第554話 ダークエルフは不器用
時間を見つけて、本日はダークエルフの里へと足を伸ばしていた。
「うん、この辺は大分いい感じだね」
「ですね」
同行者はダークエルフのシエルだ。
ダークエルフの族長やシエルの両親と挨拶をして、ついでに里の人とも軽く交流してから俺とシエルはダークエルフの里の近くの森を見回っていた。
里の結界も強化しており、色々と仕掛けもあるので問題ないことは分かっているが気分転換の散歩がてらこうして二人で回っている。
「里の近くは本当に平和になりましたね」
「確かにね。皆頑張ってるし良かったよ」
「一番の功労者はシリウス殿なんですよ」
「んー、功労者って呼ばれるほどのことはしてないんだけどねー」
里を救ったとか感謝されるのは悪い気はしないけど、俺は原因を排除しただけなのでその後のダークエルフの頑張りがなければ今の平和もなかっただろう。
「シリウス殿らしいですね」
そんな俺の考えを分かってるようにくすりと笑うシエル。
婚約者になってから、なんだかこうしたふとした時の柔らかい表情を前よりも見てる気がする。
それだけ心を許してくれてるのだと思うと嬉しいものだ。
「父上もお祖父様もシリウス殿にもっとお礼がしたいと思ってるみたいですね」
「そうみたいだね」
まあ、それ以上に最近はシエルの両親からの孫への期待が大きくなってる気もするが……そっちは時期が来たらということで。
こんなんでもまだ成人前だしね。
新婚を楽しんでからゆっくりと子供を授かるように頑張ればいいだろう。
「強いていえば、シエルと出会えて、こんな関係になれたことが一番のお礼なんだけどね」
「そ、それは流石に釣り合ってないような気がしますが……私も、シリウス殿と出会えたことが何よりも幸せです。出会いは少しお恥ずかしい所をお見せしましたが……」
そういえば、お腹空かせてる所を出会ったんだっけ。
里を救うために外への助力を求めて一人過酷な道を進んでいたんだし、その程度恥ずかしいに入らない気もするが……。
「凄く美味しそうに食べてくれたから俺としては悪くない出会い方だったけどね」
「その言い方は……意地悪です」
「ごめんごめん。でも美味しそうに食べてくれるシエルを見るのが好きなのは事実だからね」
恥ずかしそうにちょっと拗ねるシエルを宥めて本心をサラッと言うと、恥ずかしそうに視線を逸らされる。
案外、距離が近いと感情を隠すのが下手なんだよね。
まあ、そういう所も可愛いんだけど。
そんな風に散歩デートを楽しむのだった。
それにしても、ダークエルフの里の方も色々あって面白いね。
シエルの里帰りも兼ねてのものだけど、俺としてもこうして色々な意味で楽しめるので有意義なお出掛けです。
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