第534話 ジュエルウルフ

転移で狼達を連れて小屋まで移動する。


まずは親狼の傷を治そうかと思ったけど、親狼が子供を優先してくれと目で頼んできてるので、まずは軽く子狼の状態を確認することに。


うん、特に大きな怪我もないし、ゆっくり休ませてあげれば大丈夫だろう。


「大丈夫そうだよ」


そう言うと分かるのかホッとして軽く子狼を舐める親狼。


怪我などはないけど、疲れもあるだろうし治癒魔法を念の為施して、毛布などで温かくして包んであげる。


落ち着いたようにすやすやと寝る子狼。


授乳は起きてからかな。


そうして子狼の方が終わったので、今度は親狼の方を見ることに。


「随分と無茶したんだね」


軽く見ただけでも生々しい傷跡が目立つが、出産からそう時間が経ってないのもあって体力面でもかなり無理をしていたのだろう。


治癒魔法を施しつつ、子狼の近くに落ち着かせる。


縄張り争いとはではないか。


どちらかといえば、何か不足の事態で出産直後を狙われてなんとか逃げてきたといった所かな。


何にしてもだ。


「頑張ったね。お陰でその子は今も無事だよ」


そう素直に称賛と労いの言葉をかけると、キュルとちょっと嬉しそうに返事をする。


「お腹空いてる?食べれそうなら用意するけど」


その言葉に目を輝かせているので、空間魔法の亜空間にしまってあるいくつかの肉を取り出すと、凄い勢いで食べ出す親狼。


ある程度食べると、子狼を舐めてからゆったりと瞼を閉じて眠りにつく親狼。


どうやらここを安全地帯と認識してくれてるようだ。


まあ、生まれたての我が子を守ってあれだけボロボロになってたんだ。


今はゆっくり休むといいさ。


そう思っていると、足元にキラリと光るものが。


「ふむ、やっぱりジュエルウルフか。しかも特別個体ってところか」


持ち上げるとそれは親狼の抜け毛が宝石へと姿を変えたものだ。


ジュエルウルフ。それが、この狼の魔物としての種族名だ。


綺麗な毛並みが宝石のよう……というだけでなく、なんと抜け落ちた毛や欠け落ちた爪、更に涙などのあらゆるものが宝石へと変じる特殊な魔物。


しかも、本来のジュエルウルフは体毛が白いのがほとんどなので黒い個体はレア中のレア。


「お前も大変だったんだろうなぁ」


光るものに目がない魔物だけでなく、この性質上人間で欲しがる人は大勢いる。


文字通り金の成る木なので当然だが、まあ何にしても保護してしまった以上はなるべくなんとかしてあげないとね。


そう思いながら狼の近くにクッションをいくつか置いてから俺もゆったりと腰を下ろしてすやすやと寝る狼達を眺めながらまったりとする。


時間は……まあ、まだ大丈夫かな。


それにしても動物の寝顔はいつ見てもほっこりするものだとしみじみ思っていると、俺の懐に潜っているフェニックスのフレイアちゃんがここぞとばかりに顔を出して寝顔を作ってみせる。


うん、君も可愛いけどとりあえず服に忍び込むのは止めようか。


最近多いよね。だったら頭の上に巣を作ってくれてる方がまだ分かりやすいからさ。

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