パッシブさんが止まらない。
no.name
第1話
私には何かが憑いてる。
そう認識したのは、4才の夏。
私は家族と一緒に避暑の為、別荘の有るとある高原に遊びに来ていた。
両親は今思えば結構無理をして連れ出してくれていたのだろう。
別荘地にまで仕事を持ち込んでいて中々一緒に遊んではくれなかった。
なので、私は1人で野原を駆け回ったり興味の惹かれる虫や鳥などを追いかけながら、はしゃいでいた。
今思い出しても、あの頃の私はやんちゃと言うかお転婆と言うか、いつもと違う景色に浮かれていたのがわかる。
その日も両親はやりかけの仕事をこなす為に部屋に籠りっていった。
じいじ…執事のアレクに遊びに行くなら庭からは出ないようにと言われていたのに、私は家政婦達の目を盗んで敷地外に駆け出していた。
その後に何が起きたかはお察しだろう。
気付けば私は迷子になっていた。
辺りが夕暮れ時の様相を呈してきた時、林の中からグルルと低い唸り声が響く。
目の前に大きな狼が現れ、突然私に牙を剥いたのだ。
私は咄嗟に叫び声を上げ身を屈めた。
その時だった。
頭の中で[エマージェンシー。依代からの救援要請確認。パッシブスキルオートスタート]と謎な声が聞こえた。
直後、耳元でキャイーンと叫び声を残して狼は森へ帰っていった。
目を瞑っていたので、その時に何が起こったのか分からなかったが、私は兎に角助かった事に気が緩んだのか腰が抜けてその場で座り込んでしまった。
その後、疲れからかその場でいつの間にか眠りに落ちていた。
今考えると、野生動物のいる場所で眠るとかありえないほどの危険な行為だったが、気付けば私は別荘に用意されていた寝台で目が覚めたのだった。
その日から私の目の前には画面が表れ[ナントカプログラムを更新しました]とか[ナントカカントカをリフレクトしました]等よく分からない言葉の文章が書かれては上に上がっていく謎日記?と近くと遠くの地図が目の前に浮き上がり、近くの地図には何処に誰が居るのかが、表記されて分かる様になっていた。
今思えば昔から何処に誰がいるのか何となく分かる感覚はあって、それがハッキリと目で確認出来るようになったのかな?とも思う。
その日もいつも通りに家政婦のメアリーが来て、着替えを手伝ってもらい、朝食を両親と食べた。
昨日の事は誰も何も言わなかった。
私は幼いなりに叱られないなら好機と思い、アレクに庭から出ないように言われたのに、また皆の目を盗んで抜け出しのだった。
我ながら何も学ばない阿呆の子か!とあの頃の自分を殴りたい。
しかし、この好奇心と行動力があったからこそ今の自分が居るのかと思うと何とも言えない。
モヤモヤはするけれど。
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