第550話 運命の二人(出会い)

『転移魔法すご!本当に一瞬なんだね』


メナを連れて領地に転移すると、転移の魔法に凄くはしゃいでから、メナは領地に目を輝かせる。


『才蔵、来れる?』

『すぐに』


領地の紹介をしながら、魔法で才蔵に連絡を取ると、才蔵はすぐに俺の前に姿を表した。


「お呼びですか?」

「ちょっとね。お客さんの案内を頼もうかと思ってね」

「お客さんですか?」

「うん、メナ。ここからは俺の隠密隊長に案内を任せようと思う。才蔵だよ」


そう言って紹介すると、メナは才蔵を見て――時が止まったような顔をする。


それは才蔵も一緒だったようで、吸い込まれるようにメナに視線が釘付けになる。


見たことあるやつだ。互いしか見えない程に何かを感じ取ってしまうやつ。


「初めまして。メナと申します」


そうしてしばらく見つめあってから……メナは初めて人語で才蔵に挨拶をする。


挨拶だけではあるが、かなり慣れてる感じの言葉なので二人にしても問題ないかな?


「……才蔵と申します。我が主の命により貴女をエスコートさせて頂きたいのですが……よろしいでしょうか?」

「是非お願いします!」


それとなく差し出した才蔵の手を、物凄く前のめりで掴むメナ。


そんなメナの様子に驚きつつも、優しい顔つきになった才蔵は笑って「では、案内をさせて頂きます」と俺に黙礼してから二人で歩き出す。


……どうしよう、思った以上に噛み合いすぎてたようだ。


「才蔵が路地裏で襲われたり、個室に連れ込まれないように見張るべきかな?」

「流石にそこまでは……いえ、あの子ならしそうね」

「まあ、大丈夫じゃない?メナさんも最初は絶対あざとくいきそうだし。既成事実はそのうち作りそうだけど」

「……帰り、ますか?」

「そうだね、帰ろうか」


二人を見届けてから、ソルテの言葉で屋敷に帰ることに。


才蔵にメナの案内を任せたし、宿の方もラナに加護の繋がりを介して頼んで用意はしておいた。


茜が弟のお相手が決まるかもと楽しそうに加護の繋がりを介して早速実況してくれてるし、屋敷でも楽しめそうだ。


上手くいくのかは二人次第というところだが、二人の好みにドンピシャで運命的なものも感じてるようだし、後はなるがままなるだろう。


しかし、出先でスフィアの友人に会えるとは、面白い日だったな。


四人でのお出かけも楽しかったけど、最後に若い二人(?)の出会いを見られたのも中々良かった。


なるほど、お見合いおじさんやお見合いおばさんは紹介した時にこんな気持ちになるのかとアホなことを考えながら、茜の実況を屋敷に帰って皆で聞くことに。


途中からはまあ、飽きたというかプライバシーを尊重して普通の生活に戻ったが、翌日にスフィアに『運命の人に会えた!ありがとう!』とメナから連絡があったようで上手くはいったようだ。


良かった良かった。

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