第539話 音の繋がり
予定通りの週明け。
生徒たちが集まる講堂にて、デモンストレーションとでも言えそうな俺たちの即席バンド『オリジン』の演奏は行われた。
練習で完璧だろうと、本番も同じようにやるのは中々大変だ。
ましてや三日しか練習時間がなかった即席バンドだし、ミスも出るだろうと思っていたが、驚くほど演奏事態は上手くいった。
問題があるとすれば、乗りすぎた生徒会長が練習は一応したが本番では演奏しないと決めてボツにした曲をアンコールでもするようにやり出してしまったことだろうか。
特に、ナトリがかなり動揺しており、所々乱れそうになる演奏を支えるのが中々に大変だった。
フィリアの協力もあり、なんとか最後まで弾くことは出来たが……まさかこの人がノリでこんな事をするとは想定してなかった。
いや、確かに一件真面目そうで裏では悪戯好きななのは何となく察してたし、実際気分でやったと言われたら納得も出来るが……とりあえず打ち合わせに縛られる女ではないらしい。
嫌いじゃないけど、秀才ナトリとは相性悪そうだなぁと他人事のように思う俺も鬼畜だろうか?
演奏が終わると、生徒たちの大歓声が聞こえる。
特に生徒会長への声援が凄い。
『会長素敵ですー!』
『キャー!』
『踏んでくださいー!』
……うん、最後のはスルーしておこう。
人の癖は色々だしね。
『ナトリちゃーん!』
『結婚してくれー!』
ナトリへの声援は男が多めなようだ。
というかしれっとプロポーズされてちょっと照れてるのは少し可愛く見える。
『フィリアさまー!』
『最高です!』
良かった。
フィリアにラブコールとかあったら俺は自分を抑えられなかっただろうし、皆もそれを分かってるようで本当に良かった。
フィリアは控えめに手を振ってるが……そんな姿も可愛すぎて大好きだ。
『シリウス様ー!』
『カッコイイですー!』
おっと、俺へのコールもあるのか。
おべっかだろうとにこやかに答えておこう。
実際、この演奏で一番目立ってたのは生徒会長だが、ベースの良さに目覚めた生徒とか出ればやった甲斐はあったかな。
まあ、実際俺はどの楽器でもなんとかなったが、それはそれ。
そんな風に生徒会長の目論見通り、この即席バンドでの演奏で学園祭でのバンド希望者が殺到するようになったのだが……予想外があったとすれば、俺たちのバンドが考えていた以上に人気というか高評価過ぎて学園祭本番でもやって欲しいという要望も沢山寄せられてしまったのだが……まあ、仕方ない。
フィリアと学園祭でやれる事が増えたと前向きに喜ぶ方向でいいだろう。
実際、人と弾くのは久しぶりで楽しかったしね。
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