第536話 即席バンドの結成を

「即席バンドですか?」

「ええ、是非ともお願いしたいと」


狼達の受け入れの間に、学園祭の準備が進む学園にて。俺は相変わらず綺麗な笑みの生徒会長から即席バンドの結成と演奏の披露を頼まれた。


理由としてはステージ発表の学生のバンド枠をもう少し増やしたい為とのこと。


学園祭のステージ発表として、俺は参加例の中に学生によるバンドなども例として出していたのだが、あまり名乗り出る猛者は少ないようだ。


バンドという概念事態、最近になって俺が『ディーヴァ・プロジェクト』で示したばかりなので言葉での説明だけではよくわかならないというのもあるのかもしれない。


そもそも、素人が集まって音楽をするなんて発想自体がこれまで無かったからこそこうなるのは必然といえば必然だったのだが、俺としてはその辺は何年かしてから自然と解消していくつもりだった。


この為……という訳では無いけど、学園改革の時に体育などに付随して芸術系(音楽、美術など)も導入していたし、そちらに興味のある人達やゲストで招く予定のスイレンや女性ボーカルのミカがメインのバンドのデモシス、そして歌侍を名乗る演歌歌手のソウメイ辺りの歌や演奏で来年から徐々に希望者が出ればいいなぁ程度のものだったのだが……。


この生徒会長様に妥協はないらしい。


むしろその流れをもっと前から加速させようということだろう。


「シリウス殿下の演奏があれば、参加者もグッと増えるかと」


学生のバンド参加を言葉で説明してもそれ程参加者は増えないが、具体的な例があればもっと分かりやすいということか。


そのための具体例としてバンドをやって欲しいと。


「分かりました。それでいつまでに?」


文化祭までまだ少し時間はあるけど、バンドの練習を考えるとなるべく早めがいいのだろう。


前もって音楽の授業を導入していて、軽くは楽器に触れさせてきていたが、演奏できるレベルとなると人によってはそれなりの練習時間が必要。


それ程猶予が無いだろうなぁと思っている俺に、生徒会長は実に嬉しそうな笑顔で答えてくれた。


「可能なら来週の頭には二曲ほど披露して頂けると」


悲報、今週あと三日しかない。


「……メンバーについては学生のみで?」

「話が早くて助かります」


ニッコリと実にいい笑みで微笑む生徒会長。


まあ、学生の参加者を募るのだから学生のみは妥当だよな。


だとしても時間が無さすぎるけど。


無言の「シリウス殿下を信じてます」オーラが実に良い性格を表してるが、それはそれ。


さて、どうしたものか。

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