第552話 秘密の実験

「うん、いい感じだね」


壁を軽く叩いてその出来に少し満足。


屋敷の地下、優先して作っていた白の部屋よりも先に出来たのは新しい俺専用の実験場だった。


女神様と会える白の部屋の方も順調なのでそのうち完成するのだが、それより先にこちらが出来たのは……まあ、言ってしまえば偶然であり気まぐれだ。


前々から、小規模の実験場は用意してあったしそれとなく使っていたのだが、たまに物足りなく感じていたという事実もあった。


空いた時間で作ってみたら予想以上に捗って、材料もいい感じに手に入ったのでハイペースで出来上がったのだが、それにしても中々いい感じだ。


「これならそこそこ色々やれそうだ」


実験といっても、ヤバい兵器とか薬の実験というよりは、新しい魔法や大型の魔道具の実験なんかがメインとなる。


ヤバい兵器とか薬も作れないこともないけど……やるにしてもいくらこの場所が頑丈でも流石にね。


俺にとって最高の安らぎ場所である屋敷でやるのは抵抗があるしね。


入れる人間も限られるようにしてあるけど、いざと言う時……まあ、予期せぬ災害とか迷惑極まりない神災とかの時は避難壕としても役立つと思うと作ってもそれ程損もないだろう。


「そのうちシェルター用の設備も作らないとね」


実験場としての意味では完成だが、避難壕となった時の意味合いではまだ不完全な部分もある。


そちらはおいおいとして、ひとまずは試したかったことを順にやっていく。


無論、色々と保険をかけることは忘れない。


うっかりこの部屋の強度を貫通するような魔法や魔道具を使っても大丈夫なように結界系も何十にも張っておく。


我ながらそんな初歩的なミスはしないとは思うが……うっかりは人間なら誰にでもある。


まあ、虎太郎に前にそんな事を言ったら『坊主は当てはまらんだろ』とか言ってたけど、あれは俺が人間という枠組みから弾かれてると暗に言われたのだろうか?


うん、気にしたら負けだな。


確かに多少人と呼ぶには物騒なものが備わりすぎてるけど、心は人間だから。


そんな事を自分に言い聞かせながら、新しく思いついた魔法を試していく。


ふむふむ、これは使えそうだな。この魔法は……外でやったら対象への効果よりも周りへの被害がエグくなりそうだな、没で。


そんな風にいくつか試してから、実験場の強度に満足して最後に少し――これまで以上に色々と結界やら防護用の術で実験場を覆ってからそれとなく本命の実験もしたが……うん、流石に0.1秒でもやばくなりそうだし本命はやはり妖精女王に場所を借りてやるべきかと結論を出した。


来るべきあの悪神との戦いのために色々と試したいが……流石に世界や屋敷を壊してまでやるのは本末転倒だしね。


そちらは諦めて、軽い実験をしてから避難壕用として色々と備蓄やらをしておく。


災害くらいなら領地の結界で何とでもなるけど、慢心も良くないし不足の自体は起きてしまうものだから念には念をを忘れてはダメだよね。


備えあれば憂いなしって言うしね。

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