第543話 狼たちの様子

先日保護した、ジュエルウルフの親子……親狼ボタンと子狼アンコを領地に連れてってみた。


慣らしのためだったが、見知らぬ場所に大興奮なアンコと屋敷の中でそんなアンコを連れ戻しつつ堂々と休んでいたボタンを見て大丈夫そうだと確信できた。


元々、気性が荒い子達ではないのでそれ程心配もしてなかっが、見知らぬ場所に慣れるまでは多少時間が必要かなぁと思っていたのだが、この様子だとそれ程必要なさそうだ。


アンコはまあ、知らない場所、新しい場所で楽しそうなのは勿論だけど、ボタンも領地や屋敷の俺の臭いや俺の力の働きを感じ取って、ここが安全だと分かったのか落ち着いたものだ。


「可愛いですね」


フィリア達にも合わせて見たが、アンコが非常に人懐っこく、じゃれる度に微笑ましい光景が見れた。


ボタンの方も、フィリア達が俺の大切な人だと分かったようで撫でてくる手をすぐに受け入れていた。


頭は少し嫌がってたが、それもそのうち許しそうな勢いだ。


アンコはまだ生まれてそんなに経ってないので、力加減が難しいかなぁと思っていたが、はしゃいでいても自然と甘噛みで抑えている辺、本当に賢い子だ。


そうしてはしゃぐアンコを可愛がる婚約者達を眺めていると、ふとボタンに近づく影が。


「こ、こんにちは!私はクーデリンと言います!」


獣人族のクーデリンだった。


そういえば、獣人族は同じ系統の生き物なら会話が可能だったなぁと思い出してると、クーデリンとボタンがしばらく話してから仲良くなっていた。


……主に俺の話で。


「やっぱりシリウス様が助けてくださったんですか?」

「お子さんが生まれたてで……大変でしたね」

「はい!シリウス様は本当に素敵です」


……ボタンの方の答え方が短いので、クーデリンの言葉がクリアに聞こえてしまう。


仲良くなるのは嬉しいけど、俺の話で盛り上がってるのは照れるので出来ればここでは止めてほしい。


とはいえ、止めないけど。


あれだけ楽しそうならクーデリンとしても無意識に話してるだろうし、それに後でクーデリンを少しいじろうと俺と同じように見守ってるセシルやセリア達も居るのでその辺はそちらに任せる。


しかし、本当にクーデリンも屋敷に馴染んだよなぁ。


まあ、割と初期からだけど。


何にしても、ボタンもアンコも屋敷での生活は問題なさそうだし、予定よりも早く、ある程度慣らし期間を経てから住まわせることにするか。


領地の方にも後日、軽く連れ出したがそちらでも問題なさそうだったのは流石と言うべきか。


アンコが人の量に大興奮で、ボタンが大変そうだったので連れ出すのはもう少し先の方が良さそうだが……にしてもヤンチャな子で微笑ましいものだ。


そういえば、領地の名産である白銀桃をそれとなく食事に出すと、ボタンが物凄い勢いで食べていた。


尻尾を凄く揺らして美味しそうに食べており、物凄く気に入ったのだろう。


可愛いものだ。

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