湖を馬車で横切りそれを見て両親と一緒にはしゃいだ。
煌めく湖畔と水鳥の渡りを夕暮れのソレイユが照らしだしていた。
その情景は今も私の思い出にハッキリと残っている。
久しぶりに家族と過ごした貴重な思い出だ。
そう。久しぶりだったのだ。
自宅に戻ると次の日から、両親はまた出掛けていった。
私は、また一人になった。
その日から、また執事のアレクに令嬢としての教養をつける為の勉学や礼儀、踊りの練習に護身術の訓練等々…。
だけど、その日はいつも通りの毎日なのにいつもと違って遣ることなすこと調子が良い。
学んだ事が直ぐに理解出来るし、実践出来る。
これにはアレクもメアリーも驚いていて、数日後には数名の家庭教師がつけられた。
私も直ぐに何でも理解し実践出来るのが楽しくて沢山の事をどんどん吸収していった。
数年の年月が過ぎ10才の頃には私は研究院過程で受講する問題でさえ難無く解ける様になり、またその過程で必須となるあらゆる語学、座学を会得していった。
のみならず護身格闘術に暗器術(これは手品を修得していたら身に付いた)を修得し剣術もこの国のフランク王国剣術免許皆伝を頂いた。
頂いたけれども、使う機会が訪れた事は14才になった現在でも一切ない。
手品だけなら家の領の孤児院でよく披露しているが…。
そして、私の年齢ならば家の為の政略結婚の為に婚約者の一人でも宛てがわれる次期でもある。
しかし、その話はだいぶ難航しているようだ。
話は3年程前に戻るが、その日、母様が病に倒れた。
医者が匙を投げた案件だった。
私は毎日見舞いに通ったが、日に日に弱っていく母様に何も出来なかった。
今夜が峠だと伝えられたその日、私は寝台の上の母様の手を握って願った。
「どうか神様!母様を助けて下さい!お願いします!私、何でもするから!」と。
その叫びを聞いて皆泣いていた。
父様も泣いていた。
私も泣いた。
泣きながら願った。そう願ってしまった。
[依代からの要請確認。受諾。称号:慈愛の女神がスキルとしてパッシブスキルに追加されました。オートスタート]
頭の中で響く声。
私と母様が虹色に光り輝き母様が癒されていくのを感じとる。
光が収まると母様が瞳を明け起き上がる。
皆、奇跡だ!と泣いて喜んでいた。
けれど、その日を境に私は病気や怪我人、果ては過去に戦争や獣に奪われた手足さえも相手に触れただけで癒してしまう身体になってしまった。
お陰で国王様より聖女認定されてしまった。
そして、あちらこちらの教会が私を取り込もうとして動き出し、仕舞いには私を女神として祭り上げる人々まで出る始末。
そして、聖女と婚姻して格を上げようとする貴族達が暗躍し始めた。
父様は伯爵位なので下位の貴族からの打診は公には無いもののそれ以外からは山ほど来てるらしい。
中には今年産まれた王子の相手はどうかと言う話も来ているとか無いとか。
……本当にありがとうございました。
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