第541話 シャカシャカ美味チキン

学園祭に向けて、生徒たちが更に熱気を帯びてきてる中。


俺は一人、とある山の山頂で実験をしていた。


「うん、この強度の紙なら問題ないかな」


昔、散歩中に見つけた紙にするのにかなり良い木があったのでそれを加工して作った紙と、揚げたてのチキン。


そして、チーズベースの粉とスパイス系ベースの粉のそれぞれの味付け。


それらを使ってやる事は一つ。


「さて、じゃあやりますか」


丁寧に折った紙の中にチキンとスパイス系の粉を入れると軽く封をしてシャカシャカと振ってみる。


うんうん、悪くないねこの音は。


強すぎず、弱すぎない力で均等になるように……なんて気遣いはそれ程考えず、最初なので素人っぽさを前面に出して振る。


約10秒ほどしてから、程よく楽しんでそっと開けると……スパイス系の粉が混じったチキンの香ばしい香りが広がる。


絶対美味いやつだと分かるそれを一口。


「うん、いいね。美味しい」


ピリッとしたスパイス系の粉とチキンの組み合わせは反則的だった。


欠点をあげるとすれば、最初に入れた粉が若干固まっていたりしたので味にムラがある所だろうか?


まあ、それも振って楽しむ醍醐味なので問題ないだろう。


続けて、チーズベースの粉をチキンと一緒にシャカシャカする。


こちらも素人っぽさを出すために程よく混ぜてから一口。


チーズとチキンの相性もまたいい。


「これなら出せそうだけど……さて、どうしたものかな」


普通にメニューとして出すとすれば、紙を加工するためにまた魔道具を作る必要がある。


それ程大した手間でもないが……わざわざ仕事を増やす必要があるかと言われるとないだろう。


今ある現行の紙を使えば手間もそれほどかからないだろうが、手触りや強度を考えると俺が作った物の方が良い。


シャカシャカしてる途中で破れても困るし、チキンを食べた時に油の染み込んだ紙が一緒に口に入るのも困る。


食べるなら美味しく食べたいしね。


一緒に混ぜる粉の方も、材料費を考えると気軽に出すにはグレードを落とす必要も出てくるか。


「まあ、いいか。それとなく出してみよ」


婚約者達や家族の反応次第だけど、それとなく学園祭の模擬店に出して『伝説の料理だ!』みたいな感じのサプライズがあれば楽しいだろうしそうしよう。


他の模擬店を食わない程度にやる必要はあるだろうが、そこのさじ加減を間違えるようなヘマはしないし、問題なし。


しかし、作ってみてなんだけど……この粉美味すぎるな。


中毒とかそういうのはないだろうけど、ハマる人はヤバそうなのでもう少しスパイスの成分とか調整しておくべきか?


うん、とりあえずは皆の反応を見てからだな。


そう思いながらもう2、3回ほどシャカシャカして楽しむのだった。

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