第537話 バンドメンバー
正直、俺一人が分身して演奏するのが最も確実で楽なのは間違いない。
それとなく才能のありそうな生徒に根回しして、姿を借りて演奏すればそれ程問題にもならないだろう。
だが、それでいいのか?
否、そんな代わり映えしない手法でいいのか?
答えは断じてNOであろう。
そんな訳で、即席でバンドを組めそうなメンバーを探すことに。
「分かりました。シリウス様と一緒なら頑張ってみます」
真っ先に誘ったのは俺の婚約者のフィリアだ。
貴族の令嬢でありながら、俺の多趣味(という名の暇つぶし)で音楽関係も軽く網羅してるのですぐに俺に合わせられるのはフィリアが最適と言える。
いや、フィリア以上に俺に即席で合わせられる人は居ないだろう。
曲は、何度か弾いたことのあるものをチョイス。
まずは一人。
「んー、なんか楽しそうですね。三日?ならなんとかなるかな」
二人目は同じ魔法科の生徒で、学年五位の成績の眼鏡をかけた何となく話しかけやすい雰囲気の生徒。
秀才と自称するナトリという女子生徒に頼んでみた。
そこまで普段交流はなかったけど、フィリアの説得もあってすぐに頷いてくれる。
フィリア曰く、彼女はかなりそっちの才能があるかもとのこと。
俺としても授業の様子を考えるに任せて問題ないと思うのでお願いしてみた。
これで二人目。
さて、俺を含めてこれで三人。
三人でも演奏は出来なくないが……安定を図るなら最低あと一人か二人必要だろう。
誰か居ないかと思っていると、凄くナチュラルに生徒会長が参加を表明。
「何だか楽しそうですので、どうぞよろしくお願いします」
一応、軽く楽器を触らせてみて問題ないと判断。
曲について説明した結果。
「これなら二日もあれば問題なく弾けそうですね」
そんな天才発言が聞けたので任せることにした。
ナトリの三日も凄いが、二日って。
しかも最初からバンドに参加する気満々だったようだし、その為に来週の頭発表とか言い出したのだろうか?
まあ、楽しんでなんぼの学園祭だ。
しかも生徒会長にはそれなりに頑張ってもらってるし、この程度は問題ないだろう。
本当はもう一人……メンバーに生徒ではないけど、フローラを誘ったのだが、フローラは「シリウス様だけにお聞かせしたいので」とやんわりと辞退されてしまう。
可愛い理由とフローラ自身、大勢の前での演奏に乗り気でないのがよく分かったので空いてる時間で演奏を聞かせて貰うことにして勧誘は諦めた。
まあ、バントといえば四人のイメージもあるしね。
フローラの可愛い独占欲が嬉しいというのもあるけど、フローラ自身の気持ちが大切だしね。
そうして、即席バンドのメンバーは俺、フィリア、ナトリ、生徒会長の四人に決まる。
しかし誰かと人前で演奏か……かなり久しぶりだなぁ。
まあ、フィリアと楽しめるなら悪くないかな?
その為に分身案を自分の中で蹴った訳だしね。
かなり私欲に塗れてるが、フィリアも嬉しそうだし皆も楽しいでwin-winだよね。
よし、問題なしということで。
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