第546話 スイーツと共に

色々と回ってから、時間的にもおやつ時となったので休憩がてら新しく出来た店でおやつタイム。


確か、この店はラナと母様の系列店のはずだが……ラナがしれっと母様と組んで色々やってるのは今更なので気にしない。


本来は未来の嫁姑という間柄になるのだろうが、商才豊かな二人が組むのは必然だったのだろう。


一時的なコラボなのか、これから先も組むようになるのかは分からないが、俺としては楽しそうな二人の姿を見るのは悪くない。


それぞれの店以外にこうして店を出して儲かってるようだしそれも良い事だろう。


それにしても母様が姑か……なんかやっぱり違和感が凄い。


義姉様達や義兄様達から見たら自然なポジションなはずだけど、母様自体の若々しさがそれらを不思議たらしめてるような気もするが、我が姪ティファニー達から見たら母様が祖母という事実よりはわかる気もする。


『このタルト、屋敷で食べたのよりは少し硬いけど美味しいねー』

『お茶も丁寧に淹れられてますね』


色々と頼んでみると、知ってるメニューを違う料理人が手を加えたのがよく分かって楽しい。


場所補正なのか、俺が用意する素材の鮮度か、はたまたま自惚れなければ腕なのか。


屋敷では身内……特に食べさせたい相手に愛情込めて作ってるのでそれの差かもしれないが、セリアもソルテも美味しそうに食べていた。


『少し割高だけど、王都で住んでて食べにくるならいいわね』


スフィアも美味しそうに食べているが、ふと口元にクリームが付いてるのに気がつく。


スフィアはたまに抜けてるところもあるからなぁ。


「スフィア」

「えっ……」


そっと頬に手を当てるとスフィアが固まる。


そんで、『ちょ、人前で……』とか『嫌じゃないけど……』とか視線をさ迷わせてるので、勘違いをさせてしまったと思いつつも可愛い様子を眺めてから口元のクリームを指で掬って取る。


「あ、クリームか……」


ホッとしたようなちょっと残念そうなスフィア。


「シリウスくん!私も私も!」

『……!わ、私も……!』


それを見ていてわざとクリームを付けて自分もと言ってくるセリアと、食べ物を粗末にするのに躊躇しつつも僅かに皿からはみ出てた部分で妥協してみせたソルテ。


可愛いのでわざとでもちゃんと取ってあげる。


「もう、本当に二人とも仕方ないんだから」


そんな二人の様子に俺と一緒につい笑ってしまうスフィア。


賑やかで楽しい時間をそうして堪能してる時だった。


『その声……もしかしてスフィア!』


この三人以外から久しぶりに聞くエルフ語でそんな言葉が聞こえてくる。


視線を向けると、今店に入ってきたばかりとおもしきフードを深く被った客から聞こえてきたのだと気がつく。

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