第535話 懐きと名前

それから一週間ほど。


俺は時間のある時に狼達が居る小屋に顔を出して食事などのお世話をする。


毎食俺が用意したものを親狼は素直に食べる。


警戒心も最初の一回目は微妙にあったようだが、俺に敵意がなく、無害と分かったのか実に美味しそうに食べてくれる。


子狼の方も順調に育っている。


目を離すとすぐにちょろちょろと動き回るので、その度に親狼が連れ戻しているが、すくすく育ってるので悪い光景でもなかろう。


目がもう少しで開きそうだし、目が開いたら更にヤンチャになりそうだ。


ちなみに子狼はメスのようだ。


親狼も勿論子狼を生んでるのでメスだが、気になるのは父親の存在。


無事なら連れてこようかと聞いたが、親狼は首を振って拒否した。


まあ、狼社会でも色々あるのだろう。


ちなみに狼達は俺に懐いてくれている。


子狼は人を恐れないというか母親以外の存在にテンションマックスでゴロゴロしてくるのだが、親狼の方もブラッシングなどをしていると甘えてくるようになった。


ただ、狼にブラッシングした事を知ったクーデリンが珍しく妬いたようにブラッシングを求めてきたのは少し可愛かった。


狼達とクーデリンではブラッシングの密度も意味合いもまるで違うのをきちんと分かってもらうように丁寧にブラッシングをしたら非常に喜んでくれた(というか若干悶絶させてしまったが)ので特に問題はないだろう。


さて、狼達の今後について。


狼達には好きなだけ居てくれていいと言ってあるが、一応狼達の希望も聞く。


野生でいい場所をご所望なら全力で探すつもりだったが、親狼は子狼と俺の世話になりたいようだ。


俺としても懐いてくれてるし、このままどこかに行って何かあるよりは近くで成長を見守りたい気持ちもあったのでもう少ししたら屋敷に連れてくことにする。


慣れさせる時間もあるのですぐではないけど、領地ならこの子達が不届き者に狙われることもないだろう。


俺の屋敷なら尚のことだ。


さて、いつまでも親狼、子狼では寂しい。


なので名前を付けてもいいかと聞くと頷かれる。


これだけ人間の言葉を理解出来るのだから本当に大したものだ。


一応、魔物や動物と以心伝心する術もいくつか心得てるので使えるのだが、その必要がないのは有難い。


それ程難しくもないけど、ずっと使ってると疲れるしね。


名前について。


親狼=ボタン

子狼=アンコ


丸まってる姿から何となく付けてしまったが、すんなりと受け入れたので問題ないようだ。


またマスコット枠が増えるが、犬アレルギーの人が近くに居ないから大丈夫かな。


犬ではなく狼だけど。


何にしてももふもふが増えてまた俺の周りのメルヘン度が上がるなぁ……うん、今更気にしても仕方ないか。


何にしても無事育ってくれると嬉しいよね。

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