第545話 それぞれの好み

デートで行く場所はその人の個性が出る。


自論だけど、俺の婚約者達の場合それは明白だ。


「じゃじゃーん!どうどうシリウスくん?似合う?」

「うん、いいね。大人っぽい感じで似合ってるよ」

「でしょでしょー!じゃあ、今度は違うの着てみるね!」


服屋で一番はしゃぐのはセリアだ。


生前(というか生まれ変わる前)は、体が弱くベッドでの生活も多かったので、オシャレというものが楽しくて仕方ないらしい。


俺としても目の保養になるし、少し服には消極気味な姉のスフィアを着飾ったり、ソルテと一緒に楽しそうに相談してる姿は微笑ましい。


「うーん。この価格でこの機能かぁ……シリウス、どう思う?」

「割高だけど、買っておいて損はなさそうかな。使い道もあるし」

「流石ね。じゃあ、これらは買いね」


魔道具を扱ってる店で活き活きしてるのはスフィアだ。


オシャレへの興味が程々な代わりというべきか、魔法や魔道具関連については特にいい反応をする。


スレインドの王都の魔道具店はいくつかあるけど、この店は比較的新しく出来たばかりでまだ来たことがなかったのもあって楽しそうだ。


『ご主人様。こちらはどうでしょうか?』

『うん、いい香りだ。ソルテが淹れたら美味しくなるね』

『ありがとうございます。では、買っておきますね』


そして、ソルテは比較的どんなお店でも楽しそうだが、俺の身の回りのものを扱う店で特にウキウキしてる傾向にある。


今日来たのは茶葉を扱う店だったが、最近入荷したばかりという品を見せてもらって買うことに。


お世辞でもなんでもなく、ソルテ達が淹れたお茶ならなんでも好きだが、最近はソルテの腕も上がってきて、フィリアやセシルに届きつつあるのでこの茶葉もさぞ美味しくなるのだろうと楽しみだ。


『ねえねえ、ソルテ。私もシリウスくんにお茶出したいんだけどオススメある?』

『それならこちらはどうでしょうか?』

『あ、屋敷でたまに見るやつだ!』


流石ソルテ。


比較的淹れやすいお茶をすぐにチョイスしたな。


セリアのお茶は少し特殊だけど、俺を思って苦手なのに淹れてくれる心が嬉しいので、執務の合間にでも出てきそうで楽しみだ。


「シリウスって、本当に私達には甘いわよね」

「そう?」

「……まあ、そんな所も好きなんだけど」


そう頬を赤らめつつ視線を逸らして言われると俺も照れてしまうが、皆が物欲が無さすぎるのもあると思う。


各々の境遇や性格も相まって、欲しがることが少ないのでこういう機会に色々してあげたいのもある。


まあ、もちろん湯水のようにお金を使うのは良くないし、それを永遠に繰り返しても枯渇しないくらいには資産もヤバくなってきてるが……何事も程々が良いだろう。


それはそれとして、プレゼントしたい時やさりげなく欲しいものがあるけど言わない時はしれっとプレゼントしたりもする。


たまの贅沢、日頃の感謝や俺からの贈り物送りたい欲もたまになら問題ないよね。

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