第540話 密偵?

生徒会長やナトリとは後日、軽い打ち上げみたいなのをすることにして、その前にその日の帰りはフィリア達と軽く寄り道。


「セシル、シャルティア。演奏どうだった?」

「シリウス様もフィリア様も素晴らしかったです!」

「……ばっちり」


シャルティアの心から言ってそうな感想と、セシルの短い謎の達成感のある言葉がなんともアンバランスだが、悪くはなかったのだろう。


「……演奏も二人の勇士もばっちり撮っておいたから、後で楽しめる」


なるほど、ばっちりの中にはそんな意味も含まれていたのか。


カメラやビデオカメラのような魔道具を俺は試作で作っており、それは婚約者全員が使えるようになっている。


特に一番使ってるのは俺の写真を撮りまくってるハーフエルフのソルテだろうが、それにしてもわざわざ準備してきていたとは。


「自分の演奏を見返すのは少し恥ずかしいですね」


そう苦笑するフィリア。


「そう?かなり良かったと思うよ」

「……うん、フィリア様凄く良い音出てた」

「音楽は全く分かりませんが、素晴らしかったです!」

「あ、ありがとうございます……」


皆で褒めるとこそばゆそうに照れるフィリア。


凄く可愛いので思わずセシルに視線を向けると心得たとばかりにパシャリとフィリアを撮ってその後に俺にもレンズを向けてきてシャッターを切る。


「俺も撮る意味あった?」

「……ソルテへのお土産。それに、シリウス様が凄く優しい顔してたからシャッターチャンスだった」


よく分からないが、軽く見せて貰うと確かに割と自然な笑みをしてる気がした。


「……屋敷ではよく見るけど、外でのやつも価値がある」

「そんなものかな」

「……そんなもの」


よく分からないが、今世の俺が思ったより自然に笑えているというのは良い事なのだろう。


実際、大好きな人達相手なら自然とそうなるってるのかも。


前世では作った笑顔ばかりだったし、やっぱり自然な笑みが健康にはいいよね。


「セシルさん。後で演奏中のシリウス様の写真見せてください」

「……自信作ばかりだから、存分に見て。むっつりなシャルティア用は後で渡す」

「誰がむっつりだ!」

「……でも、シリウス様の写真欲しいでしょ?」

「そ、それは当然だが……むっつりではない!」


あれだね。生徒たちの声援も良かったけど、やっぱり俺は俺の好きな人たちのこういう姿を見る方がモチベーション的には良いのかもしれない。


そんな事を思いながら、後で演奏中のフィリアの動画や写真は凄く楽しみなのでワクワクでもあるのだが、帰ると俺以上に俺たちの演奏シーンにワクワクな人達が待ち構えていたのでそちらを優先したのは自然だよね。

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